銀行(メガバンク・大手行)業界編

過去最高益を記録した2006年度の銀行業界。向こう3年間は伸びていくだろうと見
ている専門家も多い。だが、未だに旧態然としている部分も多いため、問題点も
多数抱えているのが現状だ。今後、さらなる発展を実現するために、課題として
何があるのか。今後求められる人材像も含め考察していこう。(取材・文 清水
泰)

業界マップ 銀行(メガバンク・大手行)業界編

業界動向

規模の追求から「金融サービス」と「リスク管理」の向上へ

深尾 光洋氏

Profile
社団法人 日本経済研究センター
理事長 深尾 光洋氏
   (ふかお・みつひろ)

1974年に京都大学を卒業後、日本銀行に入行。調査統計局参事などを経て、2006年より日本経済センター理事長に就任。1981年にミシガン大学博士号(経済学)を取得、1997年より慶應義塾大学商学部教授を兼任。専門は国際金融論、金融論、コーポレート・ガバナンス。金融審議会専門委員も務める

 数度の金融危機をなんとか乗りきった大手銀行6グループの好決算が続いている。2006年3月期の連結決算では、最終利益が前期比の4倍以上と過去最高を記録。好業績を受けて3つのメガバンクグループは、今年度中に公的資金を完済する予定だ。

 この好業績の要因は、90年代末以降厳しいコスト削減を行ってきたことに加え、2003年以降の企業業績回復により、新たな不良債権の発生を気にせず、一気に不良債権処理を進められたことや2003年3月末に8000円を下回っていた株価が、1万5000〜1万6000円台で推移していることなどがある。好景気のおかげで不良債権処理費用が予想より少なくなり、過去に積んでいた引当金を戻し入れ、最終利益に上乗せできたことも大きい。

 また、各行とも決済、投資信託、個人年金などの手数料収入は増加している。さらには中国特需が続き、日本経済のけん引役である製造業の輸出に有利な円安・ドル高が続いているため、各行は高収益を上げやすい環境にある。

 しかし、「海外景気にかげりが見られる上、引当金の戻し入れといった自助努力以外の部分も大きい。また貸出利鞘も縮小傾向にあるため、前期か今期の決算がピークになる可能性が高いと考えられます。外国銀行などと比べると資本の蓄積はぜい弱ですから、さらに収益力を高めて自己資本の充実を図る必要があります」と日本経済研究センター理事長の深尾光洋氏は指摘する。

 「利鞘(さや)ビジネスでは、ゼロ金利が解除され、支払い金利の緩やかな上昇が見込まれる一方、銀行間の競争が激しく、企業への貸し出し金利は下がっています。しかも、優良な大企業は資本市場で直接資金調達するので、貸出(融資)先は中堅・中小企業が中心です。メガバンクといえども、景気が後退したら厳しいでしょう」

 もう1つの収益源である手数料ビジネスに関しても、不安材料を抱えている。変額年金などのリスク商品販売が好調なのは確かだが、長期的に見て収益につながるかは未知数だからだ。日々の決済はすでにコンビニエンスストアやネット系金 融機関などに奪われつつあり、郵貯銀行が本格的に参入してくる可能性も高い。このため今後もリテール(個人向け金融サービス)部門が安定した手数料収入を得られる保証はない状況だ。大再編が一段落したメガバンク、大手銀行だが、将来の不安は払拭されていない。外部環境に左右されにくい体質への改善が急務といえる。

 「リテール部門の強化と中〜長期的なリスク管理の確立が課題です。勘定系システムをオープンシステムへ入れ替えることは必須だと思います。邦銀はバブル 崩壊以降の長期不況により、情報システムへの投資が遅れてしまい、いまだにメインフレーム時代のシステムを継ぎ足しして使っています。リテールで言えば、 システム面で先行するコンビニや郵便貯金に顧客を奪われて当然でしょう」

 メガバンク、大手銀行の多くは、リテール強化の方針を打ち出しながら、支店の統廃合も進めてきた。従来型の支店を増やす必要はないが、小回りのきくコンビニのような支店は足りていない。情報システムの刷新と同時に、支店の多様化と最適配置を実現するリテール戦略が必要だろう。一方では、マス対象ではない富裕層向けに特化した金融サービス、プライベートバンクにもビジネスチャンスがある。

 現状は支店の統廃合やリスク商品の販売手数料の獲得に注力するなど、短期的な収益拡大を優先し、中・長期的な成長戦略・リスクを後回しにしている感が否めない。経営陣が中・長期的なリスクとリターンを見極め、銀行全体のリスクをマネジメントすることで、持続的な収益力の強化が可能になる。トップの意識が変われば、組織と人材活用のあり方も大きく変わる。エンジニアや若手が活躍する場が増えそうだ。

求められる人物像

 合併や経営統合を繰り返してきたメガバンクや大手銀行の真価が問われるのはこれからです。各銀行の既存システムをつないだにすぎないシステム統合の先には、情報システムの入れ替えという大きな山が待っています。銀行の戦略をシステムに落としこめるエンジニアに加え、システム運用エンジニア、銀行業務の全体をとらえてリスク管理ができるマネジャー、商品開発人材の増強が必要です。また、リテール比率を高めるために支店の多様化が進めば、銀行の文化に染まっていない新たな人材(支店長)が求められると思います。異業種人材が参入できるチャンスは広がっているといえるでしょう。

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