転職失敗談2
倍率70倍の仕事
70通の応募の中から、最終選考に残ったのは控えめな未経験者のAさんと、向上心が強く資格・経験共に揃ったBさんの2人。採用担当のSさんは密かにAさんを推していたのだが……。(→前編はこちら
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キャリアもスキルもいらないんです
70通の履歴書を30通強にまで絞り込み、面接を開始したSさん。実際に会ってみると、さらなる絞り込みも容易でないことを実感しました。とにかく応募者が熱いのです。
「××社で事務を×年、次に●●社の広報に移り、その後×年間語学留学のためオーストラリアに渡り、帰国後は……」
 と、職歴・キャリアを長々とアピールする人、
「簿記の資格を持っているのですが、前の職場に勤めている間に夜間のスクールに通い、パソコンの資格を取りました。この履歴書・職務経歴書もそのソフトで作りました」
 と、凝り凝りのレイアウトの書類を差し出す人……。
 彼女たちのただならぬ意気込みに、思わずSさんも気圧され気味。
 彼女たちのアピール魂に火がついた理由のひとつに、Sさんと共に面接の座についた社長の存在がありました。忙しい人でしたから、事前に履歴書の段階で目をつけておき、目立つスキルや経歴の応募者の時だけやってきて判断をするといった具合です。ただその時に、
「今回の採用人数は一人なんですが、実は70通もの応募をいただきましてね。正直驚いているんですよ……ハッハッハ」
 と一言口を挟むのを忘れませんでした。もちろんそれでヤル気が削がれ「私なんかムリ」と面接もそこそこに帰っていった応募者もいました。しかし向上心があり、キャリアと職歴のバランスがとれていないタイプの応募者たちは「私こそ勝ち残ってやる」とさらに闘志を燃やすことになり、一層熱いアピールを展開していったのです。
 Sさんは空回り気味の彼女たちの情熱に逆に不安を感じ、
「入社していただいたとしても、実際の仕事内容は事務と、制作の手伝いといいますか雑用といいますか……はっきりいって地味な作業ですよ。こうしたスキルや資格を発揮していただく場面は少ないと思いますが……」
と遠回しに説明してはみたのですが、これも選考用のトークと捉えられ、
「仕事内容については理解しております。でも何かの機会に自分のしてきたことがお役に立つこともあるかもしれません」
とヤル気満々の切り返し。いや、本当にそんなにすごいキャリアもスキルもいらないんです、とSさんは何度口にしたかったかわかりません。
勝利者の自信と待遇
面接終了後、Sさんは採用予定として一人の応募者を選び出しました。その人物はおとなしいタイプで目立ったスキルもなく、転職も今回が初めてという未経験者のAさん。
「この人でなければならないという理由がわからない」
と、社長はじめ周囲は怪訝な顔をしました。特に社長は上昇志向を持ったタイプを好ましく思うため、資格もキャリアもある応募者Bさんを推し、この二人でもう一度面接を実施することに。能力の高さからいえば、社長の推すBさんの方がはるかに上。しかし、それだけに単純な仕事に耐えられないのではないか、自分の指示を素直に聞いてくれるのかなどの不安がどうしても拭えません。 渋々二人に再度呼び出しをかけたところ、なんと控えめなAさんからはすでに他社から内定が出ているという返事が。やむなくBさんのみを呼び寄せ、最終面接をすることになってしまいました。 とはいうものの、Aさんがすでにリタイアした以上、Bさんの内定はほぼ決定事項です。そのことを告げると、Bさんは喜色満面。さっそく入社条件の擦り合わせに入ったのですが、給与と待遇の説明に入るとBさんの表情が固く変化しました。
「最初は試用期間があって、その後の給与もいちばん最初のランクからスタートなのでしょうか」
「規定がありますので、そうなっておりますが」
「それは未経験者のケースではないのですか?経験者も同じなのでしょうか」
「ええ、最初は誰でも……」
「でも広告には“能力により考慮”とありました」
「でも、最初はまず様子を見る意味もありますし……」
「……少し考えさせてください」
経験もあり資格もあり、70人もの応募の中から選ばれたという自信のあるBさんは、全くの未経験者と同じ待遇ということに納得できない様子です。
 一応広告は「××万円〜」としてあるものの、シンプルな事務職。人件費にあまり予算を充てられません。いくらスキルと経験があっても直接仕事につながらない以上、スタート給与以上のものは出せそうにはありません。
 そしてBさんも内定を辞退。Sさんはさらに次の採用者を選び出すことになりました。幸い候補者はあと68人も控えています。難しいのは仕事のレベルと人のレベルを合わせることだけ……。
サクセスポイント
今回はココが問題!
書類選考を突破できない場合
この場合、少ない採用枠に応募がどっと押し寄せていることが考えられます。その場合、面接に進める人はごく限られた一部の人だけ。誤字脱字、写真不備などのミスはもとより、通り一遍の履歴書では、採用側の目にはなかなか止まらないのが実情です。
これでサクセス!
カバーレターと職務経歴書
履歴書には職務経歴書・カバーレターを添付して送付するのが基本。他の応募者との差別化のためにも、決して手を抜けない書類です。
職務経歴書は、履歴書だけでは補いきれない職歴・キャリア・スキルを、カバーレターでは、応募の理由・自己PR・特にアピールしたいことなどを明記。手書きでなくとも構いません。逆に凝ったレイアウトなどでパソコンの熟練度を実地でアピールすることもできるでしょう。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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