技術と違って業務知識は“陳腐化”しない

現役のエンジニアなら、既にある程度のITスキルは備えているはず。エンジニアにとって次の課題となるのは、業務スキルの方だろう。

「私は専門書を読んでいましたね。以前は人事系システムの経験もあるので、社会保険とか税金などについて勉強しました。後はクライアントに直接話を聞き、製品の全体像をつかんでからプロジェクトに入るようにしています。今は会計システムを担当していますが、どんな業務を担当しても、その業務をイメージしてマスターするのは必須です。エンドユーザがどういうオペレーションをするかということを常に考えています。まず業務ありきです」

年をとるたびに、プログラムを書く機会は減ってきているという山崎氏だが、そのことに対する危機感はほとんど感じられない。

「プログラムを書くのなら、自分より優秀なプログラマーを雇ったほうがいい。私はその人の業務要件やシステム要件を固める立場に回りたい。技術は変わるので、新しい製品やテクノロジーが出るたびに新しく覚え直さなくてはいけないけど、業務は一度覚えれば、製品が変わろうがベースは変わらない。だから、業務さえ身につければ、製品が変わろうがテクノロジーが変わろうが、この業界で一番長く持つのではないかなと思います」

あるプロジェクトのコンペで、山崎氏は、心を揺さぶられるプレゼンに出会ったという

「会計システムのコンペで、会計士の人が出てきて、エンドユーザにプレゼンをしました。さすが会計のプロだけあって、説明はすごく実務的で、プレゼンのレベルは高くはなかったけれどプレゼンを聞いていたクライアント全員が納得してプレゼンが終わりました。業務知識の重要性を実感した体験でしたね」

クライアントと仲良くなろう

ただ、いくら優れた知識を持っていても、相手とうまくコミュニケーションを図り、それを伝えられなければ意味はない。この点は、多くのエンジニアに欠けていると言われる部分でもある。

「打ち合わせの度に違うことを言うとか、何回言っても分かってくれないとか、クライアントとのやりとりではしょっちゅうあることです。特に若い時はそうでしたね。当時は、『根気よく頑張るしかないのかな』と思っていましたが、ここ2〜3年は、クライアントと仲良くなる方が話は早いし、確実な方法だと考えるようになりました」

例えば、山崎氏が実践しているのが、喫煙室を利用したコミュニケーションだ。

「私はタバコを吸いませんが、クライアントが喫煙者の場合には、自分も喫煙室に行きます。そして、フランクに一対一で話をします。喫煙室だと、相手も社内体制や協力会社とのしがらみなどもなく、皆リラックスしているので、結構ホンネをポロっと言うこともある。そこで『この人はこういう考え方をする人なんだな』と見抜く。親しくなって仕事の話もしてしまう。飲み物を持ってフランクに話をしながら、『このプロジェクトどうしましょうか』みたいな感じで。打ち解けてくると、予算や要員のアサインなどかなり細かい部分も含めてブレストするようになりました。さすがに喫煙室でそれは行きすぎかと思いましたが(笑)」

お客さんと積極的に話すこと……。簡単なことのようで、これがきちんとできているエンジニアは意外と少ないのではないだろうか。忙しさを理由に担当営業マンに全部任せてしまうような人もいるかもしれない。

「20代のうちからこの姿勢を続けておかないと、将来クライアントの決裁者に対するプレゼンを任された時、相手を説得することができないと思います。これからもどんどんクライアントと会って、コミュニケーションを図り、“話せるエンジニア”を目指したいですね」

そこに、山崎氏の理想のエンジニア像があるといっていいだろう。

山崎慎一氏(仮名・35歳)

大学卒業後、大手SIerで5年間ビジネスアプリケーションなどのシステム設計や開発を行う。その後、大手パッケージベンダにてERP導入のコンサルティングに携わり、現在はメーカー系システム会社でITコンサルタントを務める。開発、要件定義からプリセールスまで手掛け、業務知識も豊富なヤリ手のコンサルタント

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