転職失敗談2
単身赴任、仕事と家族
家族との同居と自分の仕事、両方を手に入れるためFさんはUターン転職を希望し、地元の企業を紹介してもらう。内定間違い無しと言われた面接の結果は……。(→前編はこちら
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あの会社の人なら
単身赴任を決めたFさんでしたが、決して経済的に余裕があるわけでもありません。2か所に所帯を構え、加えて子供はこれから大きくなり、教育費の心配も出てきます。さらにはFさんの妻が今になって東京への引越しに反対しはじめたのです。
「なんとかこっち(関西)に戻ってこれない?この子のぜんそくは悪くはなってないけど、今すぐになおるものでもないし……それに単身赴任の家庭は子供にもいろいろ影響が出やすいんですって。ほら、××さんとこの○○君、お父さんが単身赴任してた間、登校拒否だったらしいのよ……」
 Fさんにしても、希望して東京に転勤になったわけでなく、会社の人事部門が東京へ移った結果にすぎません。関西への転勤願いは自分のやりたい仕事を捨てることになります。しかし、自分の転勤がきっかけで子供が病気になったのもまた事実。
 家族を取るか、仕事を取るか。どちらも捨てられないFさんは、再び地元で希望の仕事につくため、関西へのUターン転職という道を選ばざるを得なくなりました。

 東京に在住し、関西での求人情報を集めるにも限りがあるFさんは、人材紹介センターに登録し、条件にあう企業の情報を提供してもらうことに決めました。
「Fさんが現在勤務されている企業と同じ規模の会社は、ほとんど東京が本社で、人材採用・教育などの仕事は東京一極集中状態です。勿論、関西に本社をおく企業もありますが中小企業が多くなり、規模もグレードも違ってくると思われますが」
とコンサルタントは釘をさされましたが、Fさんはそれも承諾。自分のやりがいと家族との同居を両立させるための譲歩でした。
 その結果、同業の中堅企業A社との面接にこぎ着けました。
「Fさんの経歴ならA社では申し分ないと思いますよ。なにより『あの会社で新人教育をしていた人なら』って先方の担当は大変乗り気でしてね」
 業界の中でFさんの企業は有名な部類に入ります。Fさんの会社を追いかける立場にあるA社にとってFさんの経歴は魅力的なのだとコンサルタントは言います。
怒りを共有
その言葉に偽りは無く、面接でのA社の感触は良好でした。Fさんの家族の事情にも同情を寄せてくれ、最後には「後日、おそらくいいお返事ができるかと思います」という口約束ながら内定まで出たのでした。
 この結果にFさんだけでなく、家族も大喜び。退職の時期はいつにしよう、引越しはどうしようとあれこれ相談をすすめていたところへ、紹介会社のコンサルタントから電話が入りました。
「先日のA社の面接ですが、残念ながら……」
 口ごもりながら不合格を告げるコンサルタントの電話に驚いたのはFさんです。
「理由を教えていただけませんか?失礼ながら面接の時はほぼ内定のようなコメントもいただいたし、正直何が悪かったのか分からない」
 確かにこれでは納得はしていただけないでしょう、と前置きしてコンサルタントは続けたことばに、さらにFさんは打ちのめされることになります。
「実はA社は、ずいぶん以前にFさんの会社から人を採用したことがあるんです。別の部署だったんですが、どうもその社員のカラーがA社の現場にあわなかったらしく、そのことを会長が、前の社長なんですが、ずっと覚えていて『もうあの会社の社員は入れない。ましてあの会社で新人教育をしていた人間なぞ社員の親玉だ。そんな人間をうちの人事に入れたら社風が根こそぎ変わってしまう』と大変な剣幕でして」
 聞けばFさんが教育を担当するずっと以前の話で、Fさんに直接の責任があるわけでもありません。
「会長は高齢で、もう一線を退いて久しい人ですが、決定権はもっておりまして……我々も説得にあたったんですが、なにしろ頑固な方で……申し訳ない」

 その後、Fさんは同じ人材紹介センターから数社の面接をセッティングしてもらい、うち1社の企業に転職が決定しました。Fさん本人の努力もありましたが、A社での理不尽な結果から、コンサルタントとFさんの心理的距離が縮まり、二人三脚で転職活動を乗り切れたのも勝因のひとつだったようです。
サクセスポイント
今回はココが問題!
企業のカラー
企業にはそれぞれ独自のカラーがあります。特に強いのはカリスマ的創業者をもつ大企業や有名企業の「○○イズム」といった社外にも知られるもの。転職の際、応募者をイメージする助けにもなり、時には今回のように偏った先入観を持たれたり、転職活動の結果に影響することも。
これでサクセス!
お互いのカラーの一致
転職の成功は応募者のカラーと企業のカラーをうまくあわせること。その手助けとなるのが人材紹介企業です。しかし企業のもつ転職情報は得意分野を中心として偏りがあることも。まず自分の希望する職種に強い企業を探すこと、そして家庭の事情などプライベートな情報を含めて相談のしやすいコンサルタントに出会うことが大切です。コンサルタントの得意分野や性別・年齢を記した一覧を用意し、応募者が指名できる企業もあるようです。そういったサービスをうまく利用しましょう。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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