百貨店業界編

最近、百貨店が元気だ。バブル崩壊から低迷を続けてきたこの業界に、各店舗の営業努力が今の結果に結びついていると考えられる。だが、地方店舗や小規模店舗は相変わらず低迷が続くなど、課題も残す。さまざまな業務提携なども結ばれる中、今後の展開はどのようなものか、MAPとともに考察する(取材・文 小林弘司)

業界マップ 百貨店業界編(高島屋、京王百貨店、三越、近鉄百貨店、プランタン銀座、大丸、松坂屋、伊勢丹、東武百貨店、西武百貨店)

業界動向

モノからコトに変わる消費者動向に合わせた変化が必要

風間 晃氏

Profile
株式会社ストアーズ社
取締役編集局長
風間 晃氏(かざま・あきら)

明治大学政経学部卒業後、ストアーズ社に入社。『月刊ストアーズレポート』の副編集長を経て、2003年に編集長、2005年に取締役編集局長に就任。日本小売業協会企業経営専門委員、日本販売士協会広報委員。日本小売業協会、北海道百貨店協会、東北百貨店協会、中四国百貨店協会等で講演活動を行なう。他にも日経BP社雑誌、公開経営会報等、流通各団体・商業誌などに執筆多数。

 緩やかながらも長期の回復基調を維持する日本経済。だが、個人消費に依存する小売業は、バブル崩壊後の1992年をピークに、いまだ低迷を続けている。近年を見ても1999年には143兆円あった市場規模が、2006年には129.8兆円と依然として縮小傾向が顕著になっている。その中にあって、前年比1%以下の減少と、下げ止まり感を見せているのが百貨店業界である。

 「1990年代後半に大手百貨店がこぞって着手した、顧客主義を強く打ち出した攻めの経営改革が2003年頃からようやく功を奏し始めました。それまでのコスト意識の甘さを排除し、最小のコストで最大の利益を追求した上、顧客の囲い込みを徹底したことが、収益の改善に繋がっているのです」

 こう分析するのは、『週刊デパートニューズ』などを出版するストアーズ社の編集局長である風間晃氏である。また、外的要因としては株価の上昇も大きい。小売業の中では、富裕層に対して高い訴求力を持つ百貨店が、持ち前のブランド力を発揮したことが売上向上に貢献したといえる。

 「海外ブランドのテナントや、他店との差別化戦略として注目される“デパ地下”に、国内外の老舗店舗を数多く集められることも、百貨店のブランド力の高さといえますね。しかし、気を吐いているのは大都市圏にある大型店舗のみ。売り場面積の小さい地方の百貨店は、依然として苦戦を強いられ、優勝劣敗が明確になっているのが現状です」

 近年ではアパレルはもとより、多くのメーカーが計画生産を実施しているため、小規模の百貨店では売れ筋商品を取り揃えるのに苦労する。このため、大手百貨店と資本関係のないグループ関係を結び、仕入力を強化する戦略をとって対抗している。伊勢丹や阪急百貨店など全日本デパートメントストアーズ開発機構32社では、ギフトビジネスにおける物流システム統合を図るなど、各百貨店で生き残りをかけた戦略強化に余念がない。

 「さらなる発展を目指した成長戦略も、いくつか明確化してきました。1つは営業面積を拡大するための基幹店の増床計画で、すでにいくつかの店舗で進行中です。さらに、新規計画としては、成功パターンといえる大都市圏の駅ビルとしての出店のほかに、研究段階ですが、郊外の大型SCへの各店舗としての出店構想が出てきています」

 また、中心市街地の再開発に合わせた新業態として、デパ地下で知られる食品部門のみの出店計画も進んでいる。ここにきて、大丸と松坂屋が統合交渉中というニュースが業界を騒がせているが、他業界に見られるような、大手百貨店のM&Aによる吸収合併は、メリットが少なく、一部を除いて、目立った海外進出も考えにくいという。

 「いずれにしても、今日の消費が“モノからコト”に変化していることから、今後は生活シーンの提案を踏まえた販売力の強化が重要課題といえます。各店舗とも、いかに差別化を図り、独自のカラーを演出できるかが切り札となっていくでしょう」

求められる人物像

 バブル期以降、採用を控えていた百貨店業界ですが、今日、特にキャリアを持った中途採用のニーズが増加しています。差し迫って必要とされている新たな業態の開発には、例えばチェーンストアなどで働いていた人など、他の流通業の経験が活かせます。業態の垣根を越える意味で、発想力に長けた人材も期待されるでしょう。また、あまりイメージがないかもしれませんが、ネット通販や、SCMの構築など、デジタル・イノベーションが活発な業界でもあるので、ITの経験者にも門戸は開かれています。そのほか、百貨店はレストランなど、さまざまな分野の業種の集合体ですので、多くの人たちにとってチャレンジできる可能性がある業界といえますね。

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