大手SIerでは新卒が“厚遇”されている!?

大手SIerでも長時間勤務は大げさな話ではない。実際にあった冗談のようなエピソードがある。

「ある流通系のプロジェクトのカットオーバーの打ち上げの飲み会で、酔っ払って課長に対してビールをぶっかけた人がいるとの話を以前聞いたことがあります。『僕の新婚生活を返してください』とその飲み会で叫んだところ、そうしたら課長は、『それは、その時期に結婚したお前が悪い』と答えたとのこと。(笑)何とも言えない失笑が宴会の席に広がっていた、と聞きましたね」

とはいえ、最近は技術者にとって売り手市場といわれているが、大手SIerへの入社ハードルは高いのも事実だ。新卒でポテンシャルの高そうな人物を採用して、社内で育成していくケースが日本の大手SIerには多く見られる。

「私がいた会社も中途採用はしていますが、外資系ベンダーやコンサルティング会社なんかと違って、新卒採用ばかりなので中途の門戸は狭いですね。新卒と中途の扱いも際立っている。『新卒は大事に育てなきゃ……』のような感じでした。実際、会社の上層部からは、『君らは恵まれた教育を受けるんだから、業界トップクラスの会社にふさわしい技術者になってください』と言われていました」

ちなみに、山崎氏がいた大手SIerの離職率は他社と比較して低い。その大きな理由は、「辞めて待遇が悪くなる、給与が下がるというのを知っているから」だという。もっとも、転職して必ずしも給与が下がるとは限らない。例えば、外資系のコンサルティング会社に転職した場合なら、年収がアップするケースもある。ただ、現実には、「その手の外資コンサルにSIerから転職するのはかなり難しい」と指摘する。

「大手SIerからでも、可能性がないわけではありません。実際、転職した人もいますが、30歳をすぎた人は、だいたい落とされていますね。際立ったスペシャリティやMBAなどがあれば話もかわってくるでしょうが、一エンジニアから外資コンサルへの転職は難しいでしょうね」

SIer出身者の転職では年齢とマネジメント経験が重要

では、SIerで30歳すぎまで働いてきた人は、今後どういうキャリアを考えればいいのだろうか? 冒頭でも触れたように、大手SIerの場合、外注管理が主な仕事になりがちなだけに、プログラムを自分で書いてきた“タタキ上げ”には、技術を含めたスキル面では太刀打ちできる可能性は低い。

35歳くらいになると、マネジメント経験がなければ企業は振り向いてくれないケースが多い。31〜32歳くらいまでなら、マネジメント経験がなくてもチャンスはある。この年代の技術者は、自分の年齢にもっと敏感になるべきかもしれない。

山崎氏自身、ある日系の大手SIerを受けたものの、最終的に転職に至らなかった経験がある。その時にネックになったのも年齢だったという。

「面接自体は何十億の予算を持っている統括部長クラスまで進みました。役員面接の一歩手前ですね。その人はOKを出してくれたようですが、他に『×』の人がいて、最終的には落とされてしまった。しかも、『一週間後に連絡します』と言っていたのに、返答に時間がかかったのです。事情を聞いてみると、“年齢”でものすごくモメていたようです。その時言われたのは、『あと2〜3歳若ければ採用しました』ということ。要するに、35歳という年齢に反対した人がいたんですね。特に日本企業は年齢にはウルサイ。35歳で兵隊ばかりの経験だったら、キャリアアップ転職はあきらめるしかない。経歴詐欺じゃないですけど、その日系の大手SIerへの面接の際はウソでも書きたかったですよ(笑)」

日本企業は、年齢だけでなく、転職の回数にもすごくこだわるという。山崎氏も、「最後の人事書類選考で、年齢の割に転職暦が多いからといい理由で落とされた」経験を持つ。転職では、スキル面だけでなく、最後は人事部マターの理由で落とされることもあり得ることを知っておくべきだろう。

山崎慎一氏(仮名・35歳)

大学卒業後、大手SIerで5年間ビジネスアプリケーションなどのシステム設計や開発を行う。その後、大手パッケージベンダにてERP導入のコンサルティングに携わり、現在はメーカー系システム会社でITコンサルタントを務める。開発、要件定義からプリセールスまで手掛け、業務知識も豊富なヤリ手のコンサルタント

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