転職失敗談2
リストラの法則
人員整理の任についたHさん。部下の肩を叩く辛い作業の果てに選んだ決断とは……。(→前編はこちら
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退職勧告悲喜こもごも
Hさんはリストラ人員選定に先立ち、自分が長をつとめる商品管理部門の作業を一からチェックし、人数の多い部署、無駄の多い作業を洗い出した上で、従業員ひとりひとり検討し、退職を勧告するメンバーを決定しました。
 まず人数の多かったパートさんは、無駄な作業をカットし他の従業員に振り分けることで頭数を削減。勤務状況・キャリアなどを検討し、辞めてもらう1/3の人数を選び出しました。
 昼休みや終業後などの時間を選び、ひとりひとりにその旨を告げます。パートさんたちの多くは若いリーダーのHさんより、年齢もグンと上で弁も立ちます。イヤミのひとつ、恨み言のひとつもいわれるだろうと覚悟の上で話を切り出したところ、意外にも反応は冷静で、なかには
「Hさんも辛い仕事よね。こうしてひとりひとりに言いにくいこと言わなきゃいけないし。最近随分やせたし思い詰めてたみたいで心配してたのよ」
 とあたたかい声をかけてくれるパートさんもおり、Hさんは涙を堪えたこともありました。
 肩をたたいたのはパートさんだけではありません。あきらかに商品管理の仕事に向いていないと思える社員や、作業のチェックで余剰になった社員など、他にも何人かに退職を勧めました。退職までの猶予は3か月。この間は新しい仕事探しに専念できるようにと、休暇・半休は無条件でとらせ、本来の仕事のシフトからもできるだけ外すよう取り計らいました。
 Hさんの部署はもともと従業員同士の人間関係がよいことで有名でした。退職勧告はHさん自身も悩み抜いた結果だと部下の誰もが知っており、また退職する社員のためにできるだけ便宜をはかろうとするHさんの気持ちを汲み、部署内は大きな混乱もなくリストラを受け入れていきました。
 他の部署では女性社員ばかりをターゲットにし、怒ったOLたちで給湯室がパンクしそうになったところや、ひとりひとり親の仕事、配偶者の実家の仕事などを調べ、家業を営んでいると知るや
「そろそろ実家に帰る潮時なんじゃないのか?」
「このあたりで嫁さんの親にも孝行したらどうだ」
 と迫って部下の反発をかった管理者も少なく無く、それに比べるとHさんの商品管理部はいたって静かに「その日」を迎えたのでした。
Xデー来る
猶予の3か月が過ぎ、退職者の最後の出勤日を迎えました。送り出すHさんにとっても辛い一日です。
 Hさんの部署でも、最後まで転職先が見つからなかった社員もおり、そのことがHさんの気持ちを一層重くしていました。
 厳しく退職を迫った某リーダーが、いざ最後の日となったら頭を下げて謝った、いや××部の部長は土下座したなどの噂も、最後の最後までかまびすしく耳に入ってきます。
 Hさんの部署では終業後お別れの宴会を開くことになり、Hさんも出席するよう部下から声をかけられていました。その席のことです。乾杯の号令を頼まれたHさんは、退職者の前途を祈る言葉の後こう続けたのです。
「実は、私も辞めることにしました
 リストラ人員を選定したというHさんの良心の呵責もさることながら、そこに至るまでの責任が長としての立場の自分にもあったはず、部下だけを辞めさせて自分が残るわけにはいかない。そんな気持ちから密かに自分抜きでも仕事が成り立つよう、引き継ぎのことも考えた体制づくりをしていたのです。そしてリストラが一段落し、区切りがついた今、辞表を提出したのでした。

 Hさんはその後、就職サイトや人材紹介企業などを活用し、転職先を見つけることに成功しました。Hさんのキャリアから、管理職を紹介してくることも少なくなかったようですが、今回のショックからか管理職のオファーはすべて断り、いち社員からのスタートを希望したそうです。
 さてHさん退職後の某メーカーはというと、社内全体の雰囲気が前とは比べ物にならないほど酷くなっていました。人員整理時の人間関係の悪化が後をひいていた上、リストラ後の仕事の過密化により残った社員にかかる負荷が増えていたためです。
 商品管理部はというと、Hさんがレールを敷いた新体制でスムーズに始動はしていたのですが、社内のモテベーションの低下はこの部署にもしっかり影響し、
「Hさんが辞めてからこの部署もしんどくなった」
 とその後も退職者が出続けているようです。最近では
あのHさんが辞めたくらいだから、この会社はよくよくだ」
 という理由づけで辞める社員まで出始める始末。
 自分の退職が思わぬ影響を出していると小耳に挟み、Hさんはまたもや責任を感じてしまっているとか。リストラとは難しいものです。
サクセスポイント
今回はココが問題!
リストラの弊害
企業がリストラを敢行するのは並大抵の事態ではありません。リストラが功を奏して会社が持ち直した、という例もありますが、甲斐の無い結果に至ることも多く、また持ち直しても残った社員にも少なからぬショックをあたえ、モチベーションが低下する弊害もあります。リストラを受けた人が転職するのは当然ですが、こうした理由からリストラを免れた(評価されている)社員も会社から離れてしまうこともあります。
これでサクセス!
リストラと転職
転職市場ではリストラされたことをマイナスポイントととらえる人もいます。たしかにことさらにアピールする事柄ではありませんが、「やりたい仕事の部署が無くなった」「人員が多くなりすぎた」など、考え方を変えれば自分の力の及ばない事情が影響した結果です。応募者に問題があって解雇された場合と違い、会社理由のリストラが大きく評価を左右することはありません。面接などでは「部署の人員が整理され、自分のしたい仕事を続けるため転職を決意」など、受け身でない理由を述べることがポイントです。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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