転職失敗談2
オトコだって事務職
営業アシスタントとして内勤の仕事に就けたBさん。就業時間どおりに働き、余暇には資格の勉強もはじめたのだが……。(→前編はこちら
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営業のヘルプに……
履歴書を送った企業2社のうち、1社は書類選考で不合格となり、実質1社に絞り込んだ形となったBさん。応募先はある先物取引の企業。面接に現れた人物は
「うちは男女差なく、本人が向いている仕事に就かせる能力主義ですから。女性の営業もいれば男性の内勤もいますよ」と言うのです。
「今回募集したのは営業事務ね。うちの営業は忙しいからアシストする社員が必要なんです。デスク回りを整理したり、電話機を掃除したりという雑用もあります。あと海外市場のデータが毎朝入ってくるので、それをダウンロードして資料化してもらわないといけません。Bさんは今は営業ですね。ジャンルは違っても営業の仕事については理解してるだろうし、パソコンやネットも普通に使ってますよね?」
 念を押すように次々と説明と質問を手短かに繰り返す担当者。すべてにハイ、ハイと答えていくBさん。
 社内の案内を終え、一通りの説明が済んだところで、担当者は満足げに振り返り
「じゃあ、後日ご連絡いたします。たぶんBさんにお願いすると思いますので」
ポンと肩を叩いて「よろしく」と付け足したのでした。そのあまりの簡単さに少々あっけにとられ、一抹の不安もあったBさんですが、応募先は現在この1社だったこともあり、
「もし入ってみて合わなければ転職すればいい。それまでここで事務をしながら余暇に資格の勉強でもしよう」 などと心積もりして、この内定を受け入れたのでした。

 入社後、男性の事務ということで珍しい目で見られるかと思っていましたが、社内の忙しさはハンパではなく、そこまでBさんを気にする社員もいません。仕事に慣れた頃、同じ営業の上司が
「Bさんはなんで事務選んだの?前は営業だったんでしょ?」
 などと質問してきたこともありましたが、
「営業は向いてないんです。やって分かりました」
 と答えたぐらいでした。
 ところが入社5か月もしたころ、Bさんは突然人事部に呼び出されます。
「次の異動でBさんには営業のヘルプに入ってもらいたい」
仕事にも慣れ、社会労務士の資格にチャレンジし始めていた矢先でした。
伝説の元営業マン登場
「それは転職の時のお約束と違います。事務ということで転職してきたのですから」
Bさんも猛然と反発します。しかし、相手は元営業の辣腕営業マンだったという人事部長。飛び込みで入った先で、嫌がる相手を3時間説き伏せて大口契約をとったという、伝説の元営業マンです。
「今営業は人手不足で困っている、採用が決まるまでの間だけ」
 という柔らかな口調から始まった説得も、Bさんの反論に、
「他人のアシストに回るばかりじゃ、前のキャリアが勿体ない
「Bの仕事ぶりを見てきて分かる。君は事務より営業に向いている。うちでは向いている仕事に就かせるのがモットーなんだ」
と、怯む様子もなく説き伏せていきます。Bさんもここで営業にもどっては元の木阿弥と必死に抗戦しましたが、粘りにかけては人事部長の方が一枚上手です。話し合いは平行線をたどり、最後には
「君は営業に向いていないんじゃない、君自身が合わせようとしていないだけだ!向き不向きなんてヌルいことを言うな!」
 と一喝する始末。
 夕方に始まった話し合いも2時間が経過し、営業ルームでは外回りからもどった社員たちが、ミーティングをはじめる時間です。いつも定時で帰宅していたBさんはこんな時間まで職場に残ることは初めてのこと。ドアの向こうからミーティングの声が、Bさんたちの気まずい沈黙の間に聞こえてきました。
「名刺交換までしたのに契約にならないとはどういうことだ!」「……ハイッ!スミマセンッ!」
「名刺も数がありゃあいいってもんじゃない!役職を狙え!」「ハイッ!スミマセンッ!」
「検討してもらうんじゃないっ!衝動買いさせるんだっ!」「ハイッ!」
「お前らには気合いが足りん!!」「スミマセンッ!」
 営業のストレスが原因で事務に転じたBさんにとっては、血も凍るような大声でのやり取りです。すかさず
「営業にとおっしゃるのでしたら、辞めさせていただきます」
 の言葉が口をついて飛び出していました。
 後で聞いた話によれば、この企業は入社1年後の営業社員の定着率が3割を切っており、営業部に移すことを前提に、様々な人気職種を用意していたらしいとか。
その後、意地でもBさんを営業入りさせたいという人事部長が、なかなか辞表を受け取らないというトラブルを越えて、どうにか退職。疲れ果てたBさんは
「あの営業仕込みの粘り強さはさすがだった。やっぱり自分に営業は向いていない」
 とあきれながらも、感心していました。
サクセスポイント
今回はココが問題!
男性事務
男性に比べて女性の採用が多い事務系職種ですが、研究職や経験・資格などが必要な職種や、事務職をまとめる管理職ポジションなどで男性も増えています。しかし、原則として人事異動のある企業は、事務として採用されてもずっと従事できるとは限りません。
これでサクセス!
チェックポイント
補助作業的な事務系職種は派遣などのアウトソーシング化が進み、採用自体が少なくなっています。内勤を希望する場合は、事務でもある程度の専門知識・技術が必要な職種を選ぶことが重要になっています。資格も種類によっては有効ですが、運転免許と同じでペーパードライバーにならないよう、キャリアと組み合わせることを目的に。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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