転職失敗談2
社長直属幹部候補
社長直属の幹部候補、新営業所の管理者として転職してきたMさんだったが、結局守られた約束は“社長直属”の部分だけだった……。(→前編はこちら
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社長直属ヒラ
A社に出社するようになったMさん、いきなり膨大な仕事の量に驚くことになりました。というのも、従業員の数が事前に聞いていたデータよりもどうも少ないらしく、特に会社を支えている営業関係の社員がスカスカに近い状態。面接時にMさんを
 「私の下で学んでほしい」
 と口説いた社長ですが、その実態は全員が社長の下で働いている状態。つまり全員が“社長直属”なのです。こうなると、Mさんのポジションは入ったばかりの新入り同然。納品管理、商品の仕入れ・発注はともかく、その入力作業に事務所ゴミ捨て当番までが回って来くる始末。
 全員が“社長直属”なのはまあいいとしても、期待していた“幹部候補”待遇とはあまりにかけ離れた境遇です。
 Mさんも「最初はイチから仕事を覚えるのは当然」と思う反面、「これは約束と違うのではないか」という焦りや不安が頭をもたげはじめます。
 不信感を抱きはじめたMさん、ある機会に同僚にさりげなく聞いてみました。
 「営業は人手が少ないようですが、最近大きな人事異動でもあったんですか?」
 「異動はなかったんですが、ちょっと前に大分辞めましたからねぇ」
 「何かあったんですか?」
 「うーん……もう過ぎたことだし……」
 なにやら奥歯に物の挟まったような返答。しぶる同僚に頼み込み、飲み屋に場所を変えて、重い口を開かせるのに成功します。
 「せっかく入ってきたMさんにこんな事言うのもどうかと思うんだけど……いつかは分かることだし……」
大変革の真相
同僚はMさんが入社する数カ月前、社内で大変革とも言える出来事が起こったのだと話します。
 社長は精力的に営業所を増やそうと、めぼしい土地を物色。賃貸契約だけでなく、
 「ここは××地区の拠点として将来重要になる」
 と社長の独断で、土地そのものを押さえて帰ってきてしまうことも。
 しかしその一方で、社内の成績は伸び悩みが続き、ボーナス・給与カットも行われ、一部の幹部社員には給与の遅配が見られるというところまで自体は悪化。
 それでも社長は営業拠点に固執しのらりくらりと決定を引き延ばすばかり。計画凍結を訴えていた幹部社員たちもこれにはあきれ、結局手を引くような形で、遅配給料の完全清算を条件に一斉退職
 さたにそのショックから一部の営業社員があわてて退職。わずかに出た退職金を手にそれぞれ転職していったのです。
 この大量退職の後、激減した営業社員を補充しようと社長が出した広告が、Mさんの目にとまったと言うわけです。
 「社長が将来営業所を任せる為に、管理職をほしがっていたのは事実です。でも今は社長の夢を追うより、社内の立て直しが最優先です。実際問題として、とても営業所立ち上げまで手が回らない状態なんですよ」
 ゆくゆくは幹部候補でも、いますぐ必要なのは一線の営業マン。だましだまされたわけでは無いとはいえ、Mさんにとって転職によってポジションがダウンしたのは事実です。

 それからさらに数カ月後、社長は新営業所計画の行き詰まりを認め、ようやく用地を売りに出します。
 「あの拠点では先行きが不透明だった。今後は自社製品の開発を視野に入れて海外に目を向けてもいいと思うんだが」
 鼻息を新たに荒げ、社長が宣言したころ、Mさんは再度求人情報誌を握りしめていました。
サクセスポイント
今回はココが問題!
予定は未定
中小企業やベンチャーの場合、社長自らが面接の場で展望を語り、採用の決断を下すことも少なくないが、計画の実現性はシビアに判断したい。創業社長の中には“夢を語ること”そのものが好きな人もいるのだ。
これでサクセス!
管理職の転職
文化系ゼネラリストは社内と社外で評価に差が出やすいもの。転職で、正しくキャリアを認識してもらうには、自らの自信だけでなく、社外でも認知されやすい「売り」になる経歴をつくるのがポイント(今回のMさんは失敗でしたが……)。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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