転職失敗談2
エレガントなお仕事
女性に人気のケーキ・ブティックが接客スタッフの募集を開始。ケーキファンの女性たちから応募は殺到するのだが……。(→後編はこちら
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女性のあこがれのショップ
洋菓子メーカーA社が、直営店出店に際しスタッフを募集した時のこと。このA社の商品は、情報誌やファッション雑誌のグルメコーナーにとりあげられることも多く、若い女性の間では抜群の知名度を誇っていました。
以前は大手百貨店への出店が主でしたが、昨今はカフェブームにのり、ヨーロッパ風のケーキ・ブティックを次々出店中。今回の採用計画も、このケーキ・ブティックで接客業務を担当するスタッフの募集でした。
A社の店舗は大人のくつろぎを第一に考え、ゆったりとしたヨーロピアンテイストと、高級感のある雰囲気が特徴。それだけに接客スタッフにも、それなりのマナーと物腰が必要とされます。支給される制服もグレーや白を基調としたシックなもので、シルエットも女性らしいタイトスカート。ヘアスタイルもロングヘアをうなじでまとめるのが基本になっており、いわゆる「飲食店のウエイトレス」ではなく、飛行機の客室乗務員などを想わせます。
 高級感のある店内、美しく品のある接客スタッフ、そして扱う商品は人気のケーキ。女性のあこがれを凝縮したような募集ということで、A社の求人広告が求人誌に掲載されるやいなや、人事部には20代の女性からの問い合わせが殺到します。
人気職種ということで、すぐに決まるかと思ったA社の募集でしたが、予想に反し、これがなかなか決まりません。
求人広告にファン殺到
一度で事足りると思っていた求人広告も、二度三度の掲載が必要になります。
 驚いたのは広告代理店の担当者D氏。大量の応募があったことで、すっかり安心していたところに
「応募はあったが、採用レベルの人材はいなかった」
とキッパリ告げられ、あわててA社の人事担当の元へ向かいました。
「広告の打ち出し方になにか問題でも……」
A社の希望とは違う人材がドッと集まったということは、広告の訴求力が違う方向に向いていたのでは、とD氏は心配したのです。間違っていたのであれば、もう一度A社の希望をヒアリングし、広告を考え直さねばなりません。
現在の広告はA社のロゴマークなどを目立つように使い、店舗のイメージにも通じる高級感を持たせたもの。勤務地も人気の地名を挙げるなどして、とことんまで若い女性好みに仕上げています。
「いや、A社のイメージもありますので、広告の路線はいじらなくてもいいんです」
「でも今のままですと、また同じタイプの応募者が集まる可能性がありますよ」
「うーん……でもなあ……」
「どういう方から応募があったんですか?何がダメだったんでしょう」
反響は大きく、応募も多かったとA社の担当者は答えます。接客マナーに関しては、入社後に研修を行うため、“未経験者歓迎”としたのも功を奏し、実に様々な職歴の人物が応募していました。事務をしているOLに、育児が一段落した主婦、接客業経験者ではバスガイドなど。共通しているのは皆A社のケーキやカフェのファンであるということ。中には「A社のケーキが好きで好きでたまらない、アルバイトとして雇ってほしい」と懇願してきた女子大生もいたほどでした。
「接客業の向き不向きは別として、どの応募者も商品への愛情や知識はなかなかのものですね。接客業の経験者もおりますし」
「でも、それだけじゃダメなんです」
「では、お店のイメージに合わないということでしょうか?」
「もちろん、実際に店頭に立つわけですから、ユニフォームや店舗のイメージにあう容姿や雰囲気であることが望ましいのですが……一番大事なことは別なんです」

(→後編に続く)

pen2 殺到する応募を次から次へと不合格にしていくA社。エレガントなカフェの店頭に立てるのはいったいどんな人材なのか……。次回、後編へ続く。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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