自動車業界編

トヨタ自動車をはじめ、国内自動車メーカーの業績が好調だ。だが、海外に目を向けてみると、業績を上げているメーカーのほうがむしろ少ないように見える。環境問題などが取り沙汰される中、課題も多い自動車業界は、どういった方向に進むべきなのか。国内視点とグローバル視点の両方から見ていこう(取材・文 小林弘司)

業界マップ 自動車業界編(ゼネラル・モーターズ、トヨタグループ、フォード、フォルクスワーゲン、ダイムラー・クライスラー、現代、ホンダ、日産・ルノーグループ、プジョーシトロエン)

業界動向

魅力あるクルマづくりで国内需要の活性化を

岡崎 五朗氏

Profile
自動車評論家
岡崎  五朗氏
(おかざき・ごろう)

1966年生まれ。青山学院大学理工学部在学中から執筆活動を始め、卒業と同時にフリーランスのモータージャーナリストとして活躍。「生活をともにして気持ちがいいかどうか」が、クルマを評価する上での最大の関心事。現在は、日本自動車ジャーナリスト協会理事も務める。愛車はポルシェ997

  4年前に販売台数で世界第2位となり、いまやトップのGM(ゼネラル・モーターズ)を追い抜くのは時間の問題といわれるトヨタを筆頭に、世界販売台数のトップ10に名を連ねるホンダ、日産を加えた国内大手3社は、2006年に揃って過去最高益を記録。さらにダウンサイジングの風潮を背景に、軽自動車主体で業績を伸ばすスズキやダイハツなど、好調を維持する国内の自動車業界。関連業界の就業人口は486万人を数え、国内全体の7.7%を占めるなど、まさに日本の基幹産業に相応しい業績を示している。

  「好調の原因は、軽自動車から高級車に至るまで、高性能でしかも壊れにくい自動車を、低価格で提供できる競争力の高さにあります。これは幅広い製品のラインアップに加え、高品質を維持しながら、柔軟に生産できる生産システムを確立しているからこそできること。競争の激しい日本市場で培った独自のノウハウに起因しているのです」と分析するのは自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏だ。

  国産車のコストパフォーマンスの高さは、趣味としてではなく「生活に必要だからクルマを購入する」という実需の観点で非常に強い。これから成長する中国、インドをはじめとするアジア諸国では、年間数%の成長が維持できると予想されている。

  自動車業界を世界規模で見渡したとき、最大の課題となっているのが石化燃料の枯渇や、地球温暖化の原因といわれる二酸化炭素排出量の低減を踏まえた燃費の向上だ。新ディーゼルエンジン車では欧州メーカーにリードを許すものの、ハイブリッド車や燃料電池車といった低燃費車・低公害車の研究開発で国内メーカーはリードしており、海外メーカーと比べて大きなアドバンテージがある。また、ITS(高度情報交通システム)に関しても、世界トップの技術力を誇っている。

  「近年の合従連合による企業巨大化の動きは、ダイムラー・クライスラーやフォードの例を見る限り、必ずしも好結果を得られないことは明白。今後は、大きな企業合併や資本提携ではなく、技術協力が主体となっていくと思います」

  この点からも国内自動車メーカーは一見、安泰に思える。だが、岡崎氏は警鐘を鳴らす。

  「国内の自動車産業を支えているのは、販売台数、利益率ともに、大半が海外市場。軽自動車の好調は、日本の税制上の理由に起因しており、いかに実用重視のアジア諸国でも大きな成長は見込めないでしょう。その上、よいクルマを安く提供する日本のビジネスモデルを追従して、すでにホンダや日産を凌駕するヒュンダイのような企業も現れています。今後は、環境適合や安全性をクリアしていくのは当然として、パワーや運転性能、デザインなどの点で憧れを持てる、プラスαの魅力をもつクルマづくりが、発展のキーになるのではないでしょうか」

求められる人物像

  技術職についていえば、専門分野にNo.1を自負できる知識や経験があれば基礎研究部門に進むべきでしょう。ただ、通常の開発部門ではシャーシやエンジン、安全技術などの一分野しかわからない人では難しいと思います。ニューモデルのニーズやコンセプトを的確に把握し、クルマのキャラクターに合わせてさまざまな味付けができるプロデュース能力が必要となるでしょう。全般的にいえば、生活者やドライバーの視点でアンテナを広く張り、ユーザーに喜びをもたらすクルマを提供できる人、それを広めるマーケティング力や企画力、広報・宣伝のアイデアを持つ人が活躍できると思います。

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