転職失敗談2
エレガントなお仕事
人気の企業だけに応募は殺到。しかし人事担当はどの応募者にも満足できず、続けて求人広告を打つことを決めたのだが……。(→前編はこちら
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勘違いした応募
洋菓子メーカーA社のスタッフ募集に、降るように寄せられた応募の数々。しかし、A社の眼鏡にかなう人物はひとりとしていませんでした。
 続けて求人広告を出そうという人事担当。しかし、その前に不採用の原因を究明しようと代理店のD氏がヒアリングをはじめていました。

「ものがものだけに、うちの商品には根強いファン層があります。今回応募してきた人の中にも社員以上の商品知識がある人もいました。でも知識という点では後から身に付けることができます。むしろファン視点の憧れがあると、入社後のギャップが心配です。また、うちの店舗は高級感がひとつの売りですから、スタッフの服装や身だしなみにも気を付けています。しかしここだけ見て綺麗な仕事だと思われても、まず長続きしません」
A社の人事担当にこう漏らされ、困ったのはD氏。求人広告はまさにこの通りのイメージで作り込んだものだったからです。これでは人事部がダメ出しをする人材ばかりが集まるのも当然です。もっとも、広告の要素を指定したのもA社。D氏の事前ヒアリングが不足していたということになります。それだけに、次は必ずA社の意向に添う人材にアピールする広告を打ち出さねばなりません。D氏は丹念に担当者の希望を聞き出していきます。
「まず、うちは飲食店なんです。宝飾店のような店頭に着飾って立ちますが、商品の管理にも注意が必要ですし、食器の片付けもあります。これはどこの飲食店でも同じでしょうけど。オシャレして働きたいという理由からでは、まずこの手の裏方の仕事は勤まりません」
 一番多かったのは勘違いした志望者だと言います。
「でも御社の商品のファン層の応募もありましたね。その方々はこの点は理解していると思いますが」
「そういう人ももちろんいました。しかしうちは一店舗で扱う一日のケーキ量が、はっきりいって個人のケーキショップとはケタ違いなんです」
スーパー人材希望
人気のショップだけに、A社では少ない店舗でも1日2〜3回、多いところだとその倍近くの回数、商品の搬入があるのだと担当者は説明します。
「届いた商品をケースごと運び込んで陳列し、空いたケースも運んで戻す。もちろん接客をしながらです。朝の便は開店2時間前には届きますから早起きもザラですし、サービス業ですからカレンダー通りの休日も取れないと思っていただかないと」
「それは、商品知識や外見イメージよりも、根性というか体力というか、そういうものの方が必要ですね」
「そう、ハッキリ言って毎日が体力勝負なんです。それにこういう仕事を毎日くりかえすことに耐えられるガッツ、どんなに疲れていても笑顔が作れる精神力、こういう要素が重要なんです」
「単純にケーキが好きだとか、接客が好きだとかいうレベルでは難しいですね」
「そうなんですよ。実際採用したいのは『体力・ガッツ・精神力』の揃ったスポーツマンみたいな人材になります」
女性好みの最初の広告とは正反対と言ってもいいニーズです。しかしそういった要素を全面に出すと、スポーツジムや運送業を思わせる広告になってしまう恐れもあります。Dさんが思案していると担当者が続けて念を押しました。
「でもブランドイメージは崩せません。ショップの印象そのままの広告で、欲しい人材は外見はエレガント、内面は体力・ガッツ・精神力。これです」
Dさんは一層困惑を深めました。そんなスーパー人材をいったいどうやって集めればいいのか。しかも企業イメージを崩さない広告のままで。
そんな人材がいたらうちが欲しいくらいだよ……」
内心ツッコミながら、広告を作り直すべくDさんは、会社に案件を持ち帰っていきました。
サクセスポイント
今回はココが問題!
採用に結びつかない求人
求人雑誌などで何度も名前を見かける企業。理由は3つに分けられます。一つは人材が定着せず常に人手不足の企業、もう一つは採用ニーズと広告がズレていて人材を集められない企業、そして「良い人がいれば」とゆっくり採用活動をしている企業です。
これでサクセス!
ゆっくり採用活動
毎回掲載料が必要な雑誌広告などではなく、ある程度の期間、掲載が可能な媒体の場合、採用を焦っていないことがあります。間口を広くとって採用は細く、いい人がいれば採用するというスタンス。応募しやすいのですが不採用になる率も高く、その後も広告はずっと掲載されている、というのはこのパターンとみていいでしょう。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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