転職失敗談2
東方転職録
日本式のチームプレーに憧れて海を渡ってきたジャクソンさん。しかし彼の夢は一つではなかった……。(→前編はこちら
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チームで仕事を
ある休日、Kさんはジャクソンさんの自宅に招待をうけました。自宅とはいっても、実際は仮住まい。先に日本への転職をはたし、ジャクソンさんにも日本への転勤を勧めた友人の住まいに同居させてもらい、部屋探しをしているそうなのです。その友人宅へのお招きでした。ところがその“友人宅”というのが、Kさんの予想を遥かにこえたものだったのです。
 全国的にも有名な高級住宅地にそびえ立つ豪華なマンションの一室。広さもハンパじゃありません。日本人でもかなりの高所得者でなくては住めないようなゴージャスなお部屋です。一つ下のフロアにはプロ野球選手が住んでいるとか、華やかな話題にも事欠きません。
 さすが日本の企業が三顧の礼で、役員待遇で迎え入れたというだけある暮らしぶりと、Kさんはあっけにとられたり感心したり。
 そうしてジャクソンさんと個人的にも親しくなり、話をしていくうちに彼の本当の転職理由が分かってきました。たしかに友人の待遇の良さも見ていたし、彼のすすめもあったけれど、それ以上に日本で働きたかったのは、日本人の仕事に対する気質だったのです。
 「アメリカは個人主義の国。でも僕はもっとチームで仕事をしたかった。それなら日本で仕事をしたらと勧められたんだ」
 それを聞いてKさんも納得しました。アメリカで取締役クラスの収入を得ていたトップ・スペシャリストを受け入れるには、正直Kさんの会社は仕事も待遇も比べ物にならないと感じていたからです。しかし待遇よりも大切にしたいものがあるというジャクソンさんの気持ちに打たれ、Kさんはますます彼に傾倒していくのでした。
あっけない幕切れ
しかし事態は思わぬ方向へ転がります。
 Kさん自身が取引先へ3か月の出向を命じられたのです。その間ジャクソンさんとの連絡はとれないままでした。そして出向期間が終了し、Kさんが会社に戻ってきたとき、すでにジャクソンさんはKさんの会社にはいなかったのです。
 驚いて彼の通訳係を買って出ていた外国人スタッフを捕まえて聞いてみたところ、
 「ジャクソンさん、おトモダチのところ出て部屋を探してました。おトモダチと同じくらいの広さの部屋。でも見つかりませんでした」
 それもそのはず、ジャクソンさんが部屋を探していたのは、繁華街のド真ん中、ナニをするにも便利で家賃も一級のエリアです。しかも広さは友人のゴージャスマンション並を希望。
 ジャクソンさんの友人は比較的大きな企業の役員待遇でしたが、彼は小さな会社のごくごく一般的な会社員の待遇。その差をジャクソンさん自身知らなかったわけではありませんが、どうやら彼は日本の不動産事情をなめていたようです。
 不動産屋で「あなたの提示家賃で住める部屋はこのレベル」と見せられた部屋は子供部屋かと思えるほど狭く、とても我慢できるものでは無かったとか。そのショックも手伝ってジャクソンさんはKさんの会社を辞めてしまったのだとか。
 「でも日本で働きたいから、もっと給料のいい会社さがすと言ってました」
 あまりにもシンプルな理由で、あっけなく辞めたジャクソンさん。今となっては別れ際に立ち合わなくて良かったような気すらするKさんでした。
 ちなみに、ジャクソンさんは友人のところに居残り、彼同様に高収入な仕事を探していたもののなかなかうまくいかず、結局アメリカに帰っていったとか。彼は日本の不況をもなめていたようです。
サクセスポイント
今回はココが問題!
見ると聞くでは……
海外への転職の場合、現地の知人の紹介や情報は非常に役に立つものです。知らない土地に一人飛び込む不安も軽減されます。
しかし、あくまでも友人の立場・視点の情報であることをお忘れなく。まったく同じ待遇が待っている保障はありません。これは国内の転職でも同じことが言えます。
これでサクセス!
かけこみ転職
海外への転職では、国内の仕事でやりがいが見いだせない人や、家庭を持って落ち着く前に“なにか”をしたいと焦る人たちが、半ば慌てて海を渡るケースも増えています。自分だけの選択のつもりでも、意外とお仲間は多いかも。行動力はともかく、海外の可能性を過信しすぎると、思わぬことで「こんなはずでは」となりかねません。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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