海外ではたらく!はたらくひとinterview

第3回 日本企業の韓国進出を支える日本人

このところ、韓国の男性と結婚する日本の女性が増えている。第三国や日本で出会って結婚し、韓国で暮らすという若いカップルによく出会うようになった。韓国のことに関心もなかった彼女たちが、夫の国で生活の基盤を築いてくのはなかなか難しいことだ。特に言葉もわからないうちから仕事を見つけるのは至難の業である。今回は一年という短い期間で韓国語をマスターし、韓国政府の重要機関で立派に働く早田有希さんにお話をうかがった。

韓国に来たきっかけは何ですか?

上智大学比較文化学部国際ビジネス経済学科に在籍中、韓国からの留学生であった今の夫と同じクラスで仲良くなりました。卒業後、1年間は離れ離れで夫は韓国で就職活動をし、私は東京の投資会社に勤めていました。お互いの両親の承諾を得て03年2月に結婚し、韓国で暮らし始めました。

韓国語はどのように習得しましたか? 就職時の韓国語のレベルはどの程度でしたか?

韓国に来てから始めました。昼間は夫の助けもないので外で日常会話の感覚を身につけ、3ヶ月ほどテキストで基礎を勉強してから、韓国人とお互いの言葉を教えあう形で会話などマスターできました。現在の職場に就職した際には、習いはじめて1年弱でしたから、意志伝達に不自由はありませんでした。でも発音はまだ特訓中です。

韓国への関心は以前からありましたか? また、実際に結婚して韓国で生活してみてどうでしたか?

大学の東アジア経済の授業で、韓国のITや半導体などの産業分野の急成長や民主化、IMF危機などに触れ、関心をもったことはありましたが、ペ・ヨンジュンなど韓国ブームも始まる以前で、かかわる機会がありませんでした。父の仕事の関係でタイに7年間いたこともあり、東南アジアや南アフリカなどの経済・開発発展政策やNGO活動などに興味が向いていました。韓国に来て1年間は文化や考え方の違いなど苦労もありましたが、最近は来てよかったと思えるようになりました。

今の会社に就職したきっかけは? 就職活動などしましたか? 入社試験や面接などのエピソードがあればお願いします。

まだ韓国語が未熟な頃、語学を身につけながら社会経験を積むつもりでオンラインゲームの会社に入社したんですが、1ヶ月で倒産の危機に直面し、給料もわずかしかもらえず退社しました。でも、そこで一緒に働いていた日本人社員の方から今の仕事の募集について教えてもらいました。入社試験は1人の募集に日本人の最終候補者が10人、韓国人の最終候補者も10人でした。第1次面接を野村総合研究所ソウル支店コンサルタントと3対1でやり、2次面接は韓国部品素材投資機関協議会の公務員とでした。面接までは短い準備期間でしたが、自己PRを韓国語で練習し、予想される質問に回答を準備し、質問には柔軟に答えられるよう韓国語を鍛えました。分析力・瞬発力・判断力・思考力など総合的に判断されるので難しい面もありましたが、最終的に決め手になったのはやる気とリサーチ経歴と海外在住経験だと思います。

大学での専攻は? 今の仕事に役立っていますか?

国際ビジネス経済という専攻と、東京の投資企業での経歴、そして海外在住の経験が役に立っています。たとえば、ダンピングの問題が取り上げられた時には大学での国際ビジネスという授業の知識が役に立ちますし、財務に関わる仕事では会計の知識、といった具合です。しかし、大学時代に集中的に勉強した国際開発経済などの知識は現在全く活用する機会がありません。今後、韓国から他地域への経済協力などにいずれ携わりたいと思ってます。

現在の仕事内容を教えてください。

2004年、韓国政府の産業資源部が日本の部品素材企業をターゲットにした投資誘致専門機関JapanDeskを発足しました。運営.管理は韓国部品素材投資機関協議会が行い、私は一応その所属ということになっています。誘致活動は野村総合研究所ソウル支店がやっています。私はリサーチ、財務、企業への対応のアシスタントを任されています。

早田さんに話を聞くため、貿易センタービルを訪れた。ソウルを東西に流れる漢江(ハンガン)の南側エリアは今や最先端ビジネスの発信地である。COEXと呼ばれる貿易センターは、会議場やコンベンションホールなどがあり、2000年にはアジア欧州首脳会合(ASEM)が開かれたところだ。企業誘致や投資などという未知の分野で働く人に会うというだけで緊張するが、オフィスの場所が場所だけに会う前から勝手にばりばりのやり手の女性というイメージを抱いてしまっていた。
しかし、実際にお会いした早田さんは堅実そうな落ち着いた女性であった。貴重なお昼休みにお邪魔したのだが、「まずはご案内を」と会議室でパンフレット片手に仕事の内容について丁寧に説明をしてくださった。好奇心であれこれ質問するインタビューアーに少しも嫌な顔をしないで嬉々として答えてくれる早田さんに、普段のお仕事への真摯な取り組みを垣間見るような気がした。
このような誠実な人が韓国側の窓口にいれば投資する日本側としても心強いなと思うが、実際には一筋縄ではいかない大変な仕事のようだ。例えば、韓国の自動車産業は部品などを日本からの輸入に頼っているが、早田さんは部品工場などを日本から誘致して韓国に投資させるための仲介役を担っている。次にも出てくるが、外国人が韓国のことをリサーチし、韓国側で対応するという仕事は想像以上に困難なものであると思う。自動車のことは一から学んだという彼女のやる気と努力には脱帽である。

