転職失敗談2
Uターン・Jターン
知人の口利きで農業関係の企業にUターン転職をはたしたFさん。この仕事が予想外の問題をもたらし、FさんをUターンからJターンへ駆り立てることになってしまう……。(→前編はこちら
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殺到する「いいお話」
仕事は経験のない窓口業務でしたが、難しいことも少なく、また残業もほとんどない業務のため、毎日定時に出社し、定時にキッチリと帰れる毎日。変化はなく安定した日々だとFさんは思っていました。ところが初出社の日から、来るお客さん来るお客さんがFさんに近付き、親しげに声をかけてきましす。
 「新しいひとやねぇ」
 「どこに住んでるのん?結婚は?」
 顔見知りの多い田舎町らしい好奇心と、Fさんも深く考えず、気さくに会話に応えていました。
 そんなある日、Fさんは上司に呼び出されます。
 「Fさん、うちにきてるお客さんの▲▲さんっていてるやろ?あの人がなぁ、こんな話を持って来たんやけど、どうやろ?」
 そういって上司が差し出したのは、なんとお見合い写真
 「窓口で身になって対応してくれた言うて、えらい気にいってくれてな、自分の息子さんやそうや」
 あわてて頭を巡らせると、毎週のようにやってきて長話をしていくご老人がいました。
 「お家は農業やってて、跡取りさんでえらい土地持ちや〜」
 記憶の糸を必死にたぐっているFさんに上司は機嫌良く話し続けています。あのご老人の息子さんであればもうかなりの年齢ではないのか、そもそも今はまだ結婚よりも他にしたいこともあるし……困ったFさん、開ける前のお見合い写真をそのまま上司に戻し、なんとかお断りしてくれるよう必死に懇願。その甲斐あってこの話はどうにか沙汰やみになったのですが……これが田舎の縁談地獄の始まりでした。
 その後も窓口で見初めた、Uターンを親兄弟から聞いた、知り合いの知り合いから聞いた、美容院で見かけた、呉服屋で聞いた……などなど様々な筋からFさんのところへ縁談話が持ち込まれます。しかもそのほとんどが農業家庭からのもの。これが噂に聞く“農家の嫁不足”なのかとFさんも驚きを隠せません。
 なるほど、Fさんの故郷は農業を営んでいる家庭が多く、また同年代の女性は早々と結婚しているか、都会に出て帰ってきていないパターンで、20代で独身女性となるとそれだけで垂涎の的。しかもFさんは農業関係の企業に勤めていてその方面にも「理解」がありそうに見える上、窓口で世間話につきあう愛嬌すらあったのです。
立てる顔、潰れる顔
Fさんは来る話来る話全てお断りしていたのですが、それも度重なると業務にも支障をきたすようになってきます。
 窓口でFさんを見初めたお客さんたちは当然ですが縁談を断られて面白いはずがありません。また同様に断られ続けの上司がFさんに露骨に嫌な顔を見せるようになりました。
 お見合い一つ断るにも仲介者の「顔を立てる」「顔を潰す」という問題が付きまとうのです。Fさんが働き続けるかぎり、ギクシャクしたものがどんどんたまってゆくのです。
 田舎の濃い人間関係に限界を感じたFさんは、結局この仕事も辞めることになります。しかし再就職しようにも御当地では、また同じことの繰り返しです。心底故郷にうんざりしていたFさんは再度家を出ることを決意しました。
 ところが、娘の帰郷に喜んでいたFさんの家族が今度は大反対。
 「東京にいたって仕事がなかったんだから、今から出ていっても結果は同じ」
 「でもここで働いてても面白い仕事はないし、お見合い話ばっかり持ち込まれて断わっても面倒ばっかり」
 平行線をたどる親と子の対話に、ふとFさんの兄が口を挟みました
 「×市まで出てみたらどうだ」
 ×市はFさんの実家から車で1時間ほどの地方都市圏。首都圏ほどではないにしても、仕事の種類もありますし、家賃などもお手ごろ。何より実家からほどよい近さで親も安心、帰るのも便利です。
 さっそくFさんは×市で仕事をみつけ、住むところを探して、大急ぎで引っ越してゆきました。
 Fさんの家族は地元にのこり、未だ持ち込まれ続ける縁談に「東京で再就職したのでここにはいない」「そのまま向こうで婚約するようだ」と、あの手この手で断りつづけているのだとか。
サクセスポイント
今回はココが問題!
情報を集めてから動く
UIJターンであっても、転職の基本は先に仕事を探すこと、できるだけ条件を詰めてから動くことです。
昔なじみのあった土地でも、しばらく離れていれば情報がつかめないものです。移ってみてこんなはずでは……とならないためにも、会社だけでなく土地柄、家庭を持つ人なら教育環境・機関なども気を配る必要があります。夫にはなじみの土地でも妻子にとっては知らない土地、子供の頃は快適だったけど、大人になって帰ってみれば暮らしにくい土地、ということはままあります。ライフスタイルが根こそぎ変わることを想定して。
これでサクセス!
UIJターン転職のために
別の土地で転職をするためには事前の情報収集が特に重要です。Iターン以外は、現地やその近郊に活動拠点がある分、まず転居してからでもなんとかなる、と考えがちですが、都市規模が縮小すればそれだけ仕事の数も種類も減ることになり、転職情報誌などに求人広告を出さない企業も増えます(地域によっては情報誌が無いところも)。応募の前の仕事選びに思いのほか時間がかかることも計算に入れて活動して下さい。
また地元にコネやツテがある場合でも、必ず退職前に面談の機会を持って。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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