業界人なら知っている大失敗プロジェクトの“黒いウワサ”

しかし、一度1年で終わると宣言した以上、2年かかったからといって、発注側の企業がその費用をまかなってくれるほど甘くない。結局、このコンサルティング会社は、残りの1年間“ほぼ無償”でプロジェクトを継続せざるを得なかったという。これは深刻な話だ。しかし、こうしたプロジェクトの悲惨な実態は意外なほど世の中に知られていない。

「最終的には2けたの億の赤字を出して去年の秋にカットオーバーしたようです。新聞広告などでは、あるベンダが、協力会社の成功事例として表彰したと発表していましたね(笑)。知っている人はみな笑っていましたよ。だって、どう考えても表彰じゃないでしょう? タイムオーバーした部分は1円ももらえなかったわけですから。コンサルティング会社なので、ひたすら協力会社をかき集め、ピーク時は約200人でやっていたらしい。でも、人を集めすぎたために大きくなりすぎて、もっとうまくいかなかったというウワサを聞きました」

しかし、たとえ大赤字になったとしても、カットオーバーできればまだマシといえるが、中には、スケジュールをオーバーしてシステムそのものを作り直しているものさえあるという。

「私がERPコンサルタントとして取り組んだあるプロジェクトは、3年前からスタートしてまだカットオーバーしていないんですよ。このプロジェクトも規模が大きくなりすぎて収集がつかなくなったケースです。それはもう大失敗ですよ。私がERPコンサルタントとして担当していたプロジェクトなので、この経歴は外したいくらいですね。恥ずかしくて。実は、ある会社を受けにいって、役員面接の時に、『これって例のトラブルプロジェクトじゃないですか?』と言われてしまいました。結局その会社は落とされてしまって……。あれには参りましたね。確かまだカットオーバーしていなくて、もう4年目に入っているはずですが、最近の状況は知りません。関係者が触れたがらないのです(笑)」

失敗プロジェクトはプロマネの責任なのか!?

金額的に大きなプロジェクトを受注したコンサルティング会社やSIベンダの営業担当者は、時として社内で表彰の対象にさえなる。しかし、実はそれが“大赤字プロジェクト”であることが明らかになると“戦犯扱い”されるのはプロマネであることが少なくない。

「失敗プロジェクトに共通して言えるのは、営業と開発部隊の視線が同じベクトルを向いていないということ。営業担当者は、大きなプロジェクトになればなるほど、それに応じた技術、スキル、経験がなければ、必ずトラブルになることを理解して、仕事を受注する必要があると思います。でも、営業が全面的に悪いということにはならないですね。その自分が経験した“失敗プロジェクト”も、プロマネ以外のメンバーはほとんどが20代だったため、ERPパッケージの導入経験はあってもコンピューターシステムのITプロジェクト経験がほとんどなかった。また、彼らは20代で“若かった”ということもあって、最初から『前に経験したプロジェクトと比べたら楽勝ですよ』とタカをくくっていた。このメンバーでできるのかな?とプロジェクトスタート時に思ったけど、やっぱりダメだった。プロマネは30代のマネジメントレベルではあまり優秀とは思えなかった人。やっぱり若いチームをマネジメントできなかったプロマネの責任は免れないでしょうね」

結局、そのプロマネはプロジェクトをスケジュール通りに本番稼動できなかったため、クビになってしまったという。「もともと予算的に無理のあるプロジェクトをとってきておいて、いくらなんでもそれはヒドイ」と思う人もいるだろう。しかし、確かに予算の問題は大きいにせよ、失敗プロジェクトでは、プロマネにも何らかの問題があるケースが多い。次回はこの点から話を始めよう。

山崎慎一氏(仮名・35歳)

大学卒業後、大手SIerで5年間ビジネスアプリケーションなどのシステム設計や開発を行う。その後、大手パッケージベンダにてERP導入のコンサルティングに携わり、現在はメーカー系システム会社でITコンサルタントを務める。開発、要件定義からプリセールスまで手掛け、業務知識も豊富なヤリ手のコンサルタント

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