転職失敗談2
OB会
退職と転職は切っても切れない関係。同業のライバル企業に転職するという話も珍しくなく、当然職場の上司は部下の転職にピリピリするわけで……。(→後編はこちら
バックナンバー
転職者といいわけ
中堅広告代理店A社では、このところ管理職目前の有望な若手社員の退職が相次いでいるのが問題。それぞれ家庭の事情や、結婚等を理由としてはいるものの、どこかに転職している感はいなめません。
 社員の退職のたびに上司や社長は「がんばれ」と激励し送り出すものの、風の噂でライバル企業に移ったと聞いたり、はたまた同業者の会合などでバッタリ顔を合わせては妙な気まずさを覚えることも。
 最初は気まずい程度ですんでいた話も、度重なるとだんだん面白くなく、とりわけ短気な社長はその都度、
「まったく、後ろ足で砂をかけるようなマネしやがって!だいたい、うちで勤まらないやつは他でも勤まらんっ!」
 と怒り心頭で大荒れです。
 そんな中
「ここで学んだことを基礎にして、違う業種で自分を試してみたい」
 とハッキリ明言する転職希望者・Tさんが現れました。友人に誘われてIT系ベンチャーの営業を手伝うのだと言うのです。
OB会一期生
上司も一応Tさんを引き止めてはみたのですが、リスクも承知の上で一人のビジネスマンとして冒険してみたい、と熱く語られ、押し切られてしまいます。
 結局説得に失敗した上司は「また社長がなんと言うか…」とへそを曲げつつ、シブシブ報告にいくと、社長、さぞかしご機嫌斜めかと思いきや、
「そんなことを言ってたか。コソコソ会社を移るやつが多い中で、マシじゃないか」
 と満更でも無い様子。思えばこの時社長の中で何かが変わったのでしょう。
 その後エレベーターでTさんと乗り合わせた社長は
「友達の会社に移るそうだな。今はどこも大変だろうが頑張れ。そのうち会社が大きくなったら、うちにも仕事をまわしてくれよ」
 と激励の言葉まで投げかけたのです。さらに最後の朝礼では
「終身雇用も崩れ、一生で会社は一つという人のほうが珍しい。うちに残ってじっくり人間成長を図ってくれる方がわたしとしてはうれしいが、あえて外の釜の飯を食うのも大切だと思う。どこにいってもA社にいたことを忘れず、OBとしてこれからも良い関係を築いていければ、こんなにうれしいことはない」
 と何かを悟ったような発言まで飛び出しました。
 かくしてTさんはA社OB一期生として、暖かく見守られながら転職していったのでした。

(→後編に続く)

pen2 ベンチャー企業に移ったTさんだったが、想像以上に現場は厳しく、精神的にも経済的にも苦しい日々が待っていた。そんな時A社のOB会が……。次回、後編へ続く。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
バックナンバー

▲ページのトップへ