転職失敗談2
アンケート社長
入念なアンケートを実施し、応募者を選考するA社。回答には社長自ら目を通し、3名の応募者を直接選び出したのだが……。(→後編はこちら
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ビフォア・アフターのアンケート
新卒や中途採用の場合、面接でアンケートを実施している企業は多いもの。適性検査の性格診断のようなものから、長文を書かせる一問一答形式まで。純粋に採用判断の材料にするのは勿論のこと、良いチャンスだからと「どこで弊社を知りましたか?」「弊社までの交通アクセスは?」「弊社商品について……」といったマーケティングの意味も込められている場合も。
ベンチャー企業のA社は新卒・中途採用者に詳細すぎるほどのアンケートを実施していました。このアンケート、社長入魂の項目がズラリの上、面接や会社説明の実施前と実施後の2回も実施。
1回目は略歴、性格判断、アピールポイント、会社についてのマーケティングなど。説明や面接後の2回目のものになると、会社の印象や説明の仕方についての感想、さらに再度マークシート型の性格に関する質問など。特に性格判断系のものは、一回目の内容と二回目の内容が食い違わないかと思い出し記入する応募者も多く、アンケート記入だけで2時間以上もかかった人もいたほど。
 記入する方もぐったりしますが、それをひとつひとつチェックする人事部も大変。しかも社長肝入りのアンケートだけに、後ほど社長も目を通すことになっているのです。
社長がとりわけゆっくり読むところが、A社を志望する理由と、会社説明の印象欄。あからさまなお追従を喜ぶのではありませんが、それでも社風をほめる内容はうれしく、そういった記述があれば社長はかなりの上機嫌。この作業が社長自身のエネルギーになっているようです。
社長があなたに興味を……
そんな中社長が目をとめたのが次の3つの意見。
「ベンチャー企業が次々失速していく中、社長のエネルギーとカリスマ性を強く感じ……」
 という社長心酔型コメント。
「日頃御社のサービスを利用してる1ユーザーとしてこの点は改善の余地あり」
 という批判提案形コメント。
「自分はこういう能力があり、御社のこの部署にうってつけ」
 という強い自己PR形コメント。
 どの応募者も項目を埋めるのに必死なのか短い文章が目につく中、この3名はビッシリ文字を詰め込み、また明確なアピールが目立つ意見でした。社長も特に興味を示し、自ら会って面接を行うことを決定したのです。
 とはいうものの、一国一城の主である社長の仕事は何かと多忙。面接にあたっては社長のスケジュールを優先させ、ようやく作った1日に3名の面接を順番に行うという段取りに。
 人事担当が応募者に連絡をしたのですが、まったく違う生活サイクルをもつ3人を同じ日に集めるのもまた大変でした。
「現在仕事についていますので、その日は外せない業務が……」
「先般の面接で有給を使ってしまったので、なんとか終業後か週末になりませんか」
 など渋る応募者に
「当社の社長が××さんのアンケートに目をとめまして、ぜひ直接会いたいと申しておりまして。スケジュールの都合がつくのはその日しか無く、ご無理を申しますが何卒……」
 と言葉を尽くして説得にあたりました。
 難しい調整でしたが「社長があなたに興味を持っている」という一言が効いたのか、なんとか3名の面接日程を1日に集めることができたのでした。

(→後編に続く)

pen2 社長自ら面接に乗り出し、日程まで調整したのだが、社長業は予想以上に繁多で面接は波乱含みに……。次回、後編へ続く。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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