家電量販店業界編

家電製品はどの店で購入しても同じ製品であり、消費者にとって「安い」はすでに当たり前。価格競争は覇権を握る上での重要な要素だが、それだけでは勝てなくなってきている。規模で凌駕するヤマダ電機を筆頭に、店舗によってさまざまな展開を 見せる家電量販店業界の現状とこれからを考えてみよう(取材・文 小林弘司)

業界マップ 家電量販店業界編(ヤマダ電機、エディオン、ヨドバシカメラ、ケーズホールディングス、コジマ、ビックカメラ、デンコードー、ベスト電器、ラオックス、ジャパネットたかた)

業界動向

「安い」は当たり前。今後は「提案力」が勝負に

北畠 敏幸

Profile
株式会社リック
『月刊 IT&家電ビジネス』
編集長
北畠 敏幸氏
(きたばたけ・としゆき)

新聞社勤務などを経て、専門誌出版社のリックに入社。2年前に家電流通業界で働くすべてのプロフェッショナルのための総合家電情報誌、月刊『IT&家電ビジネス』の編集長に就任。家電流通業を中心に取材、執筆を行うほか、家電流通業界に関する講演も手がける。ほかに、日経産業新聞「新製品物語」評価委員も務める。

 かつての「町の電気屋さん」を凌駕し、完全に家電販売の主役の座を奪った「家電量販店」。8兆円といわれる家電流通市場において、その約7割が量販店の扱いとなっている。その筆頭が「ヤマダ電機」で、2004年には国内の専門小売店としては初となる年商1兆円を達成。その後も年間約50店舗のハイスピードで出店し、売上高トップを独走している。家電量販店向けの専門誌『IT&家電ビジネス』の編集長・北畠敏幸氏は、店舗拡大化の動きを次のように解説する。

 「80年代の大規模店舗の規制緩和により、郊外にも大きな店舗が出店しやすくなったことが、家電量販店が成長するキーファクターになっています。家電製品はどこで買っても商品は同じ。消費者からすれば価格が最大の差別化要因なので、家電店からすれば仕入を安くするために規模を拡大し、購買力を持つことがもっとも重要な条件になります」

 一口に大手家電量販店といっても、大都市圏の主要駅を中心に出店してきたカメラ系量販店(ヨドバシカメラ、ビックカメラなど)と、全国展開を図るナショナルチェーン(ヤマダ電機、コジマ、ケーズホールディングスなど)や、地方を中心に展開するグループ(エディオン、ベスト電器、上新電機など)がある。カメラ系量販店大手の出店数が全国20店舗前後であるのに対し、その他の量販店はいずれも数百店舗の規模を持ち、そのスケールメリットを背景に発展してきた。規模拡大のために積極的なM&Aが実施されているのも、低価格を源泉とした小売店間のガチンコ勝負が行われている証拠だ。だが、北畠氏はこの業界にも転機が訪れていると語る。

 「家電量販店は、当初から安さと品揃えを売り物に集客力を高めていましたが、最大の魅力であった価格の競争は限界に来ています。今や安いのは当然で、街の専門小売店が扱っていた時計やおもちゃ、スポーツ用品や家具などの生活周りの商品を数多く取り込んだ、いわゆる新しいタイプのデパートとして支持されているといえるでしょう。そのため、現在では提案力が求められるようになっているのです」

 これまでも、家電量販店ではポイント還元や、店舗独自の長期補償制度などで顧客の囲い込みを実施してきた。だが現在は、オール電化やITネットワークを活用したセキュリティシステムの提案、さらには周辺機器を含めたセット販売などを重視するようになっている。また、これまであまり行われていなかったポイントカード発行時に収集した個人データを活用したセールスプロモーション展開や、売り場面積や陳列レイアウトを工夫し、回遊性を高めるなど、顧客に視点を置いた販売手法を実施する販売店が増えてきた。また、ベスト電器以外に実績のない海外進出も、国内市場で大きな成長が望めない以上、今後、追随する企業がでる可能性はありえる。

「どこでも買っても同じ家電製品が主体である以上、接客力や提案力が、他店との差別化の大きな力になることは間違いありません。そして、工夫の余地もまだまだ残っています。その差別化戦略に成功することが、今後の生き残りの鍵となるでしょう」

求められる人物像

 

 入社するとたいてい売り場からキャリアはスタートしますから、明るくて素直なタイプの人が求められています。商品知識は必要ですが、家電大好きだが内向的ないわゆる「オタク系」はむしろ敬遠されるようです。人が好き、話すことが好きといった人には、楽しんで仕事ができる環境があるのではないでしょうか。また、これからは「提案力」が重要な戦略になってきます。訴求力のある店舗レイアウトやディスプレイの仕方など、創造性を活かせる余地はまだまだたくさんあります。出店スピードが速いので、企業によっては入社後5〜6年で店長になるケースも珍しくないですよ。

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