エンジニア的知の開拓 テクノマエストロへの道 第2回 ゲームクリエイターは時流を読め

世界を動かすエンジニア出身の実力者が指南! スペシャリストとしてのシゴト術、キャリアパスの描き方などを参考に、今の“自分”の磨き方を探っていこう

株式会社モバイル&ゲームスタジオ 代表取締役会長 遠藤雅伸氏

第2回 ゲームクリエイターは時流を読め

モバイル&ゲームスタジオ
代表取締役会長

遠藤 雅伸

 千葉大学工学部卒業後、ナムコ入社。「XEVIOUS(ゼビウス)」など数々のアーケードゲーム開発を手がけ、1985年にゲームスタジオを設立。ファミコン向けのタイトル、カードゲームのヒット作を次々プロデュースする。現在、モバイル&ゲームスタジオ代表取締役会長。総合学園ヒューマンアカデミー ゲームカレッジの講師も兼務し、10月から開講している夜間講座「ゲーム企業就職講座」を担当するなど、若手クリエイターの育成にも取り組んでいる

ヒットするゲームは時代性を帯びている

デビュー作の「ゼビウス」(※1)を作るころはまだ会社に入ったばかりでした。プログラムを1カ月くらいで覚えて、とにかく自分がやりたいゲームを作っただけでした。ユーザーにウケるものを作ろうなどとは、まったく考えていなかったわけで、あんなにヒットするとは思ってもいませんでした。たまたま時代の流れに乗ったんでしょうね。

以来、さまざまなゲームを作っていますが、ゲームに対する評価の観点は時代と共に変化していると感じています。例えば「ドルアーガの塔」(※2)を今出したら、誰も遊ばないと思いますね。最近は、クリアするのに長時間かかるゲームや、高度な思考を求められるゲームは敬遠される傾向にあります。逆にある程度の時間内でケリがつくものや操作が単純なゲームがウケますね。

30代くらいの“ゲーム・エリート”とでも呼ぶべき人たちは、子供のころから難しいゲームに親しんできました。例えば2分半で点が入ってしまうようなサッカーゲームを、「こんなに簡単に点が入ってしまってはつまらない」「リアリティがない」と批判しますが、そうではないライトユーザーたちは、簡単にクリアできるものでないと見向きもしません。どちらが正しいというものでもない。時代によって変わっていくものですね。

(C) NBGI 「ゼビウス」「ドルアーガの塔」

※ 1:1983年にナムコ(現、バンダイナムコゲームス)から発売されたシューティングゲーム。プレイヤーの動きに応じて敵機が行動パターンを変えるなどの戦略性の高さや、独自の言語まで設定されるほど作り込まれた世界観、隠れキャラ探しなどのフィーチャーが、当時のゲームファンを虜にした。遠藤氏の出世作で、家庭用ゲーム機への移植や続編の制作も盛んに行われた。

※ 2:1984年にナムコから発売されたアクションゲームで、バビロニア神話をモチーフにした異色作。アイテムを入手してキャラクターを強化するというロールプレイングゲーム的味付けに加え、全60面というボリュームや難解なアイテムの出し方に、多数のプレイヤーが熱狂した。ファミコンに移植された際には攻略本が大いに売れ、ゲーム攻略本というジャンルを一般的な存在に引き上げた。


クリエイターに必要な視点

クリエイターに必要な視点

ゲーム・エリートや80年代、90年代のゲームクリエイターの中には、「ゲーム業界は縮小している」「最近のゲームはゲームとは言えない」などと言う人がいますが、実際はそんなことはまったくなく、ゲームで遊ぶ人の数そのものは増えているんです。

にもかかわらず彼らがこう言うのは、「プレイステーション3」向けに発売されるような、最先端技術の粋を尽くしたゲームこそ本来のゲームの姿だと思っているから。最新ゲームを本気で遊ぼうと思ったら機械とソフト、周辺機器などを合わせて40万円くらいはかかりますし、それだけの金額を費やせる人こそ本当のゲーム好きと言えるでしょう。そして、そういう人達に対してゲームを作っているメーカーもあるわけで、それはゲーム業界全体にとって、素晴らしいことだと思っています。ゲーム・エリートへ向けたゲームを誰かが提供し続けなくては、日本のゲームは世界で優位を保てませんから。しかし、今は誰もがそのようなゲームで遊んでいるというわけではなく、携帯電話でしかゲームをやらないような人も多いんです。

“ゲーム・エリート”は、やがて“ゲームクリエイター”になるケースが多いのですが、彼らに「君は明日から携帯電話のゲームを作る部署に行ってくれ」と言うと、「俺はそんなことをやりたくてこの会社に来たのではない」と、辞めてしまったりします。「じゃあ何がやりたい?」と聞くと、たいてい「“みんな”を楽しませるゲームを作りたい」と答えるんですが、その“みんな”はどこにいるんでしょうか? 実はその人はまったく“みんな”を見ておらず、単に自分が「作りたい」だけなのです。

このように時代とともに価値観が変化していることに気づかず、我が道を進み続けるクリエイターは、すごく多いんです。

ソーシャルブックマークに登録 このページをYahoo!ブックマークに登録 このページをdel.icio.usに追加

▲ページのトップへ