海外ではたらく!めずらしいこんな仕事

第1回 エンバーマー 
Embalmer

鳥葬、海洋葬、はたまた宇宙葬など、世界にはさまざまな葬法があるが、キリスト教圏のアメリカではまだまだ土葬が主流。そこで、アメリカの葬儀ビジネスで活躍するエンバーマーと呼ばれる仕事にスポットを当ててみた。

アメリカではここ数年、火葬を希望する人が急速に増えているが、それでもまだまだ主流は土葬。
埋葬は宗教的な理由から死後数日たってから、または参列者の都合を考えて週末に行われることが多いため、遺体は数日間保存しなければならない。そこで登場するのがエンバーマーと呼ばれる人たちだ。

Embalmerの動詞形であるEmbalmには「防腐処理を施す」のほかに「ミイラにする」という意味もあり、古代エジプトではオイルやハーブなどを使ってエンバーミングが行われていた。そう、俗にいうミイラの製造だ。
しかし、現代のエンバーミングの目的は古代エジプトのような「永久保存」ではない。死亡から埋葬まで遺体をきれいな状態で保存し、破損があれば修復する。そして化学的な処理を施して死体感染を防ごうというもの。最終的な死化粧もエンバーマーの仕事で、この段階ではいかに自然に、安らかに眠っているように見せられるかが、腕の見せどころとなる。

エンバーマーは日本の葬儀屋さんがするように、遺体の下にドライアイスを置いて白い衣装を着せる、という簡単なものではない。遺体から血液とガスをすべて取り除き、洗浄。そして防腐剤などを注入し……という、遺体解剖的な要素を含んだ複雑な仕事だ。生物学と化学、さらに法理学の知識も必要という専門職で、エンバーマーが葬儀ディレクター(Funeral Director)を兼ねる場合も多い。

【データ】

エンバーマー・ライセンス保持者:2万人(葬儀ディレクターを含む)
National Funeral Directors Association 調べ

ライターコメント

州によって多少異なるが、エンバーマーになるには一般的に大学で死体防腐学(embalming)か葬儀学(mortuary science)を学び、ライセンス保持者のもとで約1年間のOJT(現場実習)が義務付けられている。そして、州の試験に合格することで晴れて一人前のエンバーマーになることができるのである。

遺体の中には事故などで破損がひどい場合もあり、家族としてはせめて送り出す時くらい凄惨な傷跡を消してあげたいと思うもの。そこでエンバーマーの出番となり、あれこれ技を尽くすわけだ。参列者が別れを惜しむ際、まるで眠っているかのような安らかな表情になればベスト。エンバーマーは死にゆく人と生きる人の最後の瞬間を彩る、メイクアップアーティストのような役目をも担っているのである。

Writer Profile

Masami Suzuki

東京で編集者を勤めた後、フリーランス・ライターとして独立。「派遣の花道」(WAVE出版)を始め数冊の本を出版するも、33歳の時に「人生のブレイク」と称していきなりアメリカ留学を決意。が、渡米2年目にひょんなことから現地の日本語メディア会社に就職することになり、地元情報誌の編集長を2年半勤めた後、2005年よりフリーランスライターに。ワシントン州シアトル在住。

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