転職失敗談2
営業マンとノルマ
厳しいノルマの営業会社に入社したNさん。ハードな勤務時間のなか中奮闘するが、新人のノルマ達成はなかなか難しい。そんな折Nさんの同期が一歩リードする……。(→後編はこちら
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営業会社の厳しいノルマ
転職には俗に「七五三の法則」と言われるものがあります。中卒は7割、高卒は5割、大学卒は3割が3年で就職した会社を辞めるという説です。しかし今回の主人公・Nさんの職場は、半年で新人の半数が辞めるというハードな職場だったのです。
 Nさんはメーカーの系列企業に就職した営業の新人でした。彼の勤務先は、営業がメインであり、そういった企業にありがちな厳しいノルマ制がベースにありました。毎月のノルマもクリアできるぎりぎりのラインに設定され、それだけでも新人にとってはキツイところなのですが、さらに年に数回は創立記念だなんだと、メモリアルにかこつけてノルマが劇的にアップするのです。
 当然社員はノルマに追われ、ノルマをこなすために奔走します。夜討ち朝駆けは当たり前。早く出る社員は始発で出社し、遅く帰る社員は終電ぎりぎりです。自宅から会社まで1時間30分ほどかかるNさんは、朝薄暗いうちに起き、深夜ふけてからタクシーで帰宅することも珍しくなくなってしまいます。

 入社前は営業という仕事を少しは分かっていたつもりでした。また入社後、人と接することも、クライアントを回ることも、はじめは苦痛ではありませんでした。
 しかし理屈を凌駕するノルマのキツさに、だんだんと息切れを感じはじめます。
 ある月、いつもより多めのノルマを課せられ、最終期限になっても達成のめどが立たなかったNさんは、夕方出先より上司に報告の電話を入れました。
 「あのぉ……今月、ちょっと達成できそうにないです」
 「馬鹿か!まだ夕方だろう、あきらめるな!数字とれるまで帰ってくるな!
 逆鱗に触れてしまいました。
 仕方なくとぼとぼとお得意先回りを続けますが、結局数字には結びつかず、夜ふけてのち、やむなく会社に戻ったのでした。
営業、粘り勝ち
帰社したNさんを待っていたのは、営業社員めいめいのノルマ達成報告。Nさん他同期の新人社員はほとんど壊滅状態で、課長の大目玉を食らうことになりました。
 ところが同じノルマを課せられ、同じように今日の夕方まで苦戦していたNさんの同期Kさんがひとり、土壇場で達成できていたのです。ひとり拍手と賛辞を集めるKさん。
 課長が彼のノルマ達成の経緯を社員に公表します。
 「夕方ごろKから『達成できそうにない』って電話がきたもんだから、怒鳴りつけてやったんだ」
 そこまではNさんと同じです。
 「そしたらしばらくして、××社(クライアント)から電話がかかってきたんだよ。
 『おたくのKさんが今うちに来てるんだけど、話が済んでも帰らないんですよ。聞いたら、契約とれるまで帰ってくるなって言われたので帰れないって言うもんだから……。結局契約してしまいましたよ』
 って言うんだ。もう驚いたよ。いやー、そこまでよく粘った!
 社員の間からは感嘆の声に混じって、「やったな!」と拍手を送る者もいます。

 自分は到底そこまで粘れないと実感したNさんは、Kさんに敗北感を感じると共に、 
 「向こうの会社は随分迷惑だっただろうに。嫌がっている相手にしがみつき、契約をもぎ取るような営業が、そんなにいい営業なのか。自分はいくら契約が取れても、得意先に迷惑がられるような営業は出来ない」
 と、逆に強く反発すら感じてしまいます。


(→後編に続く)

pen2 社内で絶賛される「営業根性」に反発を覚えるNさん。同じようにノルマにあえぎ、迷いを感じる同期は多かったが、入社後半年を過ぎると同期は次々退職していってしまい……。次回、後編へ続く。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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