転職失敗談2
会社の弱点見極めます
応募先では必ず貼紙に目を通す標語チェッカーのTさんは、企業の隠したいポイントをスルドク見抜いているはずだったのだが……。(→前編はこちら
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不穏な目標
「標語は会社の弱点」を信念に、訪問先の企業では必ず貼紙に目を走らせるという標語チェッカーのTさん。そのためTさんの転職は、慎重な上にも慎重になっていました。
 ある広告代理店に応募した時のこと。営業職のペーパーテストに出かけたところ、あいにくスケジュールがずれ込み、先の応募者がまだ試験中ということがありました。Tさんは急遽社内を案内され、時間を潰すことに。これ幸いとTさんの目が光ったのは言うまでもありません。
営業マンのデスクが列を作ってならぶ営業ルームに通され、簡単な説明を受けている間もTさんの視線は右へ左へ。そして、ある一角の天井から釣り下げられた短冊状の貼紙に目を止めました。そこには一言、
「まず、一勝」 職場全体のスローガンも、別に大きく貼ってあるのを見つけましたが、そちらは内容も理想的で、きちんと機械で打ち出したもの。それに引き換えこちらの短冊は、太いマジックで書きなぐったような文字が踊る手作りな感じでした。しかも「まず、一勝」が目標だというなら、いままで一度も「勝った」ことが無いというのでしょうか。つまり、それほどに契約率が低いのか、ノルマを達成しにくいのか……。Tさんはこの一角になにやら不穏なものを感じていました。
テストの後、担当者が出て面接に移りました。「何か質問は」という問いにどうしても先ほどの貼紙が気になったTさんは恐る恐る
「先ほど営業ルームを見せていただいたのですが、奥の方の一角に貼紙がしてあったんですが」
「なにか貼ってましたでしょうか?」
 貼紙の内容を思い出せない担当者に、Tさんは今見た内容を説明し、どういう意味があるのかと質問してみました。すると……
「ああ!あれですか。あれは仕事の目標じゃないんですよ」
実はあの一角に陣取っている社員は会社の野球チームのメンバーが多く、貼紙も野球チームの目標だったのです。
チェッカーとマニア
「うちの野球チームはとにかく弱くてねぇ……」
毎日の仕事が忙し過ぎるのと、対戦するクライアントチームに花を持たせるためとで、このチームはまったく練習しないことをモットーとしているのだとか。取引先の接待戦ならそれで問題もないのですが、たまに仕事抜きで地域のリーグ戦に出ても、まったく勝てないときては、やはり情けないもの。それゆえ、チームの誰かがシャレであの貼紙を作ったということだったのです。
 あの目標の裏に、いったいどんな厳しい壁があるのかと身構えただけに、この話題には笑わされたTさん。もっとも、この時「標語信仰」に疑問を抱くべきだったのかもしれません。

その後もTさんは標語チェックを続け、ようやくある企業に転職を果たしました。転職先は四ヶ月ごとに新しい目標数字と長文のスローガンを掲げるという、標語マニアといってもいい職場。古めかしい置物のような「社訓」に縛られていたTさんの目には、フットワークの良い行動力に溢れた職場にうつったのかもしれません。
転職後、営業部の一人となったTさんも、厄介なことに毎朝長文スローガンを唱和させられていましたが、問題はその後に待っていました。
この企業では、年に二度実施される昇進試験で、過去の目標数字とスローガンが問題として出題されるのです。しかもどんな長文でも一語一句、句読点ひとつ間違えることも許されないという非情な採点システム。いつも目標クリアの営業社員でも、標語テストで落ちて万年ヒラもありうる上、中には夜も残業で暗記が間に合わないからと、カンニングの準備をする社員がいるという噂もあるくらいシビアなテストなのです。
Tさんは唇を尖らせながら、新しいスローガンの暗記に余念がありません。厄介なことに、過去の転職活動の訪問先で目にしたよく似たスローガンが時折頭に浮かんでは、Tさんの暗記の邪魔をしているのだとか。
サクセスポイント
今回はココが問題!
訪問時には社内をチェック
実際に入社しなければわからない実態も多いのですが、職場を見ればある程度は社内の雰囲気や社風が分かります。社内の貼紙や標語に目を向けるのも有効ですが、デスクの数や置き方、部屋の面積など何気ない風景からも、どの部署が重要視されているのかなどが分かります。
これでサクセス!
チェックポイント
会社を訪問した時見ておくべきポイントは、職場の雰囲気や壁の掲示物、受付の処理がスムーズだったか、掃除が行き届いているかなど。「応用」をきかせると、玄関先に出前の食器が重ねてある職場は夜食が必要で残業が多い、などの判断もつきます。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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