ハイエッジ 第六回 上原ひろみハイエッジ 第六回 上原ひろみ

信じぬいたプロダクトだけが受け入れられる

上原ひろみ
演奏を聴いて、お客さんが笑みをこぼす。すると私も幸せな気持ちになるんです。

 お客さんには自分が信じぬいた音楽だけを聞いてもらいたい。そのためには、何の迷いも疑いもなくなるくらい徹底的に準備します。これは、人に対して何かを発信したり奉仕したりする人にとっては不可欠だと思うんです。

 実演販売でも、八百屋さんでも魚屋さんでも、自信のなさそうな顔をしていたら買わないけど、「これは絶対にいい!」と熱意を示されれば、何となく買いたくなるじゃないですか。自分が扱うプロダクトへの熱意や愛情もなく、誰かの手に渡したいという気持ちも持てないまま妥協していては、お客さんに失礼だと思うんです。

 仕事は「誰かを幸せにする」ために存在しているのだと、思っています。私の場合、たまたまそのプロダクトがコンサートだったりCDだったりするだけ。これはどんな仕事でも変わらないのではないでしょうか。


壁にあたって芽生える“ワクワク”感

上原ひろみ
「できないこと」に遭遇した時が、音楽をやっていて一番嬉しい時ですね。

 今、ライブで演奏したり、アルバムにまとめたりした曲は、ごく一部。完成していない曲は本当にたくさんあります。自分が思った通りの曲が作れない、納得がいかないことは日常茶飯事。“冬眠”している曲はたくさんありますよ。壁にぶつかって、30秒先から全然曲が作れなくなってしまうこともあります。

 でも、どんな壁が現れても、「壁の後には何が待っているんだろう……」と思うと、ワクワクするんですよ。「この壁をどう壊してやろうか」って。だからスランプに陥って悩むことはないですね。自分の思い描く演奏ができない、弾きたい曲が作れないのは、自分に対する要求がどんどん高くなっているから。それは今の自分では見えない世界にたどりつくためであったり、音楽家としてステップアップするためであったりと前進できる証拠なんです。

 1つ壁を乗り越えても、またすぐに新しい壁が現れます。きっとこれは一生続くでしょうね。でも、それがなくなったら終わりだし、逆に、自分ができないことに気付けるうちは必ず成長できると思っています。できないことに気付けば、あとは、必死に取り組んでいくだけですから。決して落ちこむ時間ではないのだと思います。


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