転職失敗談2
会社の弱点見極めます
面接経験豊富なTさんは、応募先を訪問すると必ず“あるもの”をチェックすることにしている。その“あるもの”とは……。(→後編はこちら
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標語チェッカー
Tさんは周囲も「面接の達人」と呼ぶほど、面接経験が豊富な人物。しかも、不合格で経験を重ねていくのではなく、面接突破後にTさんの方から辞退して実を結ばないことが多いのです。
しかし、せっかくの内定をなぜ辞退してしまうのか。Tさんがその見極めをするのは、面接などで実際に企業を訪問した後のこと。
「社内を軽くご案内しましょう」
とか、ほぼ内定確実になり、
「それでは実際に入っていただく部署をご案内しましょう」
 という段階を迎えると、Tさんはあるポイントをすかさずチェックするのです。
そのポイントとは「標語」。職場には、よく壁にスローガンや目標が書き込まれた貼紙がつきものですが、Tさんは企業を訪問すると必ずその手の貼紙に目を走らせるのです。
「標語や目標というのは、うらを返せば出来ていない点、その会社の弱点なんですよ」
とTさん。職場の標語や貼紙の内容をチェックし、転職の指針にしていたというわけなのです。
たとえば、某大手企業を訪ねた時は
 「上司よりもまず、お客様 −上司は二の次−」
の大文字のスローガンを見つけ、大企業の殿様体質を痛感。実際にその企業の面接は、応募者が殺到したことも手伝って、非常に形式的で冷たい印象を受けました。帰りにチラっと覗いてみた接客フロアも、病院の待ち合い室のような殺伐とした雰囲気で、いかにも上司を最優先にしているような気がしました。
裏側に潜む実態
またある時、不動産系企業の営業募集に出かけたところ、お客様に見えるところに
「いらっしゃいませ!いいお部屋選びは……」
 という宣伝コピーが書かれたプラカードが天井から釣り下げられていました。
しかし、事務所の内部に通された時、何気なく後ろを振り返ってみると、なんとプラカードの裏側に
「一、挨拶を忘れない 
 一、笑顔で対応する 
 一、客を泣かさない
 という恐怖の(?)三か条が従業員から良く見えるように書き記されていたのです。Tさんは面接で
「ノルマはかなり厳しいのでしょうか。具体的にはだいたいどれくらい……」
 と必死に質問したとか。

 Tさんが標語・スローガンにこだわるのは、以前勤めていた職場に原因がありました。前の職場にも勿論標語の類いは掲げられていましたが、会社を興したという先代社長の「書き付け」を表装したもの。入社後声に出して読むことも無く、ただなんとなくそこにある、ずっとあるといった印象です。
 その伝統ある“印象”どおり、会社の事業も安定した変化に乏しい仕事内容でした。そうしたことに不満を感じたTさんは
「社員の意識改革や教育にも熱心で、その時その時目指しているものがハッキリしているような職場が理想」
とばかりに、応募先の標語チェックを始めたのでした。
 最初は社風を知る一端としてはじめた標語チェックでしたが、回数を重ねていくうちに、その企業が隠そうとしている弱点が見えてくることもあり、次第に転職の危険回避のために欠かせなくなってしまったのです。

(→後編に続く)

pen2 応募先企業を訪れては、標語チェックに余念のないTさん。ある時広告代理店で、切実な願いを目にすることになるのだが……。次回、後編へ続く。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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