出版業界編

「活字離れと言われて久しい出版業界。だが、最初から映画化などを見据えた作品やコミックの海外人気など、コンテンツの質はむしろ向上している。一方、雑誌もユーザーターゲットをより絞ったものが出るようになってきた。数字的にはあ
まり明るいニュースを聞かない出版業界は、今、まさに変革の真っ最中なのだ(取材・文 小林弘司)

業界MAP 出版業界編

業界動向


新たな手法の確立で、メディアの中心を担う可能性も

石橋毅史

Profile
株式会社 新文化通信社
『新文化』編集長 石橋毅史
(いしばし・たけふみ)

1970年生まれ。日本大学卒業後、出版社の営業職などを経て、1998年に新文化通信社へ。人材募集をしていなかったため当初は断られたが、改めて持ち込んだ書店取材の記事が採用されたことをきっかけに、アルバイト入社。1999年から社員。2004年に編集長代理、2005年9月から編集長を務める。特に思い出に残っている取材は「書店のない南大東島で開かれたブックフェアのレポート」(2003年)など。

 約4000社といわれている中の90%以上が中小零細企業で構成されている出版業界。2004年には8年ぶりに前年比0.7%増の売上を記録したものの、2005年の書籍・雑誌を合計した出版物の推定販売金額は2兆1964億円と、前年対比で2.1%減となった。

 内訳を見ると書籍が2.5%減の9197億円、雑誌は18%減の1兆2767億円。なかでも週刊誌は、前年対比7.1%減の2862億円の大幅減となっている。ピークだった1997年以降、8年連続のマイナス成長である。インターネットの普及などにより、週刊誌でしか得られない情報がなくなりつつあることがその主要因といわれている。また、売上を立てるために目新しさを追求し、年間7万5000点もの新刊が発行されており、供給過剰、返品の増大、そして経営の圧迫につながるという悪循環も指摘されている。

 活字離れと言われて久しい我が国の現状を象徴するように、数字を見ると厳しい状況が続いている。出版業界はこのまま衰退の一途を辿るばかりなのだろうか……。「現在の変化を見ると、これから面白くなる」。そう語るのは、50有余年の歴史を持つ出版業界の専門紙『新文化』の編集長・石橋毅史氏だ。

 「雑誌でいえば、従来の発行部数偏重の時代は終わりを告げたということです。現在は企画力でターゲットに対する訴求力を高め、ブランド力向上を図るマインドシェアに力点が移っています。『LEON』などはその成功例といえるでしょう。また、書籍では映画とのタイアップでブームを盛り上げたり、最初から映画化を前提とした作品作りを進めるなど、映像や音楽を含めたメディアミックスを、出版社側から仕掛ける傾向が強くなっています」

 メディアミックスの動きは、以前だと「角川書店」、現在では「小学館」が有名だろう。それが業界全体に広がり、新たな流れになろうとしている。また、中小出版社を含め、最初から海外マーケットを意識した作品作りをする動きもある。つまり、これまで旧態依然として古い体質と多くの人に思われてきた出版業界が、大手はもちろん中小・零細企業も含めて大きく変わろうとしているのだ。

 この他、2003年には18億円だった電子書籍も、2004年には45億円に市場拡大。2005年はさらに成長していることは想像に難くない。

 「これまでの電子書籍は、端末メーカー主導で本と同じコンテンツを見られるだけでしたが、携帯電話への配信を中心に普及し始めました。今後、電子書籍ならではのコンテンツ開発が進めば急速に市場が拡大する可能性があります」

 一方、原点回帰で丁寧な本作りを行うことで差別化を図る中小出版社も健闘している。出版界利用する媒体が紙だけではなくなり、対象ユーザーもグローバルが広がった分、さまざまな手法が取れるようになったというのが、正しい見方だろう。

求められる人物像

 新しい時代の流れとともに、求められる人材像も変わってきています。従来の方法論を踏襲した制作・販売手法ではなく、新しい企画とさまざまなメディアを組み合わせて販売を展開していくプロデューサー的な手腕の持ち主か、もしくはいい物をじっくり作ろうとする職人的な志向の人材が注目されているといえますね。それに、零細企業では後継者不足が深刻ですから、場合によっては最初から経営者を目指すこともできるかもしれません。いずれにしても、自分流をスタンダードにする楽しみが味わえる仕事ですから、「こういうことがしたい」という意欲があるならば、これからが面白い業界だと思いますよ。

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