転職失敗談2
極端から極端
商品開発と営業の勢力がバランスを欠くアパレルメーカーS社。若きデザイナーK君は、営業のいうがままの現状に業を煮やす。(→後編はこちら
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開発VS営業
実質的に数字を稼ぎ取る営業職と、商品そのものを産み出す開発職。この2部門はしばしば対立するものです。もっとも、より良い商品を産み出すためには、両者間に程よい緊張感や対立意識は必要なのですが、どちらかが主導権を握るということになると、話は少々ややこしくなります。

 アパレルメーカーS社に勤務するデザイナーK君は、営業対商品開発の対立にうんざりしていました。
S社では営業上がりの社長を頂点に「数字を取るものこそが王」という“営業至上主義”。しかし商品開発に携わるデザイン部門とて、その“商品”を産み出しているという誇りがあります。実際に数字はとらずとも、ヒットの立役者こそデザイン部門と思えば、この風潮は面白くありません。
 しかし、残念ながら最近のS社商品の売り上げは低迷を続けており、どうしても新基軸の冒険的商品が出しづらい状況。
 以前は社長の片腕に、デザイン畑出身の専務がおり、開発の人間の意見をくみ上げてくれたり、また逆にクリエイターが納得するような説得をしたりと、営業−開発間をつなぐパイプラインとなっていました。しかしこの専務も先年退職。営業に傾きがちになる社内で、開発だけが切り離されてしまったような状態なのです。
コピーOK
営業主体の「売らんかな」の風潮は商品の企画・開発にも影響を及ぼすようになってきます。
営業部の意向は売れるならコピーまがい、パクリもどきでもOK。先日も企画会議とは名ばかりのミーティングで、ライバル会社が発売した商品をそっくりコピーすることを命じられたばかり。
 他社の商品を入手し、開発の参考にすることはこれまでも普通にあったことですが、まったくデザインを真似しろ、これと同じものを作れ、ではたまりません。
それに反対してみても
「とりあえず業績をあげるには仕方ない。なにもずっとこのままってわけじゃない、とりあえず今だけじゃないか」
「確実に売れるものが欲しいんだよ。これ(コピー)より確実に売れるっていえる?
「まったく同じものを作れって言ってるんじゃないよ。××社のものよりサイズ展開と生地に変化を……」
 と営業勢からの総反論を受けてしまいます。
営業と違い、ディベート下手が多いデザイン部門は返す言葉につまり、後になって内々で愚痴を言うのが精一杯です。結局営業の手足といってもいい有り様に。
そんなことが続き、内なるクリエイター魂に突き動かされたK君は、転職活動に走ることに。転職への希望はただひとつ「商品開発部門に発言権があること」。

(→後編に続く)

pen2 開発主導権を求めて転職活動を続けるK君。クリエイターとして「売れる商品とは何か」を切実に考えるようになるのだが……。次回、後編へ続く。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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