転職失敗談2
OB会
希望を持ってベンチャーの海に飛び出したTさんだが、資金繰りの悪化で結局会社は解散に。そんな時A社OBの飲み会に誘われたTさんは思わぬ転職話を耳にする……。(→前編はこちら
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企業解散
友人の経営するベンチャー企業へ転職したTさんでしたが、現状は予想以上に厳しいものでした。
 まず営業メンバーに未経験者が多く、当たり前のことながら営業ルートもありません。飛び込みやDM、FAXなどでの新規開拓をかけても、うさんくさいものを見るような目を向けられてしまう辛さ。
 それを乗り越えてどうにか会ってもらえても、トークをはじめたと思ったら、急な来客で追い出されたり、担当者の暇つぶしに意地の悪い言葉を散々投げかけられたり。
 前に勤務していたA社も、有名企業というわけではありませんでしたが、過去の実績もあり、営業ルートもあり、ここまで厳しい経験はしたことがありませんでした。業種の違いに加えて、会社の知名度が無いベンチャーの辛さを、Tさんは嫌というほど味わうことになったのです。
 それでも、営業の難しさはそれなりに覚悟があった分、まだ耐えられました。
 もっと切実だったのは、仕事を受注した後です。新参の会社と足下を見られ、納品後にクレームをつけて値切ったあげく、入金を遅らせるという会社が出てきたのです。
 友人である社長とTさんはそろってクライアント企業に出向き、言葉を尽くして対応しても相手先もしたたかで「約束の金額では払えない」と一歩も退きません。
 何分小さな会社のこと。今日の売上金は明日の運転資金につながるような命綱。回収できて価値が出るものです。それが遅れるとなると経営自体が危うくなります。
 結局、他の事情も重なり、資金繰りの悪化も原因となってこの会社は整理解散することになってしまいます。
出戻り転職
Tさんもしばらくは会社の整理に追われ、転職活動する時間も余裕もありません。
 そんな折、Tさんの元に一通のメールが届きます。差出人はA社時代の同期入社の友人から。彼も今はA社を離れ、別の企業に転職したと聞きます。「来週の土曜日、A社にいってたヤツらで飲むことになったけど、くる?」という内容。こんな時人と会うのも気が進みませんが、一人で居ると沈みがちになる一方です。こんなときは気分転換も必要だとTさんは思いきって「参加」のメールを返信しました。
 そして土曜日。久々に会う面々の間では、当然近況報告から始まりました。同業他社に移ったもの、全然違う業界にいったもの、ハデにやっているもの、地道な活動をしているもの、実に様々でしたが、皆一様に同情したのはやはりTさんの身の上。そんな時参加者の一人がこんな話題を口にしました。
「そういえば、Tの少し後で辞めたU、あいつも転職先でうまく行かなかったらしくて、社長に詫びいれてA社に復帰したらしいぞ」
 この一言でTさんも、A社にもどる道を模索しはじめました。幸い同期生にはまだ社内に残っている者も多く、そこから打診し、社長との面談をセッティングしました。
 面談に現れた社長は厳しい表情ながら
「君も外の世界の厳しさを知って、前いた時の環境がどれだけ恵まれていたか分かっただろう。外の世界を知った営業として、苦労から学んだものを発揮してほしい」
 とTさんの「出戻り」を許してくれたのでした。辞める時も「OB」と呼び、暖かく送り出してくれた社長の度量の大きさに感動し、
「もうこの会社を離れることはないだろう」
 と決心したのでした。
 ところが、再雇用のための条件を提示された時、Tさんは現実の厳しさに打ちのめされます。雇用形態は契約社員、給与は元いたときの70%、しかも1〜3課まである営業課の中で、出戻り先は元いた1課ではなく、最も客単価が低い3課。そのくせクレーム客が多く売上率も悪いのが特徴で、営業であれば皆あまり行きたがらないところです。会社に残っていた同期との差は歴然です。
 これが「出戻り」のペナルティかと、Tさんは黙って承諾せざるを得ませんでした。
 幸か不幸か、ベンチャー時代のクレーム客対応の経験が生き、Tさんは入金を渋る顧客とうまく渡り合っているようですが……。
サクセスポイント
今回はココが問題!
増加する出戻り転職
技術職、外資系などでたまに見受けられた出戻り転職。最近、この出戻りを受け入れる企業がじわじわと増加中しています。他社を経験していることで視野が広がり、スキルがアップしているといった点に加え、元社員ということで社内を良く知っている、つまり再教育の必要が無いということが、受け入れポイントになっているようです。
これでサクセス!
出戻り転職のポイント
当然のことですが、出戻り転職をするには「一度辞めた社員でもいい」と言わせるだけのスキルなり、技術力なり、経験なりが必要です。今回の事例では特に出戻りのハンディ面を強調していますが、逆を返せばクレーム処理の経験を積んだTさんの経験が最も活かされる部署に配属されたとも考えられます。
また出戻りが増えているとはいえ、まだまだ日本の企業では珍しい例に入ります。再雇用の待遇も辞職前と同じ、それ以上、前より悪い、まったく違うなど企業よって違いがあります。戻り先の企業気質が大きく影響する点も忘れてはいけません。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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