転職失敗談2
恐るべき素人人事
ゆっくり転職活動をしていたN君は、気がつけば求職期間が1年ちかくになっていた。内定獲得率が下がるなか、即座に内定を出す会社があったのだが……。(→後編はこちら
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なかなか聞けないお金の話
休職期間が長引くことは、転職活動においてプラスにはなりません。職歴にブランクができるだけでなく、焦りや不安といった心理的要素が判断を狂わせることにもなりかねません。
 訳あって前職を退職し、新しい仕事を探しているN君。退職当初は
「今まで勤め続けてきたから、しばらくは失業保険をもらってのんびりしたい。職探しはその後で」
と考えていました。しかし、失業保険の給付が始まるのは3ヶ月後。それからゆっくり転職活動を開始したのですが、のんびりグセがついてしまったのか、もっとよい会社があると思うのか、「これは!」という職場に巡り合いません。そうこうしているうちに、N君の離職期間は1年近くになろうとしていました。
その頃にはさすがにN君も焦燥感に苛まれるようになります。しかし焦りが災いするのか、ブランクがネックになるのか、内定獲得率も下降気味。そんな時、ある中小企業A社の求人票を見つけます。未経験者歓迎、月給22万円−。
さっそく連絡をとって面接に出かけたところ、話はトントン拍子。翌日には内定の電話があり、
「できるだけ早くきてほしい、来週からでも来てほしい」
 という熱烈歓迎ぶり。もちろんN君も大喜びです。
「よろしくお願いします」
と返事をした後で、ハタと気づいたのは待遇面、特に給与についての説明です。最初の面接からいきなりお金の話を根掘り葉掘り聞くのは気が進まないと、ほとんど確認をとっていなかったのです。そこで 「入社前に、待遇を書面で確認したいのですが……」
と、おそるおそる申し出ました。そして数日後、書面が到着。中身はというと
「月間総支給22万(ただし正社員登用後、試用期間有)・交通費別途支給」
の一文のみ……。これでは総支給額の中に基本給がどのくらいなのか、手当が含まれるのか、試用期間があるようだがどのくらいなのか、またその間の給与はいくらなのか、分からないことだらけです。
だいたいで、人それぞれ
不安が増大したN君はA社に再度問い合わせてみました。担当者の説明によると
「総支給額の内訳は基本給、能力給、勤続給、年齢給などからなり、複雑にからんでくるので割合は人によりそれぞれです。試用期間中の給与は日給換算ですが、これも本人の能力を見ながら決めていくので、期間も金額も人によりけりですね」
 まったくもってあやふやな回答。おまけに求人票の給与記載についても
「あれは求人票を作った時、どうしても決めないといけないことになっていて、大体の形を整えて出したものだったので、いわば平均的ケースというやつです。目安の一つにしてください」
というあきれた解説が続きます。そういえばこのA社にはきちんとした人事部がないらしく、どこかの部署の管理職らしい人が対応に出ているのです。いわば、人事の素人。
「それでは入社してみないと給与はわからないということでしょうか」
「そうですね。働き方によって給与が変わるのは普通のことですからね」
 こんなやり取りが普通にかわされるのも、素人ゆえの恐ろしさとでもいいましょうか。
結局N君の不安は増すばかり。入社後、働いた後で驚愕の額面を提示されることもありうるばかりか、正社員に登用されても基本給の割合すら分からないとくれば、内定の喜びより、入社を躊躇する気持ちばかりが大きくなります。
しかし、長いブランクの果てにやっと手に入れた内定でもあります。これを断って果たして次の仕事が見つかるのか……という不安もあるのです。おまけにA社からは「早く来てほしい」「いつから?」と入社をせかす連絡も入ってきます。
悩みに悩んだN君は、苦渋の選択をすることになるのです。

(→後編に続く)

pen2 待遇面に目をつぶってA社に飛び込むか、熟慮の末見送るか−。ブランク1年のN君の選択は?……。次回、後編へ続く。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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