プレゼン、面接、会議……強いキャリアを創るためのホンネ対談 おちまさとプロデュース「偉人伝心」〜あなたのシゴトに効く!プロフェッショナル仕事術〜

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日本発の海外向け映画を生み出したい

遠慮深いことと消極的なことは違う。自分のすごさを見せるのは図々しいことなんかじゃない。(おちまさと)
おち

アメリカで成功して、次にどうしようっていう不安はないですか。

一瀬

なくはないです。いま僕はアメリカで、安くて当たるものをアメリカの資本で作ってくれると思われている。でも僕は、アメリカ資本に使われるだけでなくて、日本発の海外向け映画を日本で生み出したいんです。製作費が10億円ちょっとで全世界興収が200億円、さらにビデオだなんだとアメリカの会社がすごく儲けた『呪怨』みたいなことが、なぜ日本ではできないのかと思います。日本は未だに、世界第2位の映画市場なので、国内だけで50億とか60億は稼げてしまうから、国内で完結してしまうんですよ。でもそんな作品は一握りだし、全体のパイを増やすには世界に出ていくしかない。すでに日本のコミックなどが世界に出ていっているのでもわかるように、日本人の才能が世界に通用しないということはないんですよ。たとえば日本発の英語映画などは、充分チャンスがあると思う。でも国や企業も含めて、やろうという人がいないんですよ。日本人ってそういう点でダイナミックさに欠けますね。

おち

確実主義ですよね。安牌を切ってくる。僕なんかは、「これが通ればすごいことになる!」と思って、日本では相当危険な牌を思いきって出すところがあるんですが、いったんそれが通ったとなると、あとからみんなどんどん同じことをしてきて……あれムカつきますよねぇ!(笑) 「こっちがどんだけ勇気を出してその牌切ったと思ってるんだよ」と言いたくなる(笑)。日本の監督志望の人たちもそんな感じですか?

一瀬

みんな控えめですね。あるフィルムフェスティバルの審査員をやったときのことですが、授賞式後のパーティーで、韓国の学生とかはものすごい勢いでやって来て名刺を渡してきて、「次の作品を取ったらぜひ見てくれ」って言ってくる。でも日本人の学生はすみっこのほうで、行こうかなーどうしようかなーってじっと見てるだけ。これじゃ勝てないよなぁ。

おち

遠慮深いのと消極的なのをはき違えてますよね。自分のここがすごいっていうのを「図々しいから」って出さなかったりして。いやそこは「図々しい」じゃないんだよ。どうもそこがねぇ……。一瀬さんから見て、一緒に仕事をしていて「こいつは伸びない」って思うのはどういうタイプですか? イーキャリアを見ている人たちも、そのへんが気になると思うので。なにか怒りに触れるスイッチみたいなものって、絶対あるじゃないですか。一瀬さんの場合、それってなんでしょうか。

一瀬

確かにすぐ怒るほうだけど(笑)、どうやって判断してるのかなあ……やっぱり映画の仕事をしている人って、好きでやっているわけでしょう。好きな仕事をやらせてもらう以上、全力を傾けるしかないはず。でも、そこがぬるい人が日本には多い。

おち

逆に、こいつはすごいなってのは?

一瀬

たとえば紀里谷和明(※13)さんなんてすごいと思いますよ。ものすごいワガママなんですが、ワガママってすごくリスクを伴うわけでしょ。それが通せるのはすごいことですよ。今の日本って映画界に限らず、言われたとおりやる人が重宝されるじゃないですか。そういう規格内の人が多い中、紀里谷さんは完全にそこを外れている。確かに理不尽なことも言うし、前言を翻すことだってある。でもそれって、ものを作る以上あたりまえだと思います。市川崑(※14)監督なんてのもその最たるもので、昨日言ったことと違うなんて毎日ですけど、それもいいものを作るためだから、あとはそれにどれだけついていけるかです。今はそういう人を許容するプロデューサーもいない。そこは日本映画で一番不安なところです。日本って、想像通りでそこからはみでないものが多いですよね。映画を作るときも「少ない予算の中に絶対はめろ」とか言われるし、スケジュールも完成の日に向けて全部決められてたりする。それでは想像以上のものは絶対に生まれないですよ。海外の人と仕事をすることに惹かれるのは、そういうのがないところですね。ぶつかりあうぶんストレスはものすごくたまるけど、すごく楽しい。

おち

日本は既成概念を壊すことを非常にいやがるけど、それこそ黒沢明なんて完全にはみでちゃってるわけですしね。でも、ティム・バートン(※15)と話したとき、もっとめちゃくちゃな人かと思ってたら、すごくロジカルだったんですよ。たとえば『チャーリーとチョコレート工場』(※16)でも、主役が歯医者の息子っていう設定は原作にはないんだそうです。でも、「それがあると正義が生まれるから、観客が喜ぶ」って。この人ずいぶんちゃんとしてるんだなって思いましたよ。

