転職失敗談2
君のため
リストラのため結婚を延期せざるをえなかったK子さん。見事転職をはたし、結婚準備に入ろうかという時期に予想外の展開が待っていた……。(→後編はこちら
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部門をアウトソーシング
K子さんは結婚前、メーカーの社内SEとして働いていました。実はK子さんが結婚を考えはじめた当時、K子さんの勤務先は経営が悪化の一途をたどっていました。事業を大幅に縮小し、契約社員やアルバイトで勤まる職種はどんどん正社員を解雇。K子さんは職場の現状を心配しながらも、
「自分の仕事はアルバイトの人間に変われるものでもないし」
 とどこか他人事だったことは否めません。
 しかし、不景気の影響は留まるところを知らず、結局K子さんが所属するシステム室もまるごとアウトソーシングされることが決定してしまいます。
 部署が閉鎖になる社員は、希望すれば社内の他の部署に残ることができる、という告知ではありましたが、まったく畑違いの仕事に就かねばならない上、給与の大幅カットも予想されます。
 結婚後も共働きを前提にしていたK子さんにとって、これは大打撃。しかし、家庭を持つとなるとなにかと忙しいSEより、事務職などに転じた方がいいかもしれない……そう考えを変えはじめた頃、上司からの呼び出しがありました。
「システム室が閉鎖されることは知ってると思う。このまま社内に残っても君が望むような仕事はしばらくはできないだろう。となると、君のような技術を持った人は我が社にはもったいない。転職をすすめるのは君のためだ」
 と言葉を飾ってはいるものの、これはあからさまなリストラ勧告。根が強気なK子さんはこの言葉でいっぺんに会社が嫌になり、さっきまでの心づもりもどこへやら、
「そうですね。わかりました。お勧めに従うことにします」
と即答してその場を辞してきたと言います。
延びては縮む結婚
システム室の引き継ぎをこなしつつ、K子さんが転職先を見つけたのは五か月後。リストラを言い出した上司への反発も手伝って、結婚話を一時棚上げにした上で、満身の力で勝ち取った内定でした。
 一刻も早く社員を減らしたい上層部の意向で、転職先が決まったものは、仕事に差し支えなければ、順次退職していってもいいことになっており、K子さんもシステム室閉鎖を待たずに退職。最後の挨拶も逆に他のメンバーを激励する内容で、「上司を見返してやった」満足感でK子さんは意気揚々と職場を後にしたのでした。

 新しい仕事は同じく社内SE職で、結婚後の生活リズムにも対応できるようにとフレックス・タイム導入の企業を選びました。
 転職後1年ぐらいは職場に慣れることを最優先させようと、結局K子さんたちの結婚はまたも延期することに。しかし、運命は待ってはくれなかったようです。なんとK子さんに妊娠 が発覚。急遽結婚予定を早めることになります。転職後わずか4カ月目のことです。
「転職したばっかりで、こんなこと言い出しにくい……」
 と気は進みませんが、言わないわけにもいきません。人気の少ない昼休みに上司を呼び出し、急転直下の結婚と妊娠の報告を同時に行いました。
 さて驚いたのは上司の方です。
「えっ!妊娠?!」
 ハッキリと非難はしないものの、やはり転職したての結婚・妊娠は歓迎しかねる様子。言外に“契約違反だ”という雰囲気も感じられるような……。
「それで、君、どうするの?辞めるの?」
「いえ、できればギリギリまで働いて、産休をいただいて産後も復帰したいんですが」
 K子さんの言葉に、上司はさらに険しい表情をうかべ、しばしの沈黙の後、苦々しい表情で続けました。
「うちは女の人何人かいたけどね、今までとった人いないんだよ、産休。知ってると思うけど、この仕事は時間的にも不規則でハードだし、結婚後も続ける人はいても、子供を産んで続けてる人はいないんだ。続けられないからね。仕事を続けたいなら、君のため、子供のためにも別の道も考えてみたら」
 暗に転職をすすめる上司の言葉に、K子さんも反発を感じなかったわけではありません。しかし、何分にも転職してすぐの妊娠発覚(しかも予想外)ということで、彼女自身もいくらかは負い目を感じており、明確な回答を出せないまま、その日の話し合いは時間切れとなったのでした。

(→後編に続く)

pen2 またしても「君のため」と転職をすすめられることになったK子さん。はたして安住の地は見つかるのか……?次回、後編へ続く。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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