転職失敗談2
会社ごっこ
規則や説教で社員を管理し導くことに熱意をもつ幹部社員たち。そんなときOさんの身内で不幸が。急いで実家に帰ったOさんの元に上司から電話が飛ぶ……。(→前編はこちら
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通夜の電話
話好き、スピーチ好きな幹部社員にOさんが閉口しながらも、早2ヶ月が経過。仕事には慣れてもこの会社の体質には慣れません。幹部社員たちはスピーチだけでなく、社員への説教も大好き。社則やスローガンを決めたりそれを読み上げさせたりすることも大好きなのです。会社という形を維持する活動に喜びを感じているふしもあります。
 こうした企業体質に疑問を覚えたOさんでしたが、今のご時世「企業体質が古い」ぐらいで、せっかく手にした仕事を辞めるわけにはいきません。ましてや倒産の多い昨今、形を守る余裕は、少々古めかしくても、企業が安定している証拠とも言えます。

 そんなとき、Oさんの実家の祖母が亡くなりました。まだ入社間もないとはいえ、Oさんは慶弔休暇を申請し、急いで実家へ向かいました。
 その夜、涙が止まらないOさんの元に会社の上司から電話が入りました。お悔やみの電話かと恐縮して受話器を握るOさんの耳に、予想だにしなかった言葉が飛び込んできたのです。
 「もしもし、Oさん?亡くなったのはOさんのおばあさんだったよね。それって同居?別居?
 「え?」
 「あのね、君が申請した慶弔休暇4日になってたんだけどけど、仏さんがおじいさんおばあさんの場合、同居と別居でとれる日数が違ってたんだよ。同居は4日で別居は2日。だからさ、どっち?」
 Oさんを気遣う言葉もなく、会社の規則に沿ってまくし立てる上司に、O氏は驚きと怒りを感じはじめました。
規則の番人
結局、一人暮らしでおばあさんとは別居だったOさんの場合、結局慶弔は2日しか認められず、規定通り3日後からは出社するようにと上司は言い続けます。
 いくら規則でもこんな時に電話してくるなんて、あとからなんとでも処理できるのに。そう思うとOさんは上司の狭量さが情けなくてたまりません。
 「せめて本葬のあとまで付き添いたいのですが……」
 「しかし規則は規則だし、今まで他に規則を破った社員はうちにはいない。ここで前例を破るということが後々どういう影響を……」
 「認めていただけないなら有給でも、欠勤扱いでも結構ですから!」
 そう叫ぶとOさんはけんか腰で電話を切ってしまったのでした。

 4日後、会社に復帰したOさんは先輩社員にこの“お通夜に電話事件”をぶちまけ、
 「どうしてこの会社って、こんなに規則や説教が好きなんですか?他にすることがあるでしょう?!」
 と怒りをぶつけてみたところ、意外にも真相が見えてきました。
 「うちの会社は、何年か前に会長に退いた前の社長が、未だに財布のひもと決定権を握ってるのよ。社長にも役員にも細かい現場の決裁権しかないの。だからぶっちゃけた話、細かいこと−−朝礼と説教と社内規則のチェックがやたら気になってるのよ」
 あとを継いだ社長も役員たちは、創業者である会長の決定に任せれば倒産の危険が少ないと、かえって頼りにしているところもが大きいのだとか。経営の難しい部分は会長にまかせたまま、お小遣いのように与えられた権力で“会社ごっこ”をしているのだと、先輩社員は手厳しく評価します。
 話が終わり、愕然とするOさんの背後から、上司の声が飛びました。
 「Oさん、こないだの慶弔休暇の件でちょっと話そう。そもそも君はビジネスにおける電話というものを……」
 “会社ごっこ”というより“学校ごっこ”に近いなぁと、トホホ感にさいなまれながらOさんはゆっくりと上司のデスクに向かうのでした
サクセスポイント
今回はココが問題!
正社員になれれば……
「正社員になること」が第一の条件だったOさんの転職。企業体質が合う、合わないは二の次でした。現在の失業率では、企業体質まで求めるのは贅沢かもしれませんが、人間一つの点に満足すれば、次から次へと要求と不満は出てくるものです。
これでサクセス!
バーゲンセール的転職
長い目で見るなら「××ならなんでもいい」などというバーゲンセール的転職はうまくいきません。自分が我慢できない点、これをしたいという譲れないポイントだけは守って。「これくらいどうってことない」「我慢できるかも……」という考えはいつか限界がきます。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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