海外ではたらく!はたらくひとinterview

第4回 ルノーで働く日本人カー・デザイナー

海外で働いてみたいと考えていても、言葉の壁を前になかなか踏み切れない人は多いだろう。しかし、採用する企業にとって、最優先するのはあくまでその人の能力。特に専門職の場合は、その傾向が強いようだ。 今回は、カー・デザイナーとして、日本企業から海外企業に転職し、現在はフランスで働く岡崎さんにお話を伺った。

転職のきっかけは何ですか?

マツダに入社して12年目にマネジメント担当になりました。部長に「今後、いっさい画を書くな」と言われて。2年間マネジメントをして、それはそれでやりがいのある仕事でしたが、元々、カー・デザインがやりたくて入社したのですから、転職を決意したんです。
まず、日本の主な自動車会社の面接を受けました。ただ、組織の体質、開発プロセス、社員のメンタリティなどの会社環境にあまり変わりがないので、それで海外の自動車メーカーへ目を向けました。

日本にいながら、どのように海外の企業への就職活動をされましたか?

海外メーカーの中から、デザイン重視の会社であること、デザイン部長が一緒に働いてみたい、と思える人間であること、の二点にこだわってBMWとメルセデスとルノーを選び、英文の履歴書を送りました。ただ、ルノーだけはフランス語の履歴書も添えたんです。 同僚にフランス語が日本語よりも得意、という帰国子女がいて、彼が仏訳してくれて。
さらに彼のアドバイスで、和紙で封筒を作ってみました。フランス人はエキゾチックなものが好きだし、世界各国から履歴書がたくさん届くので、何か目をひくようなことをした方がいいのでは、と。結局、3社とも採用通知が来ましたが。

採用が決まったポイントは何だと思いますか? なぜこの会社を選んだのですか?

自分はマツダにいた15年間で11プロジェクトのデザインを担当しましたが、これは同年齢のデザイナーが担当する平均的プロジェクト数の2倍にあたります。だから、経験値の高さを買われたのでしょう。
ルノーを選んだ理由は、まず、メルセデスは日本にスタジオがあり、そこに勤務するように言われたので断りました。せっかく外国メーカーに入るなら海外で働きたいと思って。
また、BMWよりルノーの方が楽しみながらカー・デザインができるイメージがありました。それに家族の生活を考えると、日本人の多いパリ近郊の方が住みやすいだろう、と。

現在の仕事の内容は? また、語学面でハンディを感じることはありますか?

量産小型車とコンセプト・カーのデザインを担当しています。
入社時にはフランス語は全くできませんでしたが、カー・デザインは、どこの国の自動車メーカーでも、画を描く道具、描き方に差はないので、特に支障はありませんでした。
今の職場ではヨーロッパ各国、韓国、セネガル、モンゴルなど世界26カ国からやって来たデザイナーが一緒に仕事をしています。ただ、職場の公用語はあくまでもフランス語なので、渡仏してすぐに会社で80時間のフランス語研修を受けました。

岡崎さんのような専門技術職の場合、能力やキャリアが評価されれば、言葉ができるかどうかは採用時にそれほど問題とされない。もちろん、仕事上のコミュニケーションに最低限の語学力は必要となるが、岡崎さんは入社直後に集中的に語学研修を受け、後は、仕事をしていく中でフランス語が身についたのだという。
今では、会社からの派遣で週一回、デザイン専門学校のカー・デザイン部門で、フランス人やイギリス人の学生を対象にフランス語と英語で講義を行っているそうだ。

働く上で感じる日仏の違いは何ですか?

フランスでは上司があまり部下の管理をせず、仕事を全て任せる、という感じです。
例えば「2ヵ月後にプレゼンがあるから」と言われると、あとはプレゼン当日まで、上司は何も口出ししません。
最初は、私の方から上司に意見を伺いに行ったりしたのですが、「キミの仕事なんだから、キミがいいと思うようにすればいい」と。
それから、フランス人は日本人に比べて集中力が高く、仕事の密度が濃い、と感じます。定時退社、長期バカンスが可能なのは、短時間で効率よく働き、マネジメントに長けているから、という印象を受けますね。

今後の抱負を聞かせてください。

しばらくはルノーで働くつもりですが、その後は他の国にも行ってみたい。ただ、自分のカー・デザイナー人生の最後には日本に戻るつもりです。
フランスと比較しても、日本の自動車メーカーの場合、開発プロセスや方法に、まだまだ改良点がありますから。日本の自動車のデザインをよくするためにリーダーとして貢献したいですね。

インタビューを終え

フランス人は休んでばかりで働かない、というイメージを持っている人は少なくないだろう。しかし、日本でトップレベルのカー・デザイナーだった岡崎さんから見て、フランス人デザイナー、そしてルノー採用される外国人デザイナーは能力が高く、特に短期間でいいものを作る彼らの集中力には驚かされるのだという。
世界中から優秀なスペシャリストが集まってくるため、就職は狭き門かもしれないが、逆に能力があれば言葉ができなくても採用されるチャンスがある、ということだ。 スペシャリティを持っていても言葉の壁を心配し、海外就職を躊躇している人に、岡崎さんのフランス企業への転職例は大きな励みになるだろう。

Writer Profile

Yuka Egusa

フリー・編集ライター。96年からパリ在住。ライターとして日本の雑誌やHPにパリ情報、フランス社会・文化などをテーマに寄稿。同時にパリ発・日本語情報誌『ビズ・ファミーユ』の編集・発行人を務める。著書に芝山由美のペンネームで書いたOL留学体験記『夢は待ってくれるー女32才厄年 フランスに渡る』がある。海外書き人クラブ・メンバー。

今週のはたらくひと

岡崎 純  Jun Okazaki

1965年、兵庫県生まれ。86年にマツダ株式会社に入社し、広島本社および横浜のデザイン・スタジオにて勤務。2000年にルノーに転職し、渡仏する。趣味は50年代フランス車のティン・トーイ(ブリキ製のミニカー)のコレクションで、それを修復して飾るのが楽しみ。また、天気のいい日曜日にはパリのセーヌ川沿いの道路が歩行者天国になるので、そこでローラーブレードをする。

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