転職失敗談2
アドバイザーのユウウツ
スクールで転職アドバイザーの仕事をしているKさん。自身の転職経験に照らし合わせたアドバイスはスクールの生徒にも評判だったが、彼女のスタンスは業績第一のスクール側とは対立していて……。(→後編はこちら
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仕事探しのアドバイス
ある社会人向けのスクールに勤務しているKさんは自身も2度の転職経験者。最初はメーカーの開発技術者として勤務し、そのキャリアを買われて同業他社に転職。その後結婚や引っ越しを経て2度目の転職で現在の職場に落ち着きました。
 Kさんの勤務先は資格取得や試験合格などの転職に役立つ講座の他に、社会人が余暇を利用して通うカルチャースクール的な講座も多く、取得コースもパソコン講習、英会話、公務員受験といったビジネスに役立つものから、ダンス、フラワーアレンジメント、アロマテラピーといった趣味的なものまで幅広くカバーしているのが特徴。
そのスクールでKさんの仕事はというと、コース卒業者の就労相談にのる就職/転職アドバイザー。コース取得前や、取得中の生徒の転職希望を聞き、どんなコースをとったらよいか、どんな資格にチャレンジするのがよいかなどのアドバイスを与えています。
 当然のことながら、Kさんのところに相談にやってくる生徒は、最初から転職や就職の為にスクールに通いはじめた「就職組」がメイン。取得コースもビジネスよりの生徒がほとんどで、多くは明確な目的があるため、Kさんの仕事もそう難しくありません。たまに
「自分が何にむいているのか分からない。今とりあえず取ったら転職に有利になる資格とかありますか?」
など漠然と自分探しの相談を持ちかける生徒もいて、律儀なKさんは一般的な資格を挙げる傍らで、
「しかし資格は『なりたい自分』があってこそ、それを助けてくれるものです。やみくもに『有利な資格』とチャレンジしてもその後うまく仕事に活かせるかどうかわかりませんよ。焦らないで、まずは興味のあることを探しましょうよ。」
と仕事を離れてアドバイス。Kさん自身が転職を経験しているため、実体験を交えた話をかわすことも多く、信頼を寄せる生徒も多いようです。
アドバイザーのジレンマ
しかし、このKさんの姿勢は、一人でも多くの生徒を確保したいスクール側の意識と必ずしも一致してはいませんでした。
 やがてアドバイザーにも営業並みのノルマが課せられるようになり、
「勧誘、勧誘、とにかく勧誘」
 と、相談からいかにして新契約につなげるか、毎月の勧誘生徒数をビシビシ管理しはじめます。
こうしたスクールの体質にKさんはジレンマを感じずにはいられません。
 そうこうするうちに不況はズルズルと長期化。スクール側もより一層の生徒確保に乗り出しました。
当初ビジネス系のコース取得者にむけて「転職に有利なスクール!」「転職相談実施」をアピールしていたのですが、それだけではなく今度はカルチャー系のコースにまで「好きなことを仕事に!」就職/転職の斡旋が受けられる!と宣伝しはじめたのです。
Kさんの勤務先はなんといっても、選択できるコースの多さが「ウリ」のスクールです。中には月に1、2度、3か月で終了するカルチャー講座まであり、数えきれないほどの科目が存在します。
それらひとつひとつの仕事市場を把握するだけでも大変ですし、また仮に把握したとしても、「○○講座修了」というキャリアの人間を受け入れてくれるかというと、正直Kさんにもはなはだ疑問なのです。
 予想通り数カ月後ごろより、「好きを仕事に」というコピーに惹かれて集まった生徒たちが三々五々コースを修了しはじめ、転職目指して次々と就職アドバイザーのKさんの元にやってくるようになりました。
 そして予想どおり、彼等の転職を助けるのは非常に困難を極めることとなったのです。

(→後編に続く)

pen2 好きなことを仕事にしたい−様々な要望を持った受講生のために、Kさんは思い付く限り、知る限り転職に有利な情報を提供しようとするのだが、中にはどうしても手におえない生徒がいて……。次回、後編へ続く。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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