転職失敗談2
女の園
Tさん入魂のキャンペーンは見事成功に終わる。自らの成果に満足したTさんだが、あるひとことがきっかけでオペレーターたちから手痛いしっぺ返しを食らってしまう……。(→前編はこちら
バックナンバー
130%の力
キャンペーンは、Tさんの熱血指導が実を結び、目標数を達成することができました。Tさんは感無量で、オペレーターたちに結果を発表しました。
「今回のキャンペーンで、皆さんのプロとしての仕事を見せてもらいました。100%の仕事ぶりだったと思います。でも明日からも気を抜かず、さらに上、120、130%の仕事を見せてください」
 前向きに激励の言葉を口にしたつもりでした。しかしそこでオペレーターたちの顔色がサッと変わったのです。その翌々日、Tさんは上司のマネージャーから呼び出されました。
「実はHさんからこういうメールが来ていてね……」
 マネージャーが差し出したのは一通のメールのプリントアウト。差出人のHさんは、パートのオペレーターの中で最もベテランの女性です。
“先日のTさんのお話を伺って、一度お話ししなければと思い、私が代表でメール致しました……”
 という書き出しに続いていたのは、キャンペーンを通じてオペレーターたちが感じていた、Tさんの指導への批判や反発でした。クレームがひどくてセールスどころではないと訴えたのに、クレーム客にまでセールスしろと言われた。言いがかりで『男の上司を出せ』と絡まれていた時、Tさんはモニタリングしていたのに助けてくれなかった。夫の扶養手当内で収まるよう、パート時間をやりくりしていたのに、キャンペーンの受注がとれるまで強制的に残業させられた……。
“みんなストレスも限界に近かったのに、Tさんには何も言わず胸に納めて頑張ってきました。セールスも目標を達成しました。でもTさんは100%の力だ、120、130%を目指せとおっしゃいました。その一言でみんな我慢の限界を超えました。100%の力なんかではありません。みんなすでに120、130%ぐらいの努力でやっていたんです。そのこともわかってもらえず、簡単にもっと上を目指せとおっしゃいます。口にするのは簡単です。でもTさんは実際にお客様の相手をしたことがあるのでしょうか……”
現実逃避の転職活動
オペレーターたちからの痛烈な不信任を、しかも自分を飛ばして上司に突き出されていた事実に、衝撃を受けたTさん。発作的に人材紹介会社の扉を叩きます。男性が多い職場で指導する立場ではない仕事に就きたいと希望するTさんに、コンサルタントは諭すように質問してきました。
「コールセンターのスーパーバイザーということで、数十人の人材を統括されていたんですよね。その経歴を一切無くしたいようにも聞こえるのですが」
 そこでTさんはキャンペーンの一件を包み隠さず、コンサルタントに話しました。
「上司は、オペレーターの意見は子供じみた部分もあるし、僕のやり方も間違っていたとは思わない、今後はコミュニケーションをとっていけば……とは言ってくれたのですが、あそこまで反感を買ってしまった以上、僕には今の仕事を続ける自信がないんです……」
「でも、このまま応募をしても面接では転職理由は必ず聞かれます。この話をそのままするのは……。もう少し、気持ちが落ち着かれてからじっくり取り組まれた方がいいですよ」
 しかしコンサルタントのアドバイスも、上司の声同様Tさんの心には届かず、Tさんは独自で企業への応募をくりかえしては、自信の無いアピールぶりで次々と不合格になっていったのでした。
 しばらくして、再びTさんは人材紹介会社に現れました。
「実はあれから、自分で求人情報などをみて応募してみたんですがやっぱりダメでした。僕自信がひどく落ち込んでいて、その苦しさを紛らわせようとして中毒みたいに会社を回ってたんです。こんな精神状態ではダメでもともとですよね」
ビジョンも何もない転職活動に結果が出ないのは当然だと、Tさんは落ち着いた様子で話し続けました。
「今は少しは落ち着いてきて、客観的に自分を見ることができるようになりました。やっぱり僕には今の仕事が向いているようです」
「では、今の会社に残られるのですか?」
「一度はそうも考えたのですが……」
 女性の集団から下された評価というのは、なかなかのことでは覆らないと、Tさんは苦笑しながら説明しました。
「今回のことで、女の園で仕事する難しさを嫌というほど知りましたよ。この失敗を失敗だけで終わらしたくないんです。せっかくの財産を活かすにも、やっぱり一度リセットしようかと思いまして。今度はもっと規模の大きいコールセンターに移りたいですね」
とはいうものの、希望に添う求人が生憎すぐに見つからず、今度はTさんが待たされることに。
「何か良さそうな情報は入っていませんか?」
 と再三Tさんの方から問い合わせを入れては、情報が無いときは
「もうそろそろ限界です。オペレーターたちですが、表面は穏やかなんですが、やっぱり僕のいうことは生返事で聞いてなくて、この間なんか……」
 と、現在いかに自分が追いつめられているかを切々と愚痴るようになってしまいました。
 案外転職情報よりもそっちの方が目的ではないかと、感じる人もいるとかいないとか……。
サクセスポイント
今回はココが問題!
転職理由を聞かない面接は無い
面接では必ず転職を思い立った理由を質問されます。せっかく採用しても同じ理由で転職されないためです。基本的に正直に答えるべきところですが、だからといってそのまま答えればいいというものでもありません。
これでサクセス!
さけられる転職理由
採用側が敬遠する転職理由というものがあります。ステップアップしたい、やりがいが欲しいなど抽象的なものは応募者の実態が見えにくく、また汎用性が高いため不評です。また職場の雰囲気が合わない、人間関係などもトラブルメーカーとしての心配をされることも。
そして、転職理由が多すぎる場合も問題。面接が自分語りで終わっては意味がありません。転職にはいろいろな要因が絡み合っているものですが、それをすべて羅列するのではなく、面接担当者を納得させられる理由を自分の言葉で組み、簡潔に述べることがポイントです。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
バックナンバー

▲ページのトップへ