“日本初”のプロスポーツ選手エージェントが語る 年収アップのための「給与交渉術」 第3回 オリックス・清原和博編(4/4)

勝ち取るのではなく“折り合い”をつける

近鉄時代の中村紀洋選手のケースを挙げると、彼にどうしてもチームに残ってもらいたいという必死の思いがあり、新聞報道では5億円というものすごい数字が出てきました。その後近鉄というチーム自体が身売りすることになり、当時の球団社長から給与が高すぎるということを批判されました。

中村選手が持っているエンタテインメント性に対して経営者が尊敬の念を持てないというのは悲しいことですが、5億円という中村選手にとっての満額回答が、ある種のヤッカミを生んでしまったのも事実だと思います。

これは、スター選手にまつわる宿命とでも言いましょうか、清原選手などもそのカリスマ性ゆえに、球団側から「扱いにくい」選手と思われていたのかもしれません。彼のようなスター選手は、成績だけでなく「エンタテインメント要素」抜きに移籍することはまずできませんから。

スポーツ選手の給与交渉もサラリーマンの給与交渉も、たとえ決裂したとしても裁判にはできません。なぜなら、これは法律の問題というより、経営の問題ですから。ただ、プロ野球選手の場合、コミッショナーによる調停制度はありますが、選手には不利な制度です。お互いがお互いを必要としているのですから。交渉の際には“慈恵の念”が必要だと思います。「勝ち取る」というより、「折り合う」という感覚が重要なのではないでしょうか。

給与交渉 辻口弁護士の格言

  • 最初はフッかけても引き際は心得よ
  • 「負け」ない交渉のために自分を見極めよ
  • お互いが渋い顔で終わるのが、良い交渉
太陽法律事務所 弁護士 辻口信良氏
1947年生まれ。弁護士。1992年、古田敦也選手(現・兼監督)の委任を受け、日本人初のスポーツ選手代理人として、2000年秋から始まるプロ野球界の代理人制度導入の礎を築く。現在、関西大学と龍谷大学で、週1回スポーツ法学の講義を担当。スポーツを市民生活に根付かせ、21世紀を「平和の世紀」にするため、文化としてスポーツを活用することに全力を尽くしている。「スポーツは軽く国境を超える」が好きな言葉

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