海外ではたらく!はたらくひとinterview

第3回 パリで会社を経営する日本人女性

MBA取得を目指して渡英。留学先のロンドンで知り合ったフランス人男性との結婚を機にフランスに渡る。不動産会社を設立し、MBAホルダーといえども地道に営業活動を行いながら、パリで着実に事業を広げている小菅さんにお話を伺った。

MBAを目指したきっかけは何ですか?

外資系カード会社に勤務していた時、同僚にMBA保持者が多く、興味を持ちました。海外でも通用する学歴が欲しかったこと、それから日本の大学では英語学を専攻したので自分には会計学など、ビジネス系学問のベースが欠落していると感じて、取得を決意しました。アメリカのビジネススクールからも受入れ許可が下りたのですが、イギリスに比べると費用が10倍ほどで、MBA取得に2年もかかる。ロンドンの学校なら1年で済むので、2年間留学して、1年目に経済学修士を、2年目にMBAを取得しました。

ロンドンでの留学生活は?

色々な国の学生と知り合えて面白かったです。MBA取得コースはグループ作業が多いので、出身国によるキャラクターの違いがよく分かりました。ただ、みんなに共通しているのはアクセントがひどく、文法も間違いだらけの英語を恥と思わず、積極的に話している点。日本人は正しい英語にこだわるけれど、それよりも自分の意見、考えを簡潔にまとめて明確に伝えられることの方が大切だ、と感じました。また、試験前やレポート提出時など一日12時間も勉強したり、と大変でしたが、MBAを取って自分に自信が持てるようになったと同時に興味のあること、方向性などが見えてきました。

フランスに来たきっかけは?フランスという国の印象はいかがですか?

ロンドンで働いていたフランス人男性と知り合って結婚しました。まもなく夫が仕事の都合でパリに戻ることになったのです。それまではフランスには縁がなく、フランス文化への憧れもなかったのですね。実際、住み始めると、パリジャンはとっつきにくいけれど、付き合ってみると正直でいい人が多く、京都の人間に似ています。パリはロンドンよりも自分の性に合っていますね。言葉の問題ではロンドンでフランス語学校に通ったので、パリに来た時点ですでに日常会話は支障なくできました。パリの語学学校で商業フランス語と仏作文を学びましたが、特に商業フランス語は英語の基礎があったので、それほど難しくありませんでした。

会社設立にいたるまでの過程をお話しください。

不動産業を選んだのは初期投資の必要が無いこと、また個人的に興味のある分野だったから。それに、EU圏内で経済学の学位を取得していると、書類提出のみで不動産免許もすぐに取得出来るんです。事務所を開いてからは街を歩いて気に入った地域に張り紙をしたり、それから近所の商店街の店主たちと親しくなったりして、少しづつ物件を開拓していきました。MBA保持者のネットワークや夫のグランゼコル(高等専門大学 フランスのエリート養成校)の人脈もあるのですが、近所の口コミ情報もあなどれません

MBA保持者と聞くと、スマートに仕事をしているイメージがあるが、小菅さんは足を使って地道に営業活動をしている。「客商売をする者は一つの店だけで買い物してはあきまへん」という呉服屋を営むお母様の教えを守り、パリでもスーパーやデパートではなく、地元の八百屋、肉屋、ブティックなどで買い物をしながらネットワークを広げているのだという。

現在の仕事の内容は?

日本人をはじめとして、外国人留学生や研修生、駐在員への賃貸住宅物件の仲介です。弊社は完全なサイバー不動産業者ですので、顧客のほとんどはサイトを見て外国から連絡をして下さる方です。また、家賃を収集したり、改装の提案をしたり、不動産売買のタイミングをアドバイスしたり、というフランス人家主側へのサービス業務も行っており、こちらも拡張中です。

働く上で感じる日仏の違いは何ですか?

日本人は先のことを考えて、プランAを準備しながらもそれがダメだった場合のプランBも準備していたりする。でもフランス人は行き当たりばったりで、明日は明日の風が吹く、というタイプが多いんです。そんな彼らをどれだけこちらのペースに持ち込めるか、がビジネス成功のポイントですね。また、フランスは“法律でがんじがらめ”の国という印象があります。「その法律は知りませんでした」は絶対に通じません。法的なことを120%確認してから仕事に向かう気持ちでいます。

今後の抱負を聞かせてください。

最近、フランスでは長期滞在ビザ取得が難しくなり、語学学校入学に必要な学生ビザも取りにくい状況で、日本人、アメリカ人を中心とする外国人留学生の数が減っています。これからは単なる物件紹介だけではなく、インターネットをより活用して、もっと一人一人の顧客ニーズに合わせたサービスを提案していく予定です。賃貸住宅以外の不動産物件(特に商業物件)にも着手しています。また、パリだけではなく、フランスの地方都市、さらにはイギリス、ドイツ、ベルギーなどヨーロッパの主要都市にある不動産会社と提携しながら事業を広げていこうと考えています。

インタビューを終え

高学歴、高キャリア、語学堪能、この3つが揃っていても、フランスで外国人が事業に成功することは容易ではない。小菅さんの場合は人的ネットワークが豊富な上に、地元商店街で口コミ情報を集めるなどの地道な努力を惜しまない点がビジネスの成功に繋がっているようだ。また、仕事一筋、というタイプの人間はフランスでは歓迎されない。小菅さんのように日本舞踊からシンクロナイズド・スイミングまで趣味の幅が広く、さらにボランティア活動にも従事するようなアクティブで話題が豊富な女性はフランス社会に受け入れられやすく、仕事上のネットワークもすぐに広がっていくだろう。

Writer Profile

Yuka Egusa

フリー・編集ライター。96年からパリ在住。ライターとして日本の雑誌やHPにパリ情報、フランス社会・文化などをテーマに寄稿。同時にパリ発・日本語情報誌『ビズ・ファミーユ』の編集・発行人を務める。著書に芝山由美のペンネームで書いたOL留学体験記『夢は待ってくれるー女32才厄年 フランスに渡る』がある。海外書き人クラブ・メンバー。

今週のはたらくひと

小菅 暁子  Akiko Kosuga

MIYAKO (京) IMMOBILIER
社長
1968年、京都生まれ。大学卒業後、大手旅行会社に勤務していたところを外資系カード会社にヘッドハンティングされる。その後、ロンドンに留学し、ロンドン.スクール・オヴ・エコノミックスで経済学修士号を、さらにロンドンシティ・ユニバーシティ・ビジネススクールでMBAを取得する。2001年にフランスに渡り、2002年にMIYAKO IMMOBILIERを設立。趣味は着物、日本舞踊、水泳、シンクロナイズド・スイミング。ネコ愛護協会のメンバーとしてボランティア活動も行う。

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