一瀬

アメリカの俳優って、脚本を渡して出演交渉するとき、日本と違ってマネージャーじゃなく本人が最初から来るんです。で、本人が脚本について意見を述べるんですけど、ものすごくロジカルです。ハリウッドで生き残るためには、ただ見た目がいいだけじゃ全然だめなんですよ。『呪怨 パンデミック』の、小学生くらいの子役の子なんて特に頭脳明晰で、脚本の矛盾を全て指摘してくるんですよ(笑)。このキャラクターはこういう人物だから、この場面ではこうするんじゃないかって。

おち

それはすごい(笑)。それと、いま20代30代の、仕事や転職に悩める社会人に対して、一瀬さんから「これは見ておくべき映画だ」って3本くらいあげてもらうとしたら、なんでしょうかね?

一瀬

うーん、難しいなあ……たとえば、僕が定期的に見ているのは『インサイダー』(※17)。アル・パチーノが演じる男の生き方がすごく好きでね。自分にとっては燃える一本ですよ。あとは、むかし『就職戦線異状なし』(※18)っていう映画を作ったときは、「自分の進路を決める勇気をもらった」という手紙をいっぱいもらった。今でも「あれを見て生き方が変わった」って言われますよ。あと僕が好きなのは『ベイブ』(※19)。もう140回くらい見てる。

おち

へぇー! どうしてですか?

一瀬

この話をすると「なんで」って聞かれるけど、ほんとにせんぜんわからない(笑)。どこがいいかわからないけどなんだかハマる映画って、あるじゃないですか。なんだろ、ベイブの生き方が好きなのかな(笑)。

おち

そうか。みんな、ベイブのように生きろ!(笑)

一瀬

あと、『男はつらいよ』は全作品を絶え間なく見てますね。最後まで見たらまた1作目から見る。一生見てるでしょうね。ああいう生き方は自分にはできないって思うから。

おち

生き方もすごいし、映画としてもすごいですよね。なんでまた見てるんだろうと思いながら、また見ちゃう。

一瀬

おちさんはどういう映画が好きなんですか。

おち

僕は幅広いですね。もともとは『ジョーズ』なんです。そこからスタンリー・キューブリック(※20)とか。ティム・バートンは、誰も彼の後を追わないあたりが切なくて、もし自分が映画をやるなら、そこを追いたいなと思いますよ。一瀬さんはもともとご自身がホラー好きというわけではないんですよね。

一瀬

ぜんぜんないですね。ただ、ホラーは好きじゃなかったけど、センスがなかったわけじゃないからやれてると思います。だから、最初からまったく興味のない分野は無理でしょうね。でも、分析するのは好きなんですよ。徹底的に分析したいたちなので、まずは対象を徹底的に分析して、いったんそれを忘れて自分の中に降りてくるものを信じる。ものを作るときはだいたいそういうふうにしてます。データからものを作ったことはほとんどないけど、分析は最初に必ず徹底的にやりますね。

おち

感覚だけでやってるように見せて、ロジカルですよね。プロデューサーには、やっぱりそれが両方ないと。

※13 写真家・映像クリエイター・映画監督。多くの人気アーティストのジャケット写真やミュージック・ビデオを手掛けて注目され、1970年代の人気アニメ『新造人間キャシャーン』を実写映画化した『CASSHERN』(2004)で映画監督としてデビューした。一瀬氏プロデュースによる最新作『GOEMON』は2009年公開予定

※14 日本を代表する映画監督の一人。戦後まもなくから21世紀に至るまで第一線で活躍し、テレビドラマ分野でも足跡を残す。2006年には自身の代表作『犬神家の一族』を一瀬氏プロデュースによりセルフリメイク、これが映画監督としての遺作となった

※15 米映画監督。独特の脚本や映像、キャラクター造形に熱狂的なファンも多い。日本でも人気の『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の原作者でもあり、映画版の監督も務めた。その他の代表作は『シザーハンズ』(1990)『バットマン』シリーズ(1992〜1995)『ティム・バートンのコープスブライド』(2005)など

※16 2005年に公開されたティム・バートン監督の映画。ジム・キャリーの怪演も話題となった

※17 19991年公開の米映画。実話を下敷きにした、アメリカのタバコ産業の不正をめぐる社会派ドラマ。アル・パチーノは主役のTVプロデューサーを演じている

※18 一瀬氏がプロデューサーを努めた1991年公開の日本映画。主演は織田裕二。就活を軸にバブル時代の大学生の青春模様を描き、同世代を中心に共感を呼んだ

※19 1995年公開(日本では1996年)の豪映画。牧羊犬に憧れる子豚のベイブら擬人化された動物の世界をCGやロボットで見事に描写し、アカデミー賞視覚効果賞を授賞

※20 米映画監督。『2001年宇宙の旅』(1968)『時計じかけのオレンジ』(1971)『フルメタル・ジャケット』(1987)など映画史に残る数々の名作を生み、大きな影響を与えた

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