
今回は、強みを考える上でもう1つ大切な視点を紹介します。まずは、いつも
一緒に仕事をしている人のことを順番に思い起こしてみてください。
仮に、あなたは今、自分が抱えている仕事を誰かにお願いしたいと思っている
とします。同僚たちを見回したところ、経験やスキルの上では最低限のレベル
をクリアしている人が何人かいます。この時、いったいどの人に仕事をお願い
するでしょうか? そしてそれはなぜですか? ちょっと考えてみてください。
●スキルよりもやる気?
人に仕事をお願いしたことのある人なら分かると思いますが、仕事を引き受け
る人には、その仕事を「できる/できない」のほかに、はっきりと差のつく要
素があります。
それは、やる気です。
仮に時間の制約や仕事の条件がそれほど厳しくない場合、そして人の好き嫌い
の差が影響しない場合、おそらく、経験豊富だがやる気のない人よりも、経験
が少なくても(その仕事ができると判断できるならば)やる気がある人の方
が、仕事を頼もうという気になりやすいものです。
私自身このことを何度も経験しました。たとえば、企業から研修の依頼をされ
る時、まず簡単な打ち合わせをして先方が期待しているテーマについて説明を
受けます。
独立して間もない私の場合、打ち合わせに呼ばれる段階では、何人も他の候補
者も同様の打ち合わせに呼ばれていることが多く、その時点でその研修の仕事
を正式に依頼されるのかどうかはわかりません。
そして、日を改めて具体的にはどんな内容・進め方になるのかを自分から提案
するのが一般的な流れです。
当然、仕事が決まる時もそうでない時もあるのですが、運良く依頼が私のとこ
ろに来た時に後で理由を聞いてみると、十中八九は「一番やる気を感じたか
ら」と言います。
何十年ものベテランが候補者の中に入っていることもよくあります。彼らと経
験やスキルだけで比べても勝負にならないかもしれません。それでも、やる気
が決め手になることが多々あることを、日々肌身に感じて仕事をしています。
●やる気は強みにつながっている
しかし、どうしてそれほどやる気を重視するのでしょうか?
一言で言うと、やる気は人に伝染するからです。
やる気があるのとないのとは、本人以外から見ると簡単に見分けることができ
ます。たとえば、やる気のある人は、細かいところまでこだわることができま
すが、やる気のない人は、詰めが甘いのです。
そうした姿勢が、周囲の人に大きく影響します。
最低限求められているレベルの仕事ができる「強み」を持った人はたくさんい
ます。その中から良い人を選べばいいわけです。ところが大切なのは、一緒に
働く人は、強みだけで人を判断しているわけではないのですね。同じ一緒に働
くのなら、気持ちよく、楽しく働きたいわけです。
それには、「やる気」という、「強みとは別の」プラスのエネルギーが必要な
のです。
やる気のある人と仕事をしていると、自分もやる気になるものです。
そう考えると、やる気とは、人の心を動かす力ですよね。
人の心を動かす力を持っていたら、周りの人がどんどん期待するのです。そう
すると、「やる気」が繰り返し刺激されて、スキルがどんどん鍛えられていく
わけです。
そうして、やる気がその人の強みをさらに強化していくのです。

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大阪府堺市出身。筑波大学(心理学)、米コロンビア大学院(国際広報)卒業。 外務省在外公館派遣員として在英国日本大使館で要人接遇という「対人コミュニケーション」業務、国連機関や米系PR会社、メーカーで広報という「コーポレート・コミュニケーション」業務、そしてライセンスや提携アライアンスという「企業間コミュニケーション」業務など一貫して「コミュニケーション」をテーマに経験を積み、2005年2月に独立。 効果的な情報発信をコアにしたコミュニケーション技術を教えている。著書に、「転職を考え始めたら読む本」(全日出版)「できる社員は要領がいい」(DART)「つるの式仕事術」(IEC)などがある。
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