仕事をしていて大変なこと、困ったこと、またやりがいを感じるときなどをお聞かせください。

何よりやはり、外国人が韓国のことを説明するのはちょっとという雰囲気があるところです。韓国に関してはやはり当然韓国人がというものです。私自身このデメリットを埋めようと韓国語も日頃から勉強しつつ、一方では韓国の投資環境や労使のこと、市場や法律/会計などに詳しくなるため努力を重ねてはいますが、職場で与えられる機会に限界を感じて苦しい時もあります。
やりがいは企業の韓国投資担当者の方から今後もいいアドバイスお願いします、と言われたときや、頼りにしていただけるときだと思います。一言で投資といっても企業によってケースバイケースの課題を抱えていて、私たちの力だけでは解決が難しい部分もあり、JapanDeskの限界とプレッシャーを感じますが、ひとつのチームで目標の達成のために邁進していくことには醍醐味を感じます。

働く上で感じる日韓の違いは何ですか?

韓国は日本よりオープンで社員同士率直に話す雰囲気があり、チームワークがいいところはいいですね。何かを決定してからの推進力やスピードも時々驚かされます。ただし、裏表があるのは日本と同じで、韓国は最近の日本以上に組織や縦割りの職位の差を重んじる傾向にある気がします。上司や先輩を重んじるのはいいことですが、欧米企業のように上司ともフランクに付き合える雰囲気がたまにうらやましい時もあります。

今後の抱負を聞かせてください。

まだ漠然としていますが、来年度から新規事業で韓国の中小企業などへ日本の技術・資本・人材などの導入を行い中堅企業への育成支援を行う企画があり、韓国の中小企業・裾野の経済発展に貢献できればと思っています。経験を積みつつ法律にも詳しくなり、外国人労働者など弱者に役に立つことができればとも考えています。さらに、先ほど話しましたが、韓国から他地域への協力活動にも何らかの形でかかわれればと思っています。

インタビューを終え

たしかに、現在の韓国は外国企業が投資しやすい国ではなくなってしまった。人件費、設備費などの経費の負担、労使関係の不安定さに加えて、法律や税金などが外国人投資家には負担となっているといわれる。国内産業は発展し、輸出は増大しているが、自動車一台売っても純国産ではないため、利益率が低いというようなニュースはよく耳にする。そんな中、打開策として政府が肝いりで発足させたのが早田さんの勤めるJapanDeskである。韓国在住1年目にして重大な任務を任された早田さんだが、持ち前の才能とバイタリティで立派に役目を務めているようだ。
取材のための連絡を取っている間にも彼女は日本へ出張に行って来た。日本企業に韓国マーケットの説明をしたり、頼まれたリサーチの分析結果を伝えたり、投資の相談にのったりと多忙な毎日のようだ。驚いたことに、彼女はすでに一児の母親だという。幼い息子は地方に住む夫の姉夫婦に預けているため、たまにしか会えないのだと話す彼女のがんばりに心痛んだ。子どもを持つ若い男女がもっと働きやすい環境になればと願うばかりだ。韓国では大家族的な暮らしが今も残っているため、育児を他の家族に頼むことはよくある。彼女曰く、韓国で子どもを産み育てることは日本よりも家族の絆や倫理観、自分の国への誇りなどいい影響を与えられるのではと期待しているという。育児にも前向きな気持ちに好印象を抱いた。向上心あふれる早田さんの今後の活躍が楽しみだ。

Writer Profile

Kaya Tabata

1991年より韓国在住。梨花女子大大学院女性学科修士課程卒業。国際交流基金ソウル文化センター、オープンサイバー大学で翻訳を教える。子どもの育児環境を求めソウル郊外へ引っ越し、週の半分は自宅で翻訳やエッセー執筆をしている。

今週のはたらくひと

早田 有希  Yuki Soda

韓国部品素材投資機関協議会
JapanDeskチーム
1979年、新潟県生まれ。小学校6年生から7年間、父親の勤務先タイで暮らす。02年上智大学比較文化学部国際ビジネス経済学科を卒業、日本で投資会社に1年間勤務。その後、大学の同期生であった韓国人男性と結婚し、韓国で暮らし始める。韓国でオンラインゲームの会社に入社するが、1ヶ月で倒産の危機に陥り、わずかな給料をもらって退社。その後、日本の部品素材企業の韓国進出を支援する投資誘致専門機関JapanDeskに就職し、リサーチや企業への対応などを担当している。趣味は山登り。

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