化学業界編

世界規模でM&Aやリストラが繰り返される化学業界。中国特需の影響から、業界は世界的に右肩上がりだ。だが、良くも悪くも中国需要に左右される業界といわれる上、中国の企業自体が価格競争力などで力を持ち始めており、今後も世界規模で各社の事業統合などの戦略には注目したほうがいいだろう(取材・文/小林弘司)

業界マップ 化学業界編

業界動向

グローバル規模で進められる「業務合理化」と「中国戦略」

瀬田 博

Profile
株式会社 化学工業日報社
月刊 化学経済 
主幹 瀬田 博氏
   (さた・ひろし)

1975年に東洋大学卒後、化学工業日報へ入社。大阪支局、繊維、医薬・バイオ、 石油化学、石油・エネルギーの産業分野、経済産業省、文部科学省、科学技術・ 大学などの取材記者を経て、第4部門(行政・エネルギー・科学技術担当)の部門 長に。2004年7月に部門長から現職に異動

 バブル以降の経済低迷であえいでいた化学業界だが、近年の復活は目覚しいものがある。2004年には過去最高の売上を記録。2005年度はさらにその数字を上回る売上高マークしている。その理由はいくつかある。原油高により材料調達費は上昇したものの、製品価格に転嫁することで、修正できたこと。また、人員削減などによる経費削減、分社化や事業統合などのリストラを積極的に実施し、経営の合理化が実を結んだことが大きい。

 加えて大きな要因となっているのが、中国をはじめとするアジア各国の、需要の急成長である。「最近の業績回復はもちろんですが、今後の国内化学業界の動向は、よくも悪くも中国次第といえる状況にあります」そう語るのは、月刊化学 経済を主宰する瀬田博氏だ。

  「ひとつは中国の需要がどこまで続くか。それによって、輸出量が大きく左右されることはいうまでもありません。一方で、中国は販売マーケットであると同時 に、世界市場に製品を提供する生産地としても大きな力を持ち始めており、特に価格競争力では日本を大きく上回っています。つまり、日本企業にとって大きな脅威になる可能性があるのです」

 中国をターゲットとした化学企業の戦略は、日本に限らずグローバルに行われている。では、国内化学メーカーは、今後、どのような戦略をとろうとしているのだろうか。

  「1つは汎用製品について、マスの世界で戦える価格競争力をつけること。もう1つは機能性商品分野でのさらなる技術の強化であり、その両方を実現するための国際戦略が重要な鍵を握ることになるでしょう」

 汎用製品のコストダウンは今までも行ってきた。さらなる価格競争力を高めるには、国内の過剰な拠点の撤退や売却、国内外を含めた競合他社との事業統合なども視野に入れた戦略が必要だろう。

 また、自動車やライフサイエンス分野、IT系の表示材などの電子デバイス関連では、すでに世界シェア50%以上の製品も数多く存在する。これら業界の海外展開にあわせ、現地法人の設立などによる海外への積極的な展開が期待されている。

  「人口減により、国内需要の大幅な伸びが期待できないなかで、企業としての成長を目指すには、需要があるか、生産に有利かのどちらかを狙って拠点展開することが必要です。大手各社はすでに中国やアジア、ヨーロッパ、アメリカに拠点を持っていますが、今後、それらの規模の拡大はもちろん、新たな地域にも拡大していくことは間違いありません」

 これまで、大手企業による何度かの合併によって、海外勢力と戦ってきた国内メーカー。海外大手はすでに日本法人を設立しており、今後、新たな巨大合併は考えにくい状況にある。つまり、新たな製品戦略が企業の将来に大きな影響を与える可能性は高く、それだけに若い世代の人材に対する期待が大きい業界といえるだろう。

求められる人物像

 化学は、無機的・有機的材料から、あらゆるところで利用されるさまざまな製品を生み出す点で、社会に及ぼす影響が大きい分野です。ですから、技術系なら新たな製品を考え出すための、営業ならそれをどう利用すればいいかという創造力が求められることはいうまでもありません。同時に、社会や科学はもちろん、あらゆる分野の動向に常に敏感であることが必要でしょう。また、環境汚染物質に対する配慮など、コンプライアンスについても、きちんとした考えを持っていることが求められるのは当然。社会に対する貢献という意味では、大きな可能性を持っている業界ですから、積極的にチャレンジしてほしいですね。

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