第4回 希望額提示編

優秀な転職希望者にとっての“売り手市場”がやってきた!多くの企業が人材不足に悩んでおり、大量採用するケースもある。だが、90年代初頭のバブル期のように、実力がなくても職につける時代ではない。1000人のクビを切った男、梅森浩一氏が、転職時に自分の価値を決定付ける給与交渉において、どのようなマインド、どのようなロジックで臨めばよいかを伝授する

面接の終盤で必ずと言っていいほど聞かれる質問が「希望年収」。この質問が出る時には、先方もある程度採用の意思を持っていることが多いが、ここで希望額に開きがあると、一転して“交渉決裂”ということも珍しくない。

少しでも高い年収で転職したいというのは誰しも思うところだが、年収交渉は時と場合によりけりだ。そこには効果的なやり方がある。外資系企業で人事部門のトップとして多くのビジネスマンを面接してきた梅森浩一氏に話を聞いた。

君はNYヤンキースの松井秀喜じゃないだろ?

英語には“チキンorエッグ”という言葉があるけれども、転職する時の年収交渉なんて、所詮この議論と一緒だよね。10万円単位の話をするのか、100万円単位、1000万円単位の話をするのかはその人のレベルによって違うけど、共通するのは、「最後は金に固執するな」ということ。

それはなぜか。「君はニューヨークヤンキースの松井秀喜じゃない」からです。ヤンキースで大活躍している松井の実力は誰もが認めるところだし、明らかじゃないですか。でも、普通の転職者の場合、そういうことはまずあり得ない。採用して実際勤務についてみないと、本当の実力なんてわからないんです。

採用する企業にとっても、ある程度のリスクはとらざるを得ないわけだから、あまり「カネでゴネる」のは頭がいいやり方とは言えませんね。会社からすれば、できるだけ安い給与で雇いたい。「いい人をより安く!」なわけですよ。

入社後に年収アップできるかが重要

一方、転職者は「良いもの(人)をより高く!」で、両者がせめぎ合いをしている。結局、法外な値段を提示しても合意が成り立たないわけです。そんなことをして残るものは何だろうって考えると、「自己認識が欠如している人物」とか「入社してからホントに大丈夫だろうか」という印象を与えるだろうということ。働く前から悪いイメージを持たれるのは避けたいよね。

そこで、「ニワトリが先か卵が先か」の議論になるわけだけど、目先のお金にこだわるより、入って稼ぐことを考えた方がいい。大切なのは、目先のお金よりも、その会社に入社して、稼ぐことができるかどうかなんです。

その会社が成果主義を採用し、実力次第でボーナスが200万円も違うのなら、入社してからこの200万円分を取ることを考えればいい。入社前から100万円の固定給の違いにこだわっていたら、「自分は仕事ができる」と言いながら、実は自信がないように見られてしまうこともある。自信があるなら、入社してから形で示せばいい。お金は後からついてくるんだから。

必要以上に目先のお金にこだわってもし落とされちゃったら、将来の可能性も捨ててしまうことになる。まず入ること、つまり、将来 “稼ぐ可能性”を手に入れることが大事。特に日本企業の場合は、交渉したからといって年収が何百万円も変わることなんてないわけだから、給与交渉でゴネても、無駄な努力になる可能性が高いしね。

入社前にできるだけ「貸し」を作ろう

首尾よく年収を上げてもらったら、それはあなたが会社に「借り」を作ったことにもなる。でもね、入社する時はできるだけ借りを作らない方がいいよ。借りを作ると、それだけプレッシャーも大きくなるので、入ってからが大変になる。

逆に、「貸し」はできるだけ作った方がいい。「貸し」といっても、お金のことだけじゃない。例えば、転職時期1つとっても、「貸し」を作ることはできる。転職の場合、会社側はスグにほしいから採用している。大げさにいえば、次の日から転職してほしいと思っているわけです。普通、就業規則では辞表を出してから1カ月後、民法上は2週間で退社できるんだけど、それはあくまで理想の話。

たいていは後任を見つけて、引き継ぎが終わってからようやく転職となるわけです。よく「立つ鳥跡を濁さず」って言うけど、辞める会社の言い分を聞き続けていたらいつまで経っても転職できないことになる。「立つ鳥跡を濁さず」が理想だけど、いなくなっちゃう会社に対してそれをいつまでもやっていても仕方がない。

そこで、「本来だったら1カ月後ですが、一生懸命引継ぎをやったので、3週間で退社できました」と言えば、やる気があると思われるだろうし、印象がいい。こういう自分にプラスになるような動きはどんどんやるべきだし、そうすることで「貸し」を作ることができるんだよ。

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