海外ではたらく!はたらくひとinterview

第2回 日系通信企業のパリ支店で働く日本人

演劇の勉強のために渡仏。得意のパソコン技術をいかして、ワーキングホリデー・ビザで働いた後に、正規労働ビザ取得に成功する。学生、ワーキングホリデー、現地採用社員とステップアップしていき、現在はNTTヨーロッパでプロジェクト・マネージャーとして働く佐藤さんにお話を伺った。

フランスに来たきっかけは何ですか?

日本でサラリーマンとして一生を送ることに疑問を持ち、仕事を辞めて半年ほどヨーロッパを放浪しました。フランスからスタートして、ベルギー、オランダ、ドイツ・・と12カ国ほど周って。元々アメリカが好きではなかったので、その対極にあるフランスが気に入りました。それに以前から演劇に興味があったので、パリで演劇の専門学校に通おうと決めたのです。帰国して派遣で銀行の業務ソフト開発支援などの仕事をしながら、留学資金をためました。

学校生活はどんな感じでしたか?

まずは自分のフランス語力不足を痛感しました。先生の話が理解できなかったり、フランス人学生はみんな意見をどんどん言うけれど、自分は語彙不足で言いたいことがうまく表現できなかったり。それで語学力アップのために、夜は語学学校にも通いました。 それから学校で若いフランス人学生と付き合う中で、フランス人の物の考え方が分かった気がします。それは今、フランスで仕事をしていく上でおおいに役立っていますね。

今の会社に就職したきっかけを教えてください。

パソコンが得意だったので、パリ在住の日本人にパソコンの使い方を教えたり、修理やメンテナンスを引き受けたりしていました。そうしたら、NTTヨーロッパでパソコンに詳しい人材を探している、と教えてくれた方がいて、問い合わせると労働ビザが必要だと言われました。ちょうどその時、フランスでもワーキングホリデーが始まると聞いて、申請したら、ワーキングホリデー・ビザが取得できたんです。それで、NTTヨーロッパで日本人、フランス人の管理職と面接をして採用されました。

ワーキングホリデー期間中はどのような仕事をされましたか?

在仏日本企業のパソコンのメンテナンス業務です。取引先に定期訪問して、トラブルに対応したり、技術的な質問に答えたり、一台のパソコンをフランス語環境と日本語環境の両方で使用できるように設定したり。ワーキングホリデー・ビザで1年間働いたところで、会社から正社員採用のオファーがありました。それで労働許可を申請して、3ヵ月後に正規の労働ビザを取得できました。

フランスで外国人が労働許可を取得するのは非常に難しい。大手企業に採用されることが決まっているにもかかわらず許可が下りるまでに半年以上かかったり、もちろん申請が却下されてしまうケースも。また、申請が却下されると同時に国外退去命令が出ることもある。佐藤さんは、「自分の縁がフランスにあるのかそれとも日本にあるのか、がこれで分かるし、却下されれば日本に帰ればいい」という心積もりだったという。

現在の仕事の内容は?

今年の7月からプロジェクト・マネージャーに昇進しました。それまでは上司の指示で動くテクニシャンに過ぎなかったのですが、今では日本人1人、フランス人4人の合計5人のテクニシャンを部下に持つ立場です。仕事の内容は前よりずっと面白くなりました。また、以前に比べてフランス語を使う機会が増えましたね。電話やメールのやりとりはもちろん、報告書、提案書の作成など全てフランス語を使うので、ビジネスフランス語はかなりブラッシュアップされたと思います。

働く上で感じる日仏の違いは何ですか?

フランスでは仕事より家族と過ごす時間を優先する人が多く、仕事が残っていても、定時になるとさっさと帰ってしまいますね。実際、労働者の権利がきちんと守られている、という印象を受けます。例えば一日10時間以上働くことは禁じられているし、有給休暇は必ず消化しなくてはならないし。夏は3週間のバカンスが義務付けられているので、進行中のプロジェクトが担当者のバカンスで中断しても、上司も取引先も文句を言いません。

今後の抱負を聞かせてください。

まずは、プロジェクト・マネージャーとしてフランスの同僚に引けを取らないような仕事をしたいですね。ゆくゆくはITコンサルタントとして独立することも考えています。それから、演劇活動は今、休止中ですが、また何らかのかたちで再開したいと思っています。

インタビューを終え

佐藤さんのケースはワーキングホリデー制度を利用して正規労働ビザの取得に成功した理想的な例だろう。フランスで企業が労働ビザを持たない外国人を雇用する場合、煩雑な手続きが必要で、さらに管理職待遇で採用することが義務付けられている。そのため、企業側は採用に慎重にならざるを得ない。佐藤さんのようにワーキングホリデー・ビザで働いた1年間が試用期間(もちろん有給で)と見なされ、仕事ぶりが評価されれば、企業も正規採用・労働ビザ取得に積極的に動いてくれるというわけだ。 「ワーキングホリデーを正規採用に結び付けたい人はフランスに来てから職探しするのではなく、フランスに着いたらすぐに働けるように、日本にいる間に就職先を見つけておいた方がいいですよ」と佐藤さんからのアドバイスだ。

Writer Profile

Yuka Egusa

フリー・編集ライター。96年からパリ在住。ライターとして日本の雑誌やHPにパリ情報、フランス社会・文化などをテーマに寄稿。同時にパリ発・日本語情報誌『ビズ・ファミーユ』の編集・発行人を務める。著書に芝山由美のペンネームで書いたOL留学体験記『夢は待ってくれるー女32才厄年 フランスに渡る』がある。海外書き人クラブ・メンバー。

今週のはたらくひと

佐藤 弘一  Kouichi Satoh

NTTヨーロッパ・パリ支店
システムインテグレーション事業 プロジェクト・マネージャー
1972年、神奈川県生まれ。演劇の勉強をするためにフランスに留学し、専門学校で2年間演劇を学ぶ。その後、ワーキングホリデー・ビザを取得し、パソコンに関する豊富な知識、技術を評価され、NTTヨーロッパ・パリ支店に勤務。1年後に正式採用となる。趣味は"人と交わること"で、2002年に現地採用者、自営業者のサークル「在仏日本人はたらく人の会」を立ち上げた。また、ピクニック、インターネットのオフ会などに参加するのが好き。

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