転職失敗談2
小さな会社の小さな募集
応募者0の現実の前に、求人広告のプロが登場。頭をひねって生み出した名コピーとは……?(→前編はこちら
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プロのダメ出し
とりあえず打った求人広告。そして反応はゼロ。つづけて広告をうつ方向になったおの次回への対策をたてねばなりません。S社を訪れた広告代理店の営業マンとコピーライターを交え、まず前回の反省点を導き出すことになりました。
 「まず問題点を把握しましょう。失礼ですが御社は、本社がわりと郊外の方にあります」
 たしかにS社ビジネス街とは反対方向です。さらに駅から会社までは、少し歩くかバスを利用することになります。これが通勤の不便さを感じさせてしまってマイナスポイント。
 「普通の事務職の場合、繁華街に近いというだけでも大きなアピールになります。仕事後に食事や買い物を楽しめますからね。さらに、御社の場合就業時間が少し早いですね」
 これも通勤に早起きしなければならないとう印象を与えてマイナス。
 「じゃあ、なんて書けばいいんですか?どっちも本当のことです。嘘はかけないでしょう?!」
 右から左からS社の欠点を突かれ、さすがのOさんもうんざりです。
 「失礼しました。もちろん嘘はかけません。ですからこれらの欠点を補える、アピールポイントを大きくとりあげるんです」
 「お聞きしたところ、御社は大変に離職率が低いそうですね。今回の募集も……」
 「ええ、結婚退社が出たためです」
 「そこをアピールしましょう。人間関係がとても良くて、めったに退職しない。今度の採用もやむなく……という方向で広告を作ってみます」
 そんなもので大丈夫なのか……と、やや不安に感じたOさんでしたが、とりたてて給料が高いわけでも、面白味のある仕事でもありません。アピールできるところは本当に指摘されたところくらいです。ここはひとまずその道のプロである、二人の手にゆだねることにしました。
ビフォア・アフター
そして1週間後。代理店よりだいたいのラフがFAXされてきました。そこには……。

 悲しいけれど、募集します!
 このたび私たちの同僚が結婚します。
 そのため会社も辞めることになりました。
 私たちの職場はみんなの仲がいいのが自慢です。
 だからめったに辞める人がいません。
 とても悲しいのですが、彼女の代わりに働いてくださる方を探しています。

 このようなコピーにイラストが添えられていました。花嫁衣装の女の子の周囲で、残念そうな表情の若い女の子たちが、ユニフォームに身をつつみ見送っています。なんとも華やかでかわいらしい広告です。採用活動を「悲しい」と言い切ることで、職場の雰囲気の良さをアピールしています。
 前回とはうって変わったイメージにOさんも驚きながらも、プロの手腕に感心し、その広告でゴーサインを出したのです。

 そしていよいよ掲載日がやってきました。今回は前回と打って変わって反響は上々。雑誌の発売日から問い合わせの電話が舞い込むようになりました。ひっきりなしとはいかないまでも、その数はOさんの予想を遥かに越えており、大満足です。見る見るうちにOさんのスケジュール表は面接の予定で埋まっていきます。
 「いや、すごいですよ。広告って大事ですね。前とはえらい違いですよ。ほんとにありがとうございました!」
 代理店の営業にも、今度は喜色満面で電話したくらいです。
 そして数週間後、営業マンのもとに採用者が決定したとの連絡が入り、S社の採用活動は無事終了したのでした。

 ……と、思った1か月後。再びOさんは代理店に電話をかけることになります。
 「こないだ採用した女の子、あれからすぐ辞めちゃったんですよ。『イメージしてたのと違う。アットホームすぎる』って……。イラストは若い女の子同士仲よさそうだったじゃないですか?でもうち同族経営で中高年も多いし、正直おじさんおばさんから仲良くされて困ったみたいで……そういうわけで、もう一度広告出すことになりそうです……」
サクセスポイント
今回はココが問題!
求人広告も広告
求人広告は発表から一週間の間で勝負が決まる短期決戦。しかも応募者の数字、採用という結果が求められるシビアな広告です。それだけに代理店や制作マンは知恵をしぼって、魅力的な広告づくり、応募したくなる広告づくりをしているのです。
これでサクセス!
広告を「読む」
応募前は求人広告だけが情報源、広告の行間を読んで、できるだけイメージをふくらませて……。ちょっとまって、それは危険です。求人広告といえども広告には違いありません。そこから分かるのは企業が見せたい面アピールしたい点、そして理想のイメージ。応募者にとって広告は情報を読むものであって、頭の中で膨らませ想像するものではありません。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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