転職失敗談2
派遣の逃げ道
小さな企業の総務の仕事についているHさん。この仕事にたどり着くまで彼女は派遣と転職を繰り返してきた……。(→後編はこちら
バックナンバー
派遣なら知っている?
小さな業務用器具メーカーB社の総務に勤務しているHさんは派遣からの正社員転職組。手の少ない職場のため、仕事は何から何まで、時には雑用もこなさねばなりませんが、Hさんにとっては心地よい職場であり、長く勤務したいと願っています。
この仕事に就くまで、実はHさんは派遣と転職を何度も繰り返してきました。最初の職場で同じ仕事の繰り返しに嫌気がさし転職を希望するも、スキル不足が原因で果たせなかったことから派遣へ登録。その後いくつか短期長期の仕事を繰り返し、経験とPCスキルをつけたところで改めて転職にトライ。
次は見事内定を得ることができたのですが、いざ正社員として勤務してみると、予想以上に人間関係の難しさに悩まされることになったのです。上司は40代の気難しいと評判の女性管理職Aさん。特にミスした時の指摘の厳しさは社内名物で、完膚なきまでに叩きのめされた男性社員は人前にも関わらずその場で涙ぐみ、その後トイレに駆け込んだほど。
こんな状態ですから彼女の下は社員が長続きしません。なんとかAさんのシゴキに耐えられる人を……と求めた結果、派遣出身者のHさんに白羽の矢が立ったのでした。採用理由は「派遣でほかの職場を知っている分、世間の厳しさも多少は知っているはず。また人との接し方も知っているはず…」。
派遣であったがゆえの不満
しかし、いかに派遣経験があり、いろいろな人物と仕事をしてきたHさんでも、A女史にはお手上げでした。会社が頼みの綱とした派遣の経験が、逆に今の境遇への不満を浮き立たせてしまったのです。
 サービス残業もその一つ。A女史の下では、彼女が仕事をあがるまで誰も先に帰宅する人はいません。仕事を片付け定時にあがろうものなら、その日はそのまま見送っておいても、翌日女史より
「あの入力は済んでいたのか、ここの書類の整理はできていたのか。問い合わせが来たけれど、あなたが先に帰ってしまったので私の方で処理することになった……」
 と、まるで上司に仕事を押し付けて帰ったといわんばかりにビシビシと注意されてしまいました。
 A女史の部署では、女史があがる時間が定時という雰囲気で、急ぎでもない作業で時間をつぶすことになっていたのです。この風習は時給換算で働いてきたHさんには堪え難いものがありました。限りある時間を不当にすり減らされていく心境です。
 これが派遣であれば、契約期間までの我慢と辛抱もできますが、正社員として勤務する以上、自分かA女史が異動するまで人間関係は膠着したまま。そして異動があるとも限りません。
「これが派遣の仕事だったら……」
Hさんはそう思わずにいられません。転職経験がないならいざ知らず、派遣でいろいろな職場を経験したHさんは、なおさらこの職場に長くとどまる気にはなれませんでした。せっかくの転職先でしたが辞表を提出し(そこでもひと悶着ありましたが)、再び派遣の暮らしに舞い戻ったのです。

(→後編に続く)

pen2 派遣の仕事をあてに会社を辞めてしまったHさん。しかし派遣を続けるうち、また正社員を志すようになるのだが……。次回、後編へ続く。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
バックナンバー

▲ページのトップへ