転職失敗談2
出向社員チーム
IT大手の出向者で結成されたプロジェクトチーム。その一員のMさんはチームリーダーのTさんより、転職の相談を受けるのだが……。(→後編はこちら
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出向社員プロジェクトチーム
IT業界中堅のA社は規模も大きく、そこで働く人の立場も正社員・契約社員・出向社員と実に様々です。そんな出向社員の一人、エンジニアのMさんはITベンチャーC社の正社員。C社は得意先B社と契約しており、B社が請け負ったA社の仕事をアシストするため、B社のメンバーの一人という形で現在MさんはA社で仕事をしています。ややこしいのですが、契約先を経由してさらに別の企業に出向しているというわけです。ちなみに現在A社でMさんが取り組んでいる仕事も別の大手企業からの発注業務だったりします。このようにIT業界では仕事の流れや、人の動きが実に活発なのが特徴です。
 C社に新卒で入社して3年目のMさんですが、出向を繰り返すことで転職を経験することなく、複数の企業の内情に触れることになります。

 ある日、Mさんは出向先A社で共に働いているTさんとの雑談中、冗談ともつかない口調でこう話しかけられます。
「M君とこの会社で俺のこと雇ってくれないかなぁ」
「僕にそんなこと言われても決められませんよ」
 とっさに冗談として済ましてしまいましたが、その後Tさんは勤務先への不満を語りはじめました。
隣の芝は青い
TさんもMさん同様、別の企業からの出向社員。現在Mさんのチームは出向社員が8割を占め、チームの実質的な指揮を取っていたのがこのTさん。現在の仕事はもともと納期に余裕が無かったところへ、よくあることでスケジュールがずれこみ、リーダー格のTさんにとって苦しい日々が続いていました。それは一緒に働くMさんも痛いほど分かっていました。しかし彼にとっての問題はそのことに対する、自分の勤務先のフォローだったのです。
「このプロジェクトの前からずっとここ(A社)に来てるんだけど、その頃から休み無し、会社泊まり込みは当たり前。正直体調もあまり良くないんだ。せめて病院にいく余裕くらい欲しいし、今の仕事に入る前に上に言ったんだけど……」
 Tさんは今回のプロジェクトから外してもらうよう自分の勤務先の上司に願いでたところ、「次の契約の時には外してやるから、今回は我慢しろ」と逆に説得され、現状に至ったのでした。
「これで最後だったら良かったんだけど、どうも次の仕事も決まってるみたいなんだ。口先だけのその場しのぎばっかりで。仕事そのものよりも、うちの上司の下で仕事するのがもう嫌なんだよ」
 たしかに、Mさんの会社は規模は小さいながらも社員の仲も良く、また上司のスケジューリングに繁忙期はあっても無茶な出向の連続などはありません。同じ職場で同じ仕事をしているだけに、他社の環境が余計に良く見えるようなのです。
 疲れきっているTさんに深く同情しながらも、まだこの時のMさんは彼の愚痴を聞いてあげることしかできなかったのです。

(→後編に続く)

pen2 結局Tさんの転職に一役買うことになったMさん。しかし予想せぬ障害が待ち受けていた……。次回、後編へ続く。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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