転職失敗談2
人材紹介エージェントの苦悩
企業と人とを結ぶ人材紹介コンサルタントYさん。しかし実態は企業に恐縮し、登録者を叱咤激励し、両者のマッチングに頭を悩ませ続けていた……。(→前編はこちら
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困ったニーズの数々
「このあいだの内定、事情がかわったんでやっぱり辞めます。Yさんの方から断ってくれませんか」
 「残業が少なくて、給与もアップしたい。業種はマスコミか何かクリエイティブなもの」
 ごく一部ですが、人材コンサルタントであるYさんに応募者から寄せられる、“困った希望”の数々です。特に後のようなニーズは「そんな仕事あったら自分がやりたい」というムシのいい要求、とてもご希望には添えそうにありません。

 トラブルになったのは最初の案件。某老舗企業の若手営業マンHさんを、社歴10年ほどの同業企業に紹介した時のこと。Hさんの企業も昔からの経営方針を改め人員整理がすんだばかり。Hさん自身はリストラ対象ではなかったものの、改革後の会社に愛着が感じられず転職を希望。Yさんのもとを訪ねました。
 求人の多い業種ではありませんでしたが、幸いHさんに時間的余裕があったため、納得ゆく案件が現れるまで、時間をかけたおつきあいとなりました。その間、YさんとHさんの間の警戒心もとけ、コンサルタントと登録者として、いい関係を築いていったようです。
 そのうち、ある企業を紹介し面接のはこびとなりました。そして、内定ーー。しかし問題はこの先だったのです。
 「Hさんはいつごろからうちに来てもらえそうかな」
 「いまの仕事との兼ね合いものあるので、わかり次第お伝えします」
 そう答えたHさんでしたが、その期日が一向に明らかになりません。
 「Hさんの入社の段取りだけど、どうなってるのか」
 紹介先の企業から、Yさんのところへも催促が入ります。こうした時の調停もYさんの仕事のひとつ。Hさんに連絡をとってみると、
 「すみません、最近急に仕事が増えてしまって……段取りがずいぶん狂ってしまったんです」
 現職のことならゴリ押しも出来ません。転職先に掛け合い、当初予定していた転職の期限を少しのばしてもらうことに。
求職者のエゴ
ところが、変更後も
 「トラブルが発生して」
 「引き止められてしまって」
 と一向に離職準備が進みません。その度に先方に頭をさげ、交渉し、入社日を延ばしてもらうのはYさんです。
 「先方もHさんを受け入れるにあたって、それなりに準備があります。度重なる変更で、かなりご迷惑をおかけしているのですから……先方ももうこれ以上は待てないとおっしゃってますよ」
 「……そのお話ですが、やっぱり、なかったことにしてもらえませんか?」
 とうとう飛び出しました。引き延ばすだけ引き延ばした後の爆弾発言。
 聞けばいまの職場から強烈な引き止めにあっているとのこと。人員整理直後、残した“精鋭”にまで退職されるのは、企業としても本意ではなかったのでしょう。退職を表明してから、上司もHさんの不満に耳を傾け、待遇もいくぶん改善されそうなのだとか。
 「現状が改善されるなら、わざわざ転職することもありませんし……」
 「先方もすでにHさんが入社するものとおもって準備を整えて待ってくれていたんですよ?!今になってそんなこと言うのはルール違反ですよ」
 「ですから、そこはプロのYさんから、なんとかうまく言ってくださいよ……」
 それっきり、Hさんとはほとんど連絡がとれなくなります。
 たしかに企業と人材の間にたって、交渉するのはYさんの仕事ですが、なんでも都合良く代弁してくれるというのは違います。ドタキャンの尻拭いはいくら「プロ」でもやりきれません。
 案の定先方は、Hさんを紹介したYさんとYさんの会社にたいしてかなりのご立腹。Yさんの面目も丸つぶれです。
 Hさんとは、時間をかけていいおつきあいをしてきたと思っていたYさんですが、いざとなったらYさんごとスパッと切り捨ててしまえるHさんに、求職者のエゴをひしひしと感じ、“人”を扱う仕事の難しさを改めて実感したそうです。
サクセスポイント
今回はココが問題!
得意不得意
人材紹介企業を利用する場合、その会社がどんな業種、どの地域、どんな職種に多く実績を残しているのかをまず知ること。企業側・人材側のデータが少ない企業は、両方をあわせようと無理なマッチングをすることもあります。また、専門性が高い職種の場合は、担当になったコンサルタントの知識がどの程度か知るのも肝心。間に入ってくれることでスムーズにうごくコンサルタントですが、専門性の高い情報は逆にフィルターになってしまうこともあるからです。
これでサクセス!
コンサルタントを見極める
コンサルタントとの関係は重要です。信頼すれば給与や待遇などの難しい交渉を任せることもできますが、逆にひどいコンサルタントにあたった場合、登録データを流されたり、一方的に面接スケジュールを組まれる場合も。自分の人生の転機をまかせられる人かどうかをまず見極めて。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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