アパレル業界編

5兆円の巨大市場ながらも、1997年のピーク時から30%以上も売上が下がっているアパレル業界。だが、これをそのまま業界景気の指標とするのは乱暴なようだ。業界内で構造変化が進み、コストの流れが“スリム化”していることも要因だからだ。衣・食・住の一端を担うアパレル業界の未来は、決して暗くない(取材・文/小林弘司)

業界マップ アパレル編

業界動向

構造変化により収益率は向上!海外進出が今後の成長の鍵に

千金楽 健司氏

Profile
株式会社アパレルウェブ 
代表取締役CEO 
千金楽 健司氏(ちぎら・けんじ)

1960年生まれ。中央大学商学部を卒業後、インナーアパレルに営業として入社。その後、経営・マネージメントを経験。インターネットに出会った1999年、「アパレル業界のyahoo!を作ろう」と一念発起し、2000年に起業。2003年に東京商工会議所「勇気ある経営大賞」を受賞

 売上高が年々、下降傾向にあるアパレル業界。デフレ経済の長期化による商品単価の下落や、消費者のモノ離れによる、相対的なファッションへのプライオリティの低下などが原因で、市場は1997年の約21兆円から15兆円規模へと30%以上も縮小している。だが、この傾向をむしろ歓迎だと述べるのは、アパレル業界向けのB2Bポータルサイトを運営するアパレルウェブの千金楽健司氏だ。

 「ここ数年、アパレル業界は従来の製造・問屋・小売という流通方式から、企画・製造から販売までを一貫するSPA(Speciality store retailer of Private label Apparel:製造小売業)へと構造変化を遂げています。これにより、いわゆる勝ち組アパレルは、変化の激しい顧客ニーズを的確に把握でき、CSの向上にも効果を挙げています。そしてSPAに成功した企業は、収益性も大幅に向上しているのです。ワールドやユニクロ、トリンプなどはその好例といえるでしょう」

 売上高が下がったとはいえ、15兆円市場。超巨大マーケットであることは変わ りない。また近年では、持ち株会社化や上場廃止など、経営のスピードアップを目指した業界の有力企業の動きも目立っている。一方、こうした動きが遅れた企業は、相変わらず苦しい状況が続いている。つまり、こうした業態変化を加速させた企業が地位を向上させることで、業界の再編が進み、全体の体質改善が可能になるということだ。

 SPAを成功させた企業が、今後の売上向上の戦略として実践しているのが、店舗の拡大、優良顧客のリピート数の増加、潜在顧客の囲い込みである。中でも現在、多くの企業が注力しているのが、従来の百貨店やスーパーに変わる新販路としての、ショッピングモールや駅ビルなどへの出店だ。「売上の向上は店舗数と単価に比例するので、特に迅速かつ効率的な店舗展開が重要な要素になっているのです」。だが、これらの企業にしても課題がないわけではない。その際たるものがブランド力だ。

 「日本のアパレル業界は、品質の高さはもちろん、ファッションの企画力やコーディネイトのセンスなど、世界的にみてもトップクラス。それなのに、多くの企業がそのことを認識しておらず、国内市場にばかり目を向けている。旧来型の企業ではWebの活用など、IT化も大幅に遅れているのは残念でなりません」

 現在、輸入アパレル商品の90%以上は中国で生産されている。そうした中、最近になり、ようやく中国国内での販売に力を入れる企業が出てきた。今後は、サイズや体系で共通性のあるアジア圏内でのビジネスが拡大しそうな予兆が出てきている。また、変化の激しい業界だけに、Webマーケティングを活用してトレンドをいち早く捉え、売上を拡大している企業もある。こうした企業は現在、20億〜100億円程度の売上高だが、千金楽氏は大化けする可能性を指摘している。

 「アパレルは生き物と同じ。移ろいやすい反面、その変化を捉えれば、まだまだ隙間はたくさんあるのです。構造変化が進めばさらに成長が期待できる業界であることは間違いないでしょう」

求められる人物像

 アパレル業界の今後のトレンドは、ブランド力、IT化、国際化の3つがキーワードです。これらを積極的に推進している企業が狙い目でしょう。働く上で、アパレルが好きであること、ファッションセンスを磨いていることはもちろんですが、これからは、ブランド構築を体系的に実践できる人、ITを企業戦略に合わせて効率的に活用できる人、海外でのビジネスに意欲と行動力がある人など、ただファッションが好き、というだけではなく、アパレルをビジネスとして展開できるセンスを持った人が求められる時代になってくると思います。

 

アパレル業界の転職情報はこちらから

ソーシャルブックマークに登録 このページをYahoo!ブックマークに登録 このページをdel.icio.usに追加

▲ページのトップへ