転職失敗談2
単身赴任、仕事と家族
関西本社に勤務するF氏は二本社制で東京へ転勤になる。しかしF氏の家族はすぐに上京できない理由があり……。(→後編はこちら
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週末はホームの別れ
とある企業で新人教育を担当しているF氏。F氏の勤務先は関西に本社があり、新人研修期間はすべてこの本社で行うのが通例。春から初夏にかけてのこの季節は、全国の支社から新入社員が本社に集い、F氏が心身共に多忙を極める季節でした。
 ところが近年、東京支社が新築オフィスビルに移転したのをきっかけに、東京・大阪で2本社制が敷かれることになり、人事部門は東京へ移ることになったのです。
 F氏は地元・関西で結婚し、幼稚園に通う子供がひとりいます。そのため関西勤務を希望したのですが、「新人研修の要としてどうしても外せない」と再三上司からも言われ、転勤は避けられない事態となりました。
「幼稚園もあとちょっとだし、今仲良しのおともだちと別れ別れになるとこの子がかわいそう」  という妻の心配から、Fさんは先に東京に引っ越し、妻と子供は幼稚園の卒園を待ってから上京という形に決まりました。それまでの約1年の間、Fさんは期間限定で単身赴任を経験することになったのです。
 最初は家事や食事が面倒だったFさんでしたが、独身生活の気安さが思い出されてか、すぐに一人暮らしも悪くないと思えるほどに慣れていきます。
 しかし辛かったのは、週末に自宅に戻った後の家族との別れ。特にFさんに懐いていた子供は、毎週駅のホームまで必ず見送りにきては、電車と並んで走って別れを惜しむのです。期間限定の単身赴任と分かっていてもFさんの胸は痛みます。
のびる単身赴任期間
さて、そんな単身赴任期間も終わりが見えはじめたころ、ある問題が持ち上がりました。Fさんの子供に軽いぜんそくの気が出てきたのです。
 異変に気付いたのは、妻と子供が上京した後のこと。東京の小学校に入ることが決まっている子供を新しい環境に慣れさせるため、またいろいろな手続きもあって、Fさんのマンションに妻と子供が滞在したことが何度かありました。その滞在中からゼーゼーと咳き込む症状がみられたのです。
 最初は長旅の疲れかと思っていたFさんの妻も、上京した後きまって咳き込む子供の姿に不安を感じ、病院にかけこんだところ、
「ぜんそくか気管支炎か……環境の変化やストレスがきっかけかもしれませんね」  との診断。
 妻から相談を受けたFさんも、大事をとって春からの同居を延期することに。
 と同時に、生活設計も根本から考え直す必要がでてきました。家族との同居を考えて借りた部屋も、単身者用の小さなところに変え、東京での出費を押さえる方向に。また長期的な子供の通院を考え、自宅の家計も引き締めていきます。
 幸いぜんそくは、成長するにしたがい病状が収まることが多いと聞き、東京に呼び寄せて生活する日もそう遠くないだろうと、その日を楽しみに単身赴任生活を続けることになったのですが……。

(→後編に続く)

pen2 子供の病気は一進一退、子供と仕事の間に立たされるF氏。長期化する単身赴任に限界を感じはじめ……。次回、後編へ続く。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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