転職失敗談2
試用期間活用法
本採用まで社会保険の手続きをのばしたいSさん。その裏には万一の場合「職歴」を守ろうとする防衛本能が働いていた……。(→前編はこちら
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職歴を守れ
「社会保険の手続きは試用期間が終わってからにしていただけませんか?」
 年金手帳と雇用保険者証の提出を指示されたSさんは、自ら人事部に出向き、こう言い出しました。
 「実際にしばらく働いてみて、仕事内容や環境などひっくるめて自分がやっていけるのか判断したいんです。万一、自分がこの会社に合わなかった場合、すぐ退社しては保険に加入しているといろいろとご面倒をおかけしますので、本採用になるまで加入は待ってもらえませんか」
 つまり、Sさんは試用期間中に退社した場合の「職歴」のことを心配していたのです。
 就職し会社経由で社会保険の手続きをした場合、たとえそれが試用期間であっても、関係書類に会社の名前が記載されることになります。就職した企業が自分に合わず、試用期間中に短期で退職となった場合も、「職歴」として残ってしまうのです。
 職歴を重ねることを恐れて、自分にあった職場を選べないのなら、保険未加入にしてほしいと、Sさんは訴えたというわけです。
 それを聞いた人事担当者は
 「ひとりだけ特別扱いはできない」
 と渋い顔。それでも上と相談してみるとはいってくれました。

 さて翌日。Sさんは再度人事部に呼び出されました。話は勿論保険の件です。
 「人事の方から話は聞いた。色々と考えているようだね」
 今度は役員クラスの社員も一緒です。
保険加入か今退職か
「うちでは、試用期間といえども正社員になることが大前提としている以上、保険には全員加入することになっている。これは決まりだ。これに納得できないのなら、うちに合わないということかもしれないな」
 「では、保険加入か今退職か、ということでしょうか?」
 「まあ、そうとってもらってもかまわない。だいたい、君は試用期間中に辞めることを前提にしているようなフシがある。こういうところがうちの社風には合わないんじゃないかな?」
 「そうですね」
 傍らに付き添っていた人事担当も話を合わせます。
 このいかにも「辞めてくれ」と言わんばかりの二人のやり取りに驚きながらも、根が負けず嫌いなSさん、気がつくとこう口にしていました。
 「そうですね。じゃあ辞めさせていただきます」
 そしてその日の夕方、Sさんは身軽な荷物のまま、一週間で終わったの職場を後にしました。一週間分の給与を手にして。
 「あんな強引な会社だとわかって良かった」
 といかにもせいせいした心持ちのSさんでしたが、保険の事を言い出さなければずっと良い職場と勤務していたかもしれず、なんだかモヤモヤも残ります。
 唯一の幸いは、保険未加入の為、職歴にこの会社の名前を登場させずに済んだ、ということでしょうか。
サクセスポイント
今回はココが問題!
試用期間とは
書類や面接だけでは分からない適正を、実際に働いた上で見る期間のことを試用期間といいます。正式には「解雇権留保付労働契約」と言い、企業側が適性に欠けると判断した場合、また応募者側からも自分に合わないと判断した場合、それぞれ解雇・退職が可能な期間とされています。期間は各企業によって異なります。
これでサクセス!
試用期間と職歴
試用期間で退職した場合、職歴には含まれるのでしょうか。
本文中でも触れていますが、保険加入の事実が関わってきます。試用期間中、短期間でも社会保険に加入していた場合は前の会社と雇用関係にあったことが書類に記録されます。たとえ履歴書に記載しなくても、転職先企業が新たに保険加入の手続きをとった場合、その「職歴」が明らかになるのです。
法の定める通り、試用期間中も保険に加入していた場合、これは職歴として記載すべきでしょう。しかし現実には全ての企業で試用期間中から保険に加入できるとは限りません。では保険に加入していなかった試用期間はどうなるのでしょう。正式な社員ではない、つまり「お試し期間」であったと考え、職歴に記述しない人もいます。実際に本当に短期間の勤務の場合は、記載の必要はないと思われます。
しかし試用期間が長期化していた場合や、正社員同様勤務をしていた場合は記載すべきでしょう。逆に、セールスポイントとなるものは、雇用形態に関わらず、どんどん記載してアピールしていきましょう。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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