海外ではたらく!めずらしいこんな仕事

第4回 バグニチャンサ

トラックいっぱいに積まれた籠。日常品から骨董品まで、ありとあらゆる籠を載せて、トラックは街をゆっくり走ります。籠売りのトラックが、商店街や住宅街などで止まると、さまざまな籠を見物しに人々が集まります。

高層ビルが建ち並ぶソウルの街に、悠然と現れた籠売りのトラック。いったいいくつの籠を積んでいるのだろうか。のんびりと客を待つ店主(?)に尋ねたが、自分でもよくわからないと言う。大小様々な籠は、生活の中でよく使われるものであったり、インテリア用だったり、年季の入った骨董品だったりする。籠だけではない。まな板や包丁、箒なども扱う。

昔から、バグニチャンサ(籠売り)は店を構えるより、街を移動しながら商売をしたらしい。100年ほど前の写真にもその姿は見られるが、今のようにトラックもなかった時代のことだから、背負子(しょいこ)いっぱいに積み上げた籠を背負っての商売だった。籠は天然素材のため、軽い。積めるだけ積んだ籠の山は、背よりもはるかに高く、まるでサーカスの曲芸のようである。

今でも韓国の生活に籠は欠かせない。例えば、家中の籠が総動員されるのが、キムジャンと呼ばれるキムチ漬けのシーズンだ。キムジャンでは、冬越し用のキムチを大量に甕に漬け込んでおく。そのために、白菜や大根などの野菜を洗ったり、水を切ったり、干したりするのに大きな平べったい籠が大活躍する。この皿のような形をした、直径が一メートル近くある籠は、お正月やお盆に欠かせない料理のジョン(韓国風天ぷら)を焼いてから冷ますのにも使われる。この籠は、水にも油にも強い竹で編まれていることが多い。

また、蓋付きの四角い籠は、結婚や誕生日などのお祝い事のときに、伝統のお菓子を詰めるのに使われる。小さなふわふわの揚げ菓子やおこし、きれいな模様の打ち菓子などをいっぱいに詰めて贈るが、今でもデパートの贈答品コーナーに籠入りのものが売られている。

籠売りのトラックには、今では使われなくなった台所用品などもぶら下げられている。ポクチョリと呼ばれる米を研ぐときに使う柄の付いたザルは、今では福(ポク)を呼ぶといって、縁起物として家に飾るものとなった。竹や藁、萩などの枝で編まれた籠たちは、もともとの用途の枠を超えて、最近ではインテリア用品としても注目を集めている。

【データ】

トラックに積まれた籠やザルの数:不明だが1000はありそうだ。
値段:1000ウォンから100万ウォンくらいまで

ライターコメント

ソウルの街は面白い。現代的なビルディングの風景に、突如古いものが登場するからだ。屋台も然り、籠売りも然り。籠売りトラックは籠という籠をのせ、走るたびに商品が揺ら揺らと動く。初めて目にしたときには釘付けになってしまった。遠目に見れば、お祭りの山車のように勇壮であり、近くで見れば細々とした雑貨に目を奪われる。こういう商売の存在が、殺風景な都会を癒してくれているように思う。

今では天然素材の籠を編む職人も少なくなり、その多くは東南アジアからの輸入品だという。輸入品の籠は安く売られ、国産のものは、伝統工芸品並の値段がつけられ、高くなっている。日常生活はプラスティック製品に囲まれ、市場の籠屋に行けば、プラスティックの色鮮やかなものが安価で手に入る。そういう時代にトラックの籠売りは、天然素材にこだわっているからこそ郷愁を誘い、人々の心を引き付けるのだろう。竹や藁の素材の持つ質感や色合い、編み目の美しさは、単なる商売の域を超えている。

Writer Profile

Kaya Tabata

1991年より韓国在住。梨花女子大大学院女性学科修士課程卒業。国際交流基金ソウル文化センター、オープンサイバー大学で翻訳を教える。子どもの育児環境を求めソウル郊外へ引っ越し、週の半分は自宅で翻訳やエッセー執筆をしている。

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