鉄鋼業界編

ここ数年、鉄鋼業界が好況だ。2002年にNKKと川崎製鉄が経営統合され、JFEホールディングスとなったように、世界規模で大規模なM&Aが盛んである。その中で、業界第1位と2位が統合。各社の対応策に注目が集まる。産業界の将来を担う第一次産業だ(取材・文/小林弘司)

業界マップ 鉄鋼業界編

業界動向

2年連続最高益を達成
グローバル戦略に向けた人材育成に注力

一柳朋紀

Profile
株式会社鉄鋼新聞社
取締役 編集局 
鉄鋼部長 一柳 朋紀氏
   (いちやなぎ・ともき)

1992年慶応大学卒業後、住友商事に入社。一貫して財務・経理畑を歩む。1999年に鉄鋼新聞社入社。総務部、鉄鋼部勤務などを経て2006年6月から取締役編集局鉄鋼部長に。「現地・現場・現物」を見て、話を聞く“3現主義”のスタイルがモットー。国内外を取材で飛び回る一方、記者職の採用担当責任者も兼任

 “鉄は国家なり”といわれたとおり、道路や橋、建物など都市形成のインフラ整備に欠かせない資材として高度経済成長期にはこの世の春を謳歌。基幹産業の中核を担ってきた鉄鋼業界だったが、その後の産業構造の変化に伴い、斜陽産業とみられてきた。国内高炉メーカーは2004年度には過去最高益を達成。2005年度にはさらに記録を更新し、いままた、息を吹き返している。その背景にあるのが、中国特需だ。

「現在、中国は5カ年計画の中でのインフラ整備が進んでおり、鉄の需要が急激に伸びています。今後2008年に北京オリンピック、2010年に上海万博が予定され ていることからさらに拡大が期待されています。国内では、自動車・建設・造船など、製造業全般が好調なことから鉄の価格が値上がりし、各社ともフル生産体制に入っています。また、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)やベトナム、インドネシアなどのNEXT10と呼ばれる発展途上の国々も好況にあり、鋼材需要は今後も拡大が続くと見込まれます」そう解説するのは、鉄鋼新聞社編集局の鉄鋼部長・一柳朋紀氏である。

 現在、各国ともM&Aなど業界再編の波が押し寄せている鉄鋼業界。「世界的にみると、鉄を供給する資源会社は上位3グループで70%、最大ユーザーである自動車業界は6グループで70〜80%のシェアなど上位企業の寡占状態。一方、鉄鋼メーカーの場合、生産量トップのミタル・スチールでが先ごろ発表された2位のアルセロールと合併したといっても、シェアはたったの10%。同業他社との競争力や取引先との交渉力の向上に加え、鉄鋼市場の安定化を求めるためにM&Aの気運が高まっています」

 幸いにも日本企業は技術力が高く、独力でも製品の品質で対抗できる力を持っている。しかし、人口の減少により国内市場に大きな成長が期待できないことから、海外市場開拓が重要な戦略となっている。

 「現状のままでは海外大手から買収される可能性を含んでいます。海外のメーカーと同様、拡大路線を模索しているのが現状といえますね」

 大手鉄鋼企業各社は自動車業の進出に歩調を合わせ、これまでにも中国やアメリカ、ブラジル、カナダなどに現地企業との合弁工場を建設。今後は同地での設備増強、および将来的にはインド、ロシアなどにも進出が見込まれるという。

 「国内メーカー各社はこの好況をチャンスと捕らえ、中期経営計画の中でもこれからの3年でパワーを蓄積し、その後の3年でステップアップするという戦略を立てています。この業界の面白みは、あらゆる製品に利用される鉄という“産業の米”を通して世界の製造業を支え、成長の源泉になっているという自負でしょう。しかも、海外への動きも活発なので、世界経済を肌で感じるダイナミズムが大きい。かつての隆盛を取り戻すためにも若い方々の力に対する期待が大きい業界といえるでしょう」

求められる人物像

 国内市場が飽和状態に近い今日では、現地法人との合弁や、M&Aなどによる海外進出が不可欠です。ですから、英語や中国語などの語学力はもちろんですが、それ以上に日本の殻に閉じこもらず、相手の文化や考え方を理解して真のコミュニケーションを図れる国際感覚を持った人材が求められています。また、世界トップレベルの技術力を活かし、常に問題意識を持って先端技術の開発に取り組むエンジニアや、それらを利用することで競争力を高められるかといった戦略を考えられる、経営者的な感性を持った人材は評価が高いことはいうまでもありませんね。